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2010.02.26
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カテゴリ: Figure Skating(2009-2010)
浅田選手がバンクーバーオリンピックで銀メダル。「祝」の文字が少ないのは、本人にとっても、浅田選手に金を期待していたファンにとっても、不本意なものだっただろうからだ。

だが、よく考えてみて欲しい。浅田選手は作シーズンの世界選手権4位、今シーズンはトリプルアクセルで自爆を繰り返して、ファイナルにも行けなかった。

それを考えるとここまで仕上げてきたのは、りっぱの一言だと思う。後半のミスは、Mizumizuの指摘していた「大技を入れるとはまる失敗のパターン」そのものだった。

まず、これまで不毛なまでにダウングレードされていた後半の3連続。「むしろフリップ単独にしたほうがいい」と書いてきた部分だ。ここは大きな得点源なのだが、ほとんど常に問題があった。4大陸では解決したのだが、本番五輪でまた出てしまった。

最初のフリップジャンプが回転が足りずに、すぐに連続にもっていけなかった。さらに、「いつもなら難なく跳べる3トゥループ」のところで、ブレードが氷に引っかかるという信じられないミス。これは、東京のファイナルでの高橋選手のフリーで、ルッツに入っていくときにブレードのかかとを引っ掛けてしまったのと同じ現象だ。体力を消耗していると起こりやすい。

だが、これはあくまで結果論であって、後半のジャンプを単独フリップとダブルアクセルのシーケンスにしていたら、「構成を替えたときに起こるミス」が出たかもしれない。ジャンプのミスはあったが、全体としてはよい演技だったと思う。

トリプルアクセル2度認定は快挙。ただし、連続にしたときのトリプルアクセルはスローで見たら降りてからブレードが回っているように見えた。全日本のような厳しい基準だったらダウングレードを取られたかも知れない。同様にキム・ヨナ選手の2A+3Tのセカンドの3Tは、トレース痕が渦巻きに近く、あれは回転が不足気味のときに起こる現象だ。もちろん、こちらも取られていない。

キム・ヨナ選手は、プログラムをスカスカにしてジャンプを全部決める作戦が功を奏した。体力不足で後半見劣りがするという、これまでの傾向を克服し、すべてのジャンプをきれいに着氷させた。キム選手のスケーティングの最大の長所である、ストロークの伸びが光った、素晴らしい演技だった。

キム選手のジャンプの強さは、セカンドに3回転をもってこれること。そして、成功率が驚異的なこと。もちろんこの背後には、浅田選手(および安藤選手)のセカンドの3ループが厳しいダウングレード判定によって「奪われ」、しかもキム選手はダウングレード攻撃に、「なぜか」遭わなかったことがあるかもしれない。だがそれを割り引いても、ジュニア時代からジャンプが難しくなる19歳まで、セカンドに3回転の入る連続ジャンプがこれほど決まる選手はめったにいない。



今回のオリンピックは、とにかく点の出方が異常だった。いや、異常というには「正常」の基準がなくてはならない。昨シーズンのロスの選手権で、Mizumizuは、「『パンドラの箱』が開いてしまった以上、異常が常態化し、異常ではなくなる」と書いたが、その通りになった。というより、むしろ予想をはるかに上回る露骨な恣意的採点がなされるようになった。

それ以前に慣習的にあった「正常」の基準がなくなった今シーズン、あちこちで出てくる「わけわからない」高得点は、まさにパンドラの箱があいたあとのカオスの世界。あちこちで上がる「発狂花火」。加点と演技構成点のマジックでどんどん点は上積みできる。

こうした現象を見たときに、ファンの心に沸き起こる感情というのは、だいたい共通している。つまり、「贔屓選手の高得点なら納得できるが、贔屓でない選手の高得点は納得できない」。言い換えると、「好きな選手の高得点なら妥当に見えるが、嫌いな選手の高得点は不当に見える」。

今回の五輪、女子のフリーの演技が進行している間に、解説の八木沼さんが、「いったいどこまで点が出るのか・・・」と驚いていた。これまでの「だいたいの目安」が何の役にも立たない。どうやって出てくる点を説明していいのか、もはや処置なし。

だが、この異変の「前触れ」は、男子のショート、高橋選手の演技で起こったと思う。最初に滑ったのは、4回転+3回転をもってくるプルシェンコ。ノーミスで滑って出てきた点数が90.85点。

金メダルを目指す高橋選手にとっては、ショートでなんとかプルシェンコ選手に「離されない」ことが、目標だったハズだ。高橋選手のジャンプは3回転+3回転。これまでの感覚で言えば、「プルシェンコと5点差以内ぐらいなら・・・」という希望が「なんとなく」あったと思う。

ダウングレードがいかに厳しく、それが選手にとっていかに致命的か知っているファンは、最初の高橋選手の連続ジャンプで、解説の本田コーチが、

「今、一瞬詰まりましたね・・・回転不足、取られないといいのですが(←完全にビビり声)」

と言ったとき、本田コーチの心配がよくわかったハズだ。

ダウングレードに敏感でないファンは、「は? 普通に回って降りてるでしょ? 何を過剰に心配してるの?」と、理解できなかったと思う。

本田武史は、日本が生んだ最高のジャンパーだ。少し回転が足りないときに、着氷がどうなるか体で知っている。高橋選手の連続ジャンプがきれいに流れず、一瞬流れが止まったのを、肉眼で見分けているのはさすがとしか言いようがない。



