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大島和隆の注目ポイント

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2010.02.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
<プリウスに備わる3つのブレーキ>

プリウスには3つのブレーキがあります。(1)回生ブレーキ、(2)油圧ブレーキ、(3)エンジン・ブレーキです。鉄道マニアには(1)回生ブレーキはお馴染みだと思いますが、要するに駆動用モーターを外力で回転させることで発電機とし、その発電抵抗で制動力を発揮するというシステムです。モーターに電気を与えると軸芯が回転しますが、軸芯を高速回転させると発電機になるということを中学生ぐらいの理科で習いましたよね?

摩擦や抵抗による発熱などで無駄に消費されているものがたくさんありますが、電気で物体を動かし、その運動エネルギーを再度回生して電気に戻せば、理論上エネルギー不変の法則が成り立つという、正にエコロジーなシステムです。エンジン・ブレーキのモーター版とも言えなくもないですが、発電するということで電力回生という意味で回生ブレーキという呼び方をします。

(2)油圧ブレーキについては、プリウスの場合はエンジンが回っていないEV走行の時もあるので、やはりこれも電動のポンプを使って油圧システムに与圧しています。故に車両全体の電力供給がストップしない限り、エンジンがかかっているかどうかに関わらず、ブレーキが使えます。バッテリーに電気が残っている限り、油圧ブレーキの与圧はモーターで行われ続けるからです。

<ブレーキペダルは単なるスイッチになった>

ここまでの説明ですでにお察しいただけた方もいらっしゃるかも知れませんが、プリウスのブレーキペダルは単なる電気系統のスイッチに過ぎません。これって実は凄いことなんです。人間の踏力をブースター(倍力装置)を介して増幅させて利用する従来からある油圧ブレーキ・システムとは全く構造が違うからです。これを「Brake by Wire」と言いますが、メルセデス・ベンツが先々代のEクラス(W211)に導入して、大量のリコール問題に発展し、その後の開発を諦めたという極めて高い技術力が求められるブレーキ・システムです。それを1台700万円も800万円もするベンツではなく、200万円前半で買えるプリウスに採用したというのがトヨタの凄さです。

プリウスのブレーキペダルは前述の通り、単なる電気スイッチなのですが、それは各種のセンサーでドライバーが踏み込んだ速度や力を測定して、その意図を汲み、前述の3種類のブレーキを作動させる役目を負っています。軽くそっとゆっくり踏めば回生ブレーキだけを作動させ、より強くグイッと踏めば油圧ブレーキをも作動させ、思いっ切り踏み込めば"急ブレーキ"と認識して最大油圧でブレーキ・ディスクをパッドが締め付けるような指示を与えます。

<ABSはいつ働くのか?>

さて、ここまでの通常の制動プロセスではABSは登場しません。ABSとはAntilock Brake System(アンチロック・ブレーキ・システム)の頭文字で、つまりタイヤをロックさせないで最大制動能力を維持するようにコントロールするシステムのことです。タイヤがロックする状態とは、いわゆる急ブレーキの時にタイヤがロックして路面と強烈に擦れるために生じるあの軋み音が発生している状態です。

ABSの普及と共に街中では滅多に聞くことがなくなりましたが、車両速度とタイヤの回転速度を読み取り、タイヤがロックした瞬間にブレーキ・パッドを緩め、回転し始めた途端にまた締め上げるという操作を繰り返します。アイルトン・セナはこれを足で毎秒10回近くも行ったと言われていますが、ABSは1秒間に最大数十回も行うことができるそうです。それがABSです。

<プリウス・ブレーキ問題の本当の状況>

つまりお解りの通り、ABSが作動する瞬間というのは路面状況にもよりますが、かなり緊急事態、逆にいえば通常の走行ではほとんど関係ないものということができます。そして本題になりますが「問題の不具合は、滑りやすい路面などで"ABS"が作動した場合、"回生ブレーキから油圧ブレーキに切り替わる際に時間差が生じる"(トヨタ自動車横山裕行常務役員)ことが原因のトラブル」が発生する状況とはいかなる場面かということを再考してみる必要があるでしょうということです。

通常ドライバーはブレーキの利きが甘いなと感じるとブレーキペダルを余計に踏み込むはずです。確認しましたが、そうすれば問題なく制動力は確保されるということです。逆にいえば、1秒間の空白を感じるということは「あれ~、ブレーキが利かないなぁ」と、そのままの状態でいた場合に生じる感覚だと関係者から聞いています。

確かに最近では高齢者のドライバーなども増えてきたことから、全力制動の急ブレーキになるまでブレーキペダルを踏み抜く力を出せない方も増えてきており、ブースター(倍力装置)のみならず、ブレーキ・アシストと言って、ドライバーの意思が急ブレーキを必要としていると車が判断したら、その踏力に関わらず全力制動状態になるシステムを搭載している車も増えてきています。

しかし、前述した通り、プリウスのブレーキが利かないと感じる状態というのは、現時点で私が調べた限りでは「かなり稀な状況」と言えるように感じ、一般に「プリウスのブレーキは利かない時があるらしい」というような認識とはちょっと齟齬があるような気がします。

<海外世論に同調すべきではない>

それにも関わらず、米国では議会を交えて、相当この問題を大袈裟に伝えているかに聞いています。また韓国のメディアでも敵失を喜ぶ(韓国車の市場シェア拡大はかつての日本車のそれに似ています)かのごとく、日本の数倍もの露出で取り上げていると聞いています。そしてメルセデス・ベンツがボッシュと組んでも一旦諦めているような高度な技術のこのプリウスのブレーキが非難の対象となり、もしトヨタも諦めるようなことになったとしたら、それは技術大国として生き残らざるを得ない日本の未来にとって、とてもマイナスな話だと思われませんか? 本件が日米外交問題のスケープゴートだという考え方は
メルマガの方 でご紹介していますが、そうした意味においても、日本の政府にもっと適切な対応をしてもらいたいと思っています。

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CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第68号 2010年2月12日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.02.12 11:54:20


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