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大島和隆の注目ポイント

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2009.10.09
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<音のしない車とのご対面>



そう、その車はトヨタの「プリウス」。高まる環境意識とエコカー減税などのお陰で受注が急増、今月発注した車の納車は来年5月下旬以降に工場から出荷される分となる異常な需要と供給のミスマッチを起こしているあの車です。たまたま今乗っている愛車の定期点検の関係で、担当のトヨタの営業の方が乗って見せに来てくれた(セールスマンですからね)のですが、自宅の前で見るとやはり違って見えるものです。

<新しい価値観、かっこ良さの創出>

当然車好きの私としては早速近所を試乗させて貰うことにしたのですが、正直に「この車は売れて当然だな」と思いました。それは私が"新技術"という単語に滅法弱いという性格なのもありますが、エコ・モードにして走ると、エンジンが回っていないいわゆるEV走行していることが何と多いことか。そりゃ勿論、5000CCのV8エンジンなどと比較したら、全然ひ弱だし、迫力なんて言葉とは正反対にいる代物ではありますが、低燃費車を買おうなんていう次元とはまったく異なるところで、正に「カッコいい」と思いました。バブルの時代、大型の欧州車を六本木あたりで乗り回すことに見出されていた価値観とは全く別のものがそこにはあります。

世の中、同じように考える人は多いようです。先日、もう何年も定期的に訪ねて自動車業界の技術トレンドをアップデートさせていただいている某社技術者の方とお目にかかりましたが、米国でもメルセデスやBMWからの乗り換えが多いというお話をお伺いしました。

それも素直に頷ける話です。車をその効用だけで突き詰めていくと、実際は日本でなら軽四輪で十二分であり、1,000万円以上も車にかける合理的な理由などありはしません。時速200キロから「神の見えざる手に掴まれたような絶対的な安心感のあるブレーキが凄いんだ」と(私も含めて)車好きは主張しますが、日本の高速道路では完全なオーバースペック。女性の服飾品と同じように、ブランド価値にそれ相応のプレミアムを払っているというのが現実だと思いますが、そういう価値観をも動かし始めたとも言えます。

<最新技術が満載、これぞ日本の誇り>

技術的に見ても、他社のハイブリッド車とは完全に一線を画す出来です。完全なEV走行ができるか否かがその分岐点だと言えますが、今までの車はエンジンを止めた瞬間、いろいろな不具合が発生します。走行中にエンストした経験のある人ならばお分かりだと思いますが、エンジンが切れた瞬間から、ハンドルは固く重く、ブレーキは急激に利かなくなりなります。多くの車のパワー・ステアリングがエンジンから動力を得る油圧ポンプ式から電動式に変わりつつありますが、ブレーキの倍力装置にもエンジンの排気が使われているからです。つまり完全なEV走行をさせるためには、基本設計を変えてすべてを電気仕掛けにしないとなりません。

言うは易し、するは難しの典型で、先々代メルセデス・ベンツEクラスがブレーキの電動化を試みたことがあります。それも完全なバイ・ワイヤー化ではなく、バックアップに既存技術のシステムを残してのそれでしたが、実装後2年程で中止、開発も中止したはずです。プリウスのそれは当然完全なバイ・ワイヤーで、おまけに制動時には回生エネルギーで発電までします。ブレーキを踏むたびに「エネルギー保存の法則」の方程式がぼんやりと頭に浮かんでしまったほどでした。

先日発表になったメルセデス・ベンツのSクラスのハイブリッドも、同様のシステムを搭載するBMW7シリーズのハイブリッドも、完全なEV走行はできません。前述の技術者の方は「とても凝った作りをしているのは事実ですよ」と教えてくれましたが、ハイブリッド・システムとしてはプリウスのそれの方が圧倒的に優れていると自信を持っておられました。

<素朴な疑問、なぜもっと量産しないのか?>

さて、問題はそれだけ優れているハイブリッド・カーであるプリウスが、この不景気の時代に、これだけのバックオーダーを抱えているにもかかわらず、今や世界一の量産自動車メーカーである天下のトヨタ自動車が、お客様に「欲しい」と言わせてから8ヵ月以上も納車までお待たせするという事実です。何がボトルネックで、何が足りないからそんなに生産が間に合わないのでしょうか?

電池が足りないから、電池の生産が追いつかないから、というのが一般的な認識のように思いますが、どうやらそれは違うようです。最も正しい答えは単純に「組み付けが間に合わない」ということのようですが、ならばなぜもっとラインを増やさないのか?という当然の質問が頭をよぎります。「単一車種でこれだけの受注残を抱えたことがない」ので、それに合わせて投資をすることを経営はリスクが高過ぎると判断しているというのが、ある意味教科書的な答えですが、数日後、あるセミナーでその答えがふっと頭に浮かびました。それは「トヨタはプリウスをあまり売りたくない」からなんだというものです。

<プリウス馬鹿売れはトヨタの大誤算>

恐らく、世界最大の自動車メーカーとなったトヨタ自動車にとって、プリウスがこれだけ受注残を抱えるように人気化したことは、嬉しい悲鳴というより、大きな誤算だったのだと思います。同社の10年3月期の決算見通しが営業損益ベースで7,500億円の赤字というのも、その辺のジレンマの象徴のような気がします。

次号へ続く

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楽天投信投資顧問株式会社
CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第60号 2009年10月9日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2009.10.09 16:54:05


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