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2004.09.25

(14)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アメリカ映画

痛みは人の意識を輪郭を明確にする。

「殴ってくれ」「殴らせてくれ」ではない。
不眠症に悩む保険会社の社員のジャックは
自分で自分を殴り痛みを感じていたのだ。
自分が痛みを感じる人間であることを感じた瞬間。

ジャック。
エドワード・ノートンの役名はそうではない。
タイラーが彼の別人格なのは有名なエピソードである。

フェロモンたっぷりに架空の人物を演じきる。
つまりは二人の俳優が一人の男を演じていたのだ。
ノートンの役柄は「ナレーター」なのである。

あの石鹸のことを考えてみる。
あの石鹸は人間の脂肪からできているのだ。
鮮やかなピンク色、あれは、
血の色というよりは
肉体の色と言う感じがする。

物を買うと得られる実感や、
慰められると得られる幸福感が
まるでその場しのぎの処方箋だったように、

タイラーはカリスマ。
これはブラビが演じるタイラーだからこそか。
そしてそこかしこに細切れのように
仕掛けられる映像の内部に、
デイヴィッド・フィンチャーの

痛みが一番、
自分を明確にする。
身体の痛みもそうだが心の痛みも。
タイラーが暴走すれば
阻止しようとする自分もいる。
タイラーが自分だと気づいた瞬間、
彼の肉体は獰猛な犬に噛みきられたような
痛みを感じたはずなのだ。
タイラーが犬だったのか。
ずっと吠え続けている自分の中の獰猛な犬。

「俺を」「殴れ」

死を仕掛けたのはタイラーだ。
幸せを最大限、実感できるシチュエーション。
愛は至上のものとなり決して揺らぐことはない。
巧妙なラストシーン。

エドワード・ノートンの名演。
この後の映画でも彼の演技は多くの賛辞を浴びている。
だがこの映画を魅力的なものにしたのは
ブラッド・ピットとのコンビネーションだろう。
二人はずっと同じ速さで疾走していた。

殴られた顔が丁寧に描かれている。
歪んで膨れあがり本来のカタチを失った顔。
「痛み」を感じているのである。

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