PR

プロフィール

大島和隆の注目ポイント

大島和隆の注目ポイント

カテゴリ

お気に入りブログ

まだ登録されていません

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2010.07.23
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

<iPhone 4、トラブル発生>



iPhone 4の場合、ボディケースの周辺部を全部アンテナとしました。それがデザイン的な特徴にもなっているのですが、ユーザーがギュッと握りしめる部分と一緒であるため、電波の弱いところではアンテナが電波を受信しなくなるというトラブルが発生してしまいました。

<根本的な対策は事実上不可能>

もしこれを根本的に対応するとなると、アンテナの位置を変えることにもなるため、強いてはケースの中の配線基盤のレイアウト・デザインまで変更しないとなりません。デスクトップパソコンのように中がスカスカしていて、デザイン的な変更の余地がたっぷりある電子機器ならばともかく、スマートフォンの中は電子部品がギューギューに押し込まれた押し寿司のようなものですから、外見そのままに中だけ変えるというのは相当にハードルが高い作業になります。

少なくとも「ハイ、対策品を出しました」と右から左にできるような物ではありません。色々なノイズ対策やら、排熱対策などもしないとならないからです。以前、某社のスマートフォンが新商品発表の期日に無理やり合わせるため、内部のノイズ対策を突貫工事でしないとならず、実はケースを開けると中が銀紙だらけだったという話を聞いたことがあります。それだけ大変な作業が待っている問題のはずです。

<ふたつの対応策>

今回、アップル社はこの対策として二つのことをしました。ひとつ目は本体を手に持つ時にアンテナの受信状況を阻害しないようにするための特別なケースを無償配布するというものです。そもそも今回の原因は、iPhone 4の独創的なデザイン、つまり本体周辺部をアンテナとするデザインが故に、ユーザーが握りしめてある場所を押さえ込むと電波が通じ難くなるというものだからです。

ケースをかぶせることで、物理的にそこに人間の手が当たらなくすれば良いだろうというアイデアなのですが、前述のような状況で内部構造を直ぐには変えられないという事情からすれば、仕方ない対応策なのかも知れません。アップル純正のそれがデザインを破綻させないものであることを願うばかりです。

そしてもうひとつがスティーブ・ジョブズCEOによる謝罪です。その詳細な内容、或いはやり方は口の悪い輩からは異議を唱えられるかもしれませんが、少なくとも多くのメディアに「スティーブ・ジョブズCEOが謝罪」と取り上げられるような内容であったことは、企業の危機管理の在り方としては見事だったと思われます。ここで消費者の神経を逆撫でするような話になると、最近はまとまる話もまとまりませんから。

トヨタ自動車も最終的には状況は改善しつつありますが、昨年始まった諸々のリコール問題に対して、初期動作として豊田章男社長の動きがもう少し違っていれば、或いは多少はうまく事が収まっていたかも知れません。世界をリードする企業のCEOは楽ではないなとあらためて思わされる出来事でした。

<トラブルがあれば株価は下がるもの>

さて私たちが議論をしないとならない問題はここからです。投資家として「アップル( AAPL )とどう付き合うべきか?」ということです。もちろん、現在同社の株式を保有しているのかいないのかによって状況は異なると思いますが、これはまるでビジネス・スクールのディスカッション・テーマになりそうな内容です。当然前述のトヨタ自動車( 7203 )の株式との関わり合い方についても同様なことが言えます。要するに、基本的に技術力があって、業界トップを突っ走っていた企業が、何らかのビジネス上の障害に直面した時、その企業に投資家として「その時及び今後どう接するべきか?」ということです。

当然、企業が何らかのトラブルを抱えれば、それに対応せねばならず、一義的にはその対応コスト(リコール費用など)が発生し、売上もいろいろな意味でダウンするでしょうから、利益ベースで考えると相当ダメージを受けることになります。

株価は企業の収益動向を反映するというのが、どの教科書を見ても言われるセオリーですから、トラブルを抱えた企業の株価はほぼ間違いなく値下がりすることになります。ましてや赤字転落とでもなれば相当な株価ダメージを受けるというのが一般的な常識です。もちろん、それは買う人よりも売る人が多いからですが、最近はこうしたネガティブ・ニュース・フローに対してショート(売り)から始める運用手法を得意とする人もいるので、単純に株を持っていた人が逃げ売っているだけの構図とも違うのですが、値下がりすることには違いありません。

<投資家とは? 株主とは?>

さて、ここからが重要な議論になります。「株を買うとは、その企業の株主(所有者)になること」というのも教科書的なひとつの教えです。私自身も長いファンドマネージャー生活の中で、これを投資哲学の大きな柱として考えています。だからその企業が何をしているのか理解できないところには投資をしない、逆に投資をするならとことん理解するように努めるようにして来ました。

私がパソコンを作ったり、車をいじくり回したり、或いはわざわざシリコンