アメリカに来て一ヶ月。2回目の授業に出て終わった時、私は一人の男の子に声をかけられた。何を話したか覚えていないが、確か「クラスはどう?」とかそんな簡単な会話だったと思う。日本の学校で「元気?」のご挨拶を”How are you doing?”じゃなくて”How are you?”としか習ってなかった私には彼の挨拶でさえまともに答えたかどうか定かでない。英語を話す人にクラスメートとして対等に話されたのは初めてだった。まごまごして「留学生として来たばっかりで何を話しているかわからない」みたいなことを答えたと思う。
「あのね、もう飲むの止めて欲しいの。私疲れたし、あなたお金借りてばっかりだし、いつも家に泊めなきゃいけないし、冷蔵庫のもの勝手に食べたり飲んだりするし、それは良くない。」 みたいなことを貧困なボキャブラリーのなかから言ってみた。今まで黙ってにこにこ自分に親切にしてくれた私が突然そんなことを言ったものだからBrandonは激しく動揺した。 「どうしてそんなこと言うわけ?」 「だって頼んでばかりじゃない!You are not nice!」 と(多分)その時言った気がする。後で考えてみれば彼がdemanding(わがまま)なことと「You are not nice!」(悪く訳せば『意地悪な人ね』とかいう意味になってしまうんだと思う、今考えれば)ということは全く関係ないし実際彼は普通にniceな人だったはずだが、言葉が見つからない私は知っている限りの言葉を使って自己主張をしてしまった。