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大島和隆の注目ポイント

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2010.07.09
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<携帯と無線LANの融合>

6月21日、AT&TとVerizon WirelessがWBAに加わったというニュースを聞いて「こりゃ面白くなってきた」と手を叩いた市場関係者は、少なくとも日本市場ではあまり多くはないと思います。そもそもWBAとは何かということ自体、ご存知ない方が多いでしょうから。ここで話題にしようと思っているWBAとは世界ボクシング協会(World Boxing Association)のことではもちろんありません。WBAとは「Wireless Broadband Alliance」のことで通信事業者がWi-Fiネットワークの相互利用を推進することを目的に2003年から活動している団体のことです。

<AT&TとVerizon Wireless>

念のため説明すると、AT&T並びにVerizon Wirelessとは、米国を代表する携帯電話事業者大手2社で、現在iPhoneの独占販売権を持つ通信事業者がAT&Tです。一方、全米最大の携帯電話事業者であるVerizon Wirelessは、現世代(3G)の通信規格が異なることからiPhoneの取扱いができずにいます。ただ近時Apple社との間で合意(つまりApple社がVerizon Wirelessが利用している通信規格でiPhoneを生産するということ)が成立し、来年からの取扱いが発表されています。

<W-CDMAとCDMA2000>

通信規格の話を少しすると、現在の携帯電話の世代はいわゆる第三世代(3G)と呼ばれるものです。日本でもW-CDMA系がNTTドコモとソフトバンクで、auだけがCDMA2000という別規格になっています。どちらも“CDMA”という方式では一緒にも見えるのですが、第二世代の時にGSM系だったか、CDMA系だったかなどでも微妙な違いが生じており、結果としてローミングが“できる”“できない”といった問題が生じてきています。

例えば、これは合法的な利用方法ではないと思われますのでお勧めしませんが、香港でSIMロックフリーのiPhoneを買ってきてドコモのSIMカードを入れるとドコモユーザーであってもiPhoneが使えます。同じことをしてもauのSIMカードは繋がりません。これが通信規格の違いによるものです。また海外に行って、自分の携帯電話はそのままローミングできたのに、お友達や家族のそれはローミングできずに繋がらない(或いはその逆)といった経験をされたことがある人も多いと思います。それもこの通信規格の違いによるものですが、どちらも今現在の通信速度が静止時 2Mb/秒、歩行時 384kb/秒、高速移動時 144kb/秒確保できることになって第三世代と呼ばれています。

ちょっと大雑把な括り(第三世代は正確には5種類の規格があるため)で恐縮ですが、現在iPhoneを取り扱っているAT&T はW-CDMA系の前者に属し、Verizon Wirelessは後者に属します。別な見方をすれば、現在でもSIMロック解除を総務省が進めればドコモユーザーはiPhoneを使えるようになりますが、auユーザーは使えません。しかし、Verizon WirelessがiPhoneを取り扱うようになって以降は、Verizon Wirelessと同じCDMA2000という規格を使うauにもハードウェアとしての互換性が生まれますので、ドコモやソフトバンクからの乗り換えはできませんが、auでもiPhoneが使えるようになるかも知れません。

<帯域幅が足らなくなる>

話を本題に戻して、iPhoneに限らずスマートフォン・ユーザーが全世界で劇的に増加していることはご承知の通りです。スマートフォンとの関わり合いで作戦失敗(積極的に展開しなかった)したノキアは先の四半期決算の発表で市場予想を下回る収益内容となり市場から叩かれることになりました。遅まきながら同社はスマートフォン開発に力を入れ始めていますが、かなり周回遅れになりつつあります。一方で、そのスマートフォン・ユーザーの激増に耐え切れなくなりそうというのが通信インフラのキャパシティです。いわゆる「帯域幅が足らない」という現象になりつつあります。

<有線LANで起きていることがワイヤレスの世界でも起こる>

話は簡単です。マンションなどにお住まいで、マンション全体の契約として光ファイバーやCATVインターネットとの契約があり、それを既設のインフラとしてブロードバンド・サービスをご利用の方ならこの例えが簡単にお解りいただけると思うのですが、昼間は快適にサクサク使えるネットワークが、夜になるとグッと速度が遅くなったりすることがありませんか?

正にそれと同じ現象がワイヤレスの世界で起きようとしているということです。マンション全体に1本か2本の光ファイバー回線を引いて、それをルーターで分岐して共同利用している場合、昼間は住人の多くが会社や学校に行かれているのでインターネットの利用者が少なくなりますが、夜になると当然グッと利用者が増えます。そうすると例え光回線といえどもキャパシティが一杯になってしまうので、速度がグッと落ちてしまうという現象が起きます。

光ファイバー回線など外部アクセスの回線を増設することで問題は解決するのですが、この現象と同じことがワイヤレスの環境でも起きようとしています。そうした見通しがあるからこそAT&TとVerizon WirelessがWBAに加わったというのが事の真相なのですが、ワイヤレスの世界では光ファイバーを増設するというような簡単な解決策はありません。

<次世代になるのはまだ少し時間がかかる>

携帯電話の技術革新の話はよく世代の話として扱われます。先程も使いましたが、現在の携帯の世代は第三世代です。“3G”と呼ばれるのは「3rd Generation」という意味で使われていますが、ドコモで言うならばムーバの時代が2G、FOMAになって3Gです。今年中にサービスが開始されると言われているLTE(Long Term Evolution(ロング・ターム・エボリューション))などは次世代の4Gではなく、一歩手前の3.9Gで、最近iPhoneやiPad、或いはe-mobileのPocket Wi-Fiなど高速データ通信の時に使われるHSPA(High Speed Packet Access)などは3.5Gなどと言われたりします。そして3.9Gでも今年の暮れぐらいから、4Gに至ってはまだ数年先の普及ということで実はまだ実用化への道程はかなり長いと言えます。

<ユーザーのフラストレーションは溜まるばかり>

ただお解りの通り、これらはどれも通信キャリアのサービスの中でのワイヤレス環境です。今後ますます増大することが予想されるデータ通信のトラフィックを全部この中で受け止めるとすると、通信キャリアの受け止めなくてはならないトラフィックも天井知らずの状況が続きます。しかしその一方で、無線LANのニーズもどんどんと増加しています。それは4Gの世界ができ上がるまでは、間違いなく帯域幅、簡単に言うと伝送速度で携帯のワイヤレス環境のそれを圧倒的に上回るからです。

iPadユーザーは恐らく3.5Gまでの環境では相当にフラストレーションを抱えているはずです。iPadと同じプロセッサーを搭載したiPhone4のユーザーも、恐らく同じ、もしくは本来の性能を出し切れずにいるはずです。これは何もアップルの製品に限った問題ではなく、スマートフォン・ユーザーや、今年の夏モデルとして出てくる多くのネットPC系のユーザーに共通する問題のはずです。

<HOTSPOTの無線LANを有効に使う>

一方最近HOT SPOTと呼ばれる公衆無線LANのポイントが現在激増しています。ただ、そのアクセス・ポイントへの接続契約を持っていない人にとっては、それらは何の役に立たない代物で、電波ですから存在すら気付かないかも知れません。でもそれらをまず総てのキャリア契約者、すなわちドコモユーザーも、ソフトバンクユーザーもauユーザーも誰もが供用できる仕組みを作れば、まずその分は携帯電話のインフラにかかる負荷を確実に落とすことができます。

技術的には無線LANのアクセス・ポイント間の移動を橋渡しするものは開発されています。つまり、電波が届く範囲のHOTSPOT間を渡り歩けば、接続は途切れることなくシームレスに繋がったままになるということです。この間、負荷がかかるインフラはインターネットの方で携帯キャリアのワイヤレス環境ではありません。

<ニーズを満たす中に、需要はたくさんある>

ただいずれにしてもバックボーンにかかる負荷は今後ますます増えることはあっても減ることはありません。AT&TとVerizon WirelessがWBAに加わったというニュースは、そんな世の中の流れを、現場を預かるキャリアの側で実感として認識したからこその動きのはずです。何故ならVerizon Wirelessは従来自社のワイヤレス環境の構築に固執しており、自社ネットワーク向けに販売するスマートフォンでWi-Fi機能を無効化までしていたと聞くからです。

この流れの中に、僕らは多くの投資機会を見出すことができます。

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CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第78号 2010年7月9日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.07.09 15:33:05


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