●●●十二国記～東の海神西の滄海

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2004.09.24

(6)

テーマ：アニメあれこれ(27270)

カテゴリ：テレビ番組作品

「母ちゃんがオラをもいだんだ」

楽俊の台詞である。
この世界では子供は
女の腹からは生まれないのである。
夫婦揃って心から祈ればいい。
そうすれば新たなる「卵果」が李木に実る。
時期がくればそれをもげばいい。
だが雁国の王、尚隆と麒麟の六太は「胎果」である。

日本=蓬莱に流された「卵果」は女の腹に宿る。
尚隆にも六太にも蓬莱での苦い記憶があった。

小野不由美原作「十二国記」のアニメ最終章は、
原作を大胆に解釈し直している。
雁国の元州を束ねていた斡由の墓に、
尚隆が酒を飲みながら物思いに耽っていた。
そこへ慶国の王となった陽子、楽俊が訪れる。
「もう一人の俺だ」と彼は斡由を紹介した。
尚隆の昔話が始まる。

斡由は父の代わりに荒廃した土地を束ねていた。
優秀な官吏であり人望も厚い。

だが尚隆が王となってからは彼の土地だけが
豊かというわけではなくなっていた。
尚隆は豪放磊落な性格ではあるが、
有能な王だったのである。
王というよりは施政者に近い。

彼は勅命を出しているフシがある。
民のために治水工事を行い、
民を味方につけてゆく。
そして斡由の本心を推し量る
材料にさえしていたのだ。

小松尚隆は瀬戸内の水軍の生まれ、
やがて殿様となる身ではあったが、
村上水軍の圧倒的な軍力の前に歯が立たず、
土地も民も国も総てを失ったしまっていた。
そこに麒麟である六太が現れる。

斡由は失敗を知らなかった。
失敗とわかったときの彼の狼狽の凄まじさ。
家臣に罪をなすりつけ許しを乞おうと謝罪する。
失敗を打ち消そうとするが、
ついた汚点は消すことができずに、
尚隆に向かって刃を向けた。

「もう一人の俺だ」
尚隆は斡由の墓に酒を注ぐ。
国を思う気持ちは尚隆も斡由も同じ。
だだ斡由は王になれなかっただけ。
ほんの少し違う道を歩いてしまっただけで、
斡由は死に尚隆は
十二の国で二番目に栄える国を作った。
ほんの少し違う道。
ほんの少し違う道。
国を破滅に導いた者たちと
陽子の姿が画面にだぶる。

更夜のエピソードを交え、
尚隆と六太は誓いを新たにする。
アニメの最終章は小松尚隆という施政者が、
斡由という滅びと向かい合い終わる。
希望も破滅もそこにはない。
ただこれからがあるだけ、と
言っているかのように。

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