だが、本田コーチとダウングレードについて知識のある担当のアナウンサー、それにルールに詳しいファンは、ショートの得点が出る間、ドキドキだったと思う。

スローで高橋選手の連続ジャンプが大写しになったとき、Mizumizuは頭を抱えてしまった。確かに、ダウングレードを取られるかもしれない降り方だったからだ。

「ブレードのつま先がついたときに少し回っただけなのか、ブレードが降りてから回ったのか?」。前者だと判断されればたぶんセーフ。後者だと見なされればアウト。いや、本当は「4分の1以上の不足」ならダウングレードという規定があるのだが、実際には、たとえばカナダ在住の日本人スペシャリスト天野氏のように、「ダウングレード取りまくり」のジャッジもいるし、そもそも「4分の1」たって、定規を当てて図るわけにもいかないから、所詮は曖昧なのだ。

東京のファイナルまでは、ダウングレード判定は確かに、「やりすぎでは?」というくらい厳しかった。キム選手のショートのセカンドの3回転が「ついに」ダウングレードになったのがいい例だろう。本当のところ、最初のフランス大会のキム選手の3ルッツ+3トゥループの3トゥループのほうが、ずっと不足ジャンプに見えたのだが、あちらはダウングレードされるどころか、GOEでめいっぱい加点がついた。

高橋選手がショートの連続ジャンプでダウングレードを取られるということは、3回転+3回転が3回転+2回転になってしまうということだ。4回転+3回転をもってくる選手もいるなか、3+3で来る高橋選手が3+2ということになれば、その時点で金メダル・・・いや、メダルが消える。



男子のトップジャンパーが、ショートにリスクのある4+3をもってくるのはなぜか? ショートで3+3しかない選手にできるだけ差をつけるためだ。ジュベール選手はその典型で、ショートの4+3でできるだけ差をつけ、フリーで逃げ切るというパターンで勝ってきた。

ところがショートでは、ジャンプ鉄壁・最強のプルシェンコに高橋大輔が迫っている。理解できないこの点の出方が、4回転ジャンパーの動揺を誘って、そのあとの連鎖的な自爆を誘った可能性もあると思う。

高橋選手と対照的に、「ノーミスに見えてるのに、えらく点が出ないトップ選手」がいた。それがウィアー選手だったと思う。

2人のプロトコルを見れば、エレメンツのちょっとした差がトータルの8.15点差になったことがわかる。レベル認定と加点。ウィアー選手はフリップでエッジ違反を取られるので、そこで減点。あとはスピンとステップのレベル認定と加点の差。

だが、ウィアー選手と高橋選手に8点も差が開いたことに、Mizumizuは本当に驚いたのだ。

さらに驚いたのはフリーの点が出たときだった。ウィアー選手の滑走順は、高橋選手の直後。高橋選手の大きなミスは、
1)4Tの転倒。
2)後半の3+3のジャンプがクリーンに流れなかったこと。
3)スピンでグラッとしたこと。

逆に目立ったのは、後半のトリプルアクセルの見事さ。アナウンサーもここが大事なジャンプと知っていて、「決めてくれ!」と思わず力が入っていた。高橋選手を常に救っているのは、このトリプルアクセルの強さだ。実際、見事な放物線を描くジャンプで、完璧に降りてきた。

続くウィアー選手の大きなミスは
1)スピンでカタチが崩れたこと

これだけだ。ジャンプは全部クリーンに決めた。ミスの出やすいトリプルアクセルは前半に固め、そのかわり後半にルッツ+2トゥループの連続ジャンプを2つ入れた。ウィアー選手は連続ジャンプが3つ入らないこともある。連続ジャンプを入れてちょっとでもミスると、むしろ単独のほうが点が出るという、今の変な採点を警戒してのものだと思う。

徹底的にミスなしでまとめるウィアー選手だが、シーズン中も思ったほど点が伸びなかった。もし、ジャンプミスのないクリーンな演技を高く評価するのが、今の採点傾向であるというなら、このウィアー選手の低い得点は説明がつかない。

今回は連続ジャンプを3つにして、彼は彼なりにリスクを取ったのだ。今だから言ってしまうが、ウィアー選手がクリーンに滑り終わったとき、Mizumizuは、「あ~、高橋選手は負けた。またメダルまでもう一歩の4位か」と内心思ったのだ。

ところが、出てきた点は印象とは違ってえらく低い。なんとトリプルアクセルでコケてるチャンより下? 

信じられない。

ウィアー選手を例に挙げるのは、彼がMizumizuの贔屓の選手ではないからだ。ウィアー選手のもっとも目立つ欠点は、運動量の少なさ。とにかく、省エネでプログラム全体をまとめようとする。エッジも深くなく、スケートも技術もさほど見るべき点がない。棒立ちのままポーズを決めて、「華麗」に手を動かすのだが、以前のようなフリーレッグを高く持ち上げて長くキープするといった、体力を使うがエレガントな雰囲気を出す振付が消えて、キム選手のようなお色気路線になってしまった。



<明日に続く>

































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最終更新日  2010.03.18 13:09:20


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