PR
キーワードサーチ
カレンダー
カテゴリ
購入履歴
もう1度繰り返すと、昨季までは4分の1以上の回転不足であれば「ダウングレード」され、基礎点がその下のジャンプの基礎点に落とされた。この非常識なルールの弊害はさんざん書いてきた。高難度ジャンプになると「わずかな回転不足が、回りきっての転倒よりも点数が低くなる」ことがあるなど、まったく筋のとおらない。そこで今季これまでの「ダウングレード」を2つに細分化した。それが「回転不足判定(アンダーローテ)」による基礎点70%付与と2分の1以上の回転不足に適応される「ダウングレード」(基礎点をその下のジャンプに落とす)だ。
だが、本当に「わずかな回転不足」で基礎点を70%に減ずる必要性はあるのか? その結果出てきた点は本当にジャンプの「出来栄え」を正しく評価できるのか。それを再度議論すべきと思わせる現象が中国大会の男子フリーの4回転ジャンプで起こったと思う。
http://www.isuresults.com/results/gpchn2010/gpchn10_Men_FS_Scores.pdf
こちらにプロトコルがある。注目していただきたいのは小塚選手、ムロズ選手、ジュベール選手、町田選手の4Tに対する得点。下にあるURLは動画。それぞれオープニングに4Tをもってきてるのでわかりやすい。
ムロズ選手 4T 基礎点10.30点 (GOEはプラス1が4人、ゼロが5人) 最終得点 10.73点
http://www.youtube.com/watch?v=vrkqzW44TLw
小塚選手 4T 基礎点10.30点 (GOEはマイナス2が1人、マイナス1が8人) 最終得点 9.3点
http://www.youtube.com/watch?v=sE-aBELMtbk
町田選手(転倒)4T 基礎点10.30 (GOEはマイナス3が8人、マイナス2が1人) 得点7.3点、ここから最後にFallでマイナス1を引かれるので、実質6.3点
http://www.youtube.com/watch?v=ze9P2OcWywA
ジュベール選手 4T< 基礎点7.20点 (GOEはマイナス1が8人、ゼロが1人) 最終得点 6.2点
http://www.youtube.com/watch?v=7LAPUP8zNzA
ジャンプで得た点を見ると、
1位 ムロズ選手
2位 小塚選手
3位 町田選手(転倒)
4位 ジュベール選手
ということになる。ムロズ選手とジュベール選手の点差は、4.53点もある。一方で、ムロズ選手と小塚選手の点差はわずかに1.43点のみ。奇異に感じないだろうか?
小塚選手は上体のバランスを崩し、手をついてしまっているから観衆にはかなり大きな失敗に見える。一方のジュベール選手のジャンプには、会場から「おお~!」という歓声があがっている。動画は、遠くから撮られているのでよくわからないかもしれないが、着氷をよくよく見ると一瞬「ガタッ」となったのがわかると思う。
これに対してムロズ選手の4Tはピタッと降りてきれいに流れている。微妙な着氷の差は肉眼では大差なく見えるので、ムロズ選手とジュベール選手のジャンプの「出来栄え」は同じ程度だとファンは思うかもしれない。だが、着氷の流れに注目して見た目の「出来栄え」で順位をつけるなら、
1位 ムロズ選手
2位 ジュベール選手
3位 小塚選手
4位 町田選手(転倒)
ということになるだろう。一般のファンはもしかしたら、ジュベールのジャンプのほうが迫力があってよかったと思うかもしれない。ところが得点による序列は上記のとおり。これはルールにのっとって、極めてまっとうに出された点なのだ。
http://www.skatingjapan.jp/data/fs/pdfs/comm/comm1611j.pdf
再度こちらの12ページを見て欲しい。小塚選手のお手つきは、「最終的な GOE の+-は制約されないエラー」で、加味すべきGOE指針はマイナス1。あるいは、「拙い着氷(悪い姿勢)」と考えてGOE指針はマイナス1~マイナス2ととらえてもいいだろう。実際に、その指針にそってGOEが出されている。そもそもあまりいいジャンプではないので、直感的にマイナス1からマイナス2にしておけば、そのままGOEガイドラインに当てはまるとも言える。
ジャッジのつけたGOE自体は、マイナス2がない分ジュベール選手のほうがいいとも言えるが、最終的に引かれる点はマイナス1と同じになっている。それなのに、どうしてこうした点差がでるのか? その理由が、「回転不足(アンダーローテ)判定」による基礎点の減点なのだ。
小塚選手は4回転を回りきったと判断されたので、4回転の基礎点10.30点からの減点、ジュベール選手は回転不足だったと判断されたので、70%の基礎点7.2点からの減点。すると不思議なことに、「4回転をまわりきって(と判断された)転倒した」町田選手の得点のほうが高くなってしまうのだ。
過去のダウングレード判定の弊害がまた出てしまった。転倒してる選手が6.3点もの点を稼ぎ、ちゃんと降りてる選手が6.2点しか稼げない。
この4Tの転倒が「回転不足(4分の1~2分の1)」と判定されると、基礎点70%(つまり7.2点)からの減点(GOEマイナスと最後のマイナス1の減点)、「ダウングレード(2分の1超の回転不足)と判定されると3Tの基礎点(つまり4.1点)からの減点になってしまう。つまり、転倒ジャンプの得点算出法は、3種類あるのだ! そんなものが必要だろうか?
4回転で転倒してる選手が、回りきったと判断されて最終的に得ることのできた点は6.3点(これはトリプルルッツの基礎点6点より高いのだ)というのは点を与えすぎではないのか。どんなに難しいことをに挑戦しても転倒してしまっては終わり。そう割り切るべきではないだろうか。
4回転は非常に難しい技なので、挑戦することに意義があり、そのために転倒してもある程度の点を与える・・・・・・と考えたとしても(個人的には転倒したら終わり、他の選手が同様の失敗をしない限りワールドチャンピオンにはなれないと割り切るべきだと思うが)、その一方で回転不足にはやたら厳しく、転倒以上の減点をするというのでは、「4回転挑戦奨励」の方向性から言ってもまったく矛盾している。
昨シーズンの4Tは回転不足判定でいきなり3T(トリプルトゥループ)の基礎点まで下がってしまったから、それよりは4回転ジャンプのリスクは少なくなった。ところが逆に「基礎点70%」などという無理矢理なものを設定するから、リスクの高い4回転に挑んで降りているのに、回りきって転倒してる選手より点が出ないなどというバカバカしい現象が起こる。転倒の減点をどうするかという議論も当然あるが、それよりもまず、この「基礎点70%」を廃止すれば、出てくる点数のゆがみはかなり是正できるはずだ。
城田憲子氏は、「現在、3人のテクニカルスペシャリストの判断だけでジャンプの回転不足が判定されているシステムにも疑問がある。多少回転不足でも素晴らしい4回転には点数をあげたい、そうジャッジが思っても、現システムのままでは限界がある」と書いている。
これは現行の回転不足判定ルールをある意味で否定する、大胆な意見だ。現行の回転不足判定の大幅減点を理論的に説明するとすれば、「多少回転不足」であっても、それは大きなミス、だから減点も大きい・・・と言わなければならない。その理屈をジャッジ全員が支持してやっているわけではないことを、「多少回転不足でも素晴らしい4回転には点数をあげたい、そうジャッジが思っても、現システムのままでは限界がある」という言い方は示している。
多少回転不足でも「素晴らしい」と言ってしまえるジャンプがあるのかどうかはやや疑問だが(回転不足は多少であってもやはり、質の悪いジャンプには違いない)、多少回転不足だからという理由でここまで減点することに疑問があるというのは、常識的に考えても頷ける。
というか、そんなことは最初からわかっている。だからモロゾフも吼えたのだ。回転不足でジャンジャン減点することに対して、ジャッジへの批判が高まると、ジャッジのほうはルールのせいにしている。私見では、これはルール、判定を行う技術審判の「目」の確かさ、そしてGOEを出す演技審判の裁量に対する信頼性・・・この3つがすべて絡み合っている。
判定に関して言えば、4分の1~2分の1の回転不足判定がやたら厳しかったり甘かったりというブレについて先日エントリーしたが、もう1つ、2分の1以上でのダウングレード判定(<<)が思った以上に多いという点も挙げられるかもしれない。
2分の1以上回転が不足してしまう、つまりあるジャンプの半分しか回転していないということになると、着氷でふっとんでしまうなど、マトモに降りられないのではないかという感覚的な想定を個人的に抱いていたのだが、その想定よりダウングレード判定は多く出ている。
たとえば、浅田選手のNHK杯のショートのトリプルアクセル。
相当の回転不足で重度の両足着氷になったが、まあなんとか立ち、「回転不足判定はされるが、ダウングレード判定はもしかしたらまぬがれるのでは」と思ったのだが、現実にはダウングレードされてしまい、そこからGOEでマイナス2をつけたジャッジが2人、マイナス3をつけたジャッジが7人で最終GOEがマイナス1.43点と、ダブルアクセルの大失敗の点とほとんど同じ、たったの 1.87点 にしかならなかった。
一方でパトリック・チャンのカナダ大会でのフリー。4回転を決めたあとトリプルアクセルで見事に転倒したが、回りきったと判断されたので、最終的には 4.5点 もらっている。
http://www.isuresults.com/results/gpcan2010/gpcan10_Men_FS_Scores.pdf
動画はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=DkC3B9kc0OM
(2つ目の転倒ジャンプがトリプルアクセル。空中で軸がバラけてしまい、酷い失敗ジャンプだ)
http://www.youtube.com/watch?v=JWopB5Vsf6Q
(最初のトリプルアクセル。空中で軸がかたむき、完全に回転不足でおりてきてしまった。だが転倒はしていない)。
転倒している選手が、回りきったということで4.5点もらい、転倒していない選手が2分の1以上の回転不足の両足着氷だと言って1.87点しかもらえない。このことから見ても、「回りきること」に対して与えられる価値が大きすぎるように思う。
「出来栄え」から見れば、そして「質」から考えても、最悪なのが転倒ではないだろうか? チャンが転倒しているのに点が出ているのを見てファンはいぶかしく思う。転倒ジャンプは何を跳ぼうと一律0点。そのほうが、恐らく採点は正常化する。
ダウングレード判定(2分の1以上かどうかの判断)の正確性に問題がないとは言わないが、あったとしても、それは取るに足らないものだと思う。現状ダウングレード判定されているジャンプは、見た眼にもはっきりわかる失敗ジャンプ。この判定に対する問題点よりも、「転倒で変に高い点が得られるケースがある」ことのほうが大きな問題で、転倒での点を是正すれば、ダウングレードでの点とのバランスは取れるはずだ。
それよりもさらに優先して解決すべき問題点が基礎点70%ルール。ジュベールの4T程度の回転不足は、GOEでの減点で十分ではないか。町田選手の転倒4Tより価値が低いなど、どう考えても非常識だ。
夏本番に向けて、今年も行列「エクストラ… 2011.07.09
昭和初期に教養あるイギリス人女性に感銘… 2011.07.07
善意のネット力――「浅田真央チャリティブ… 2011.05.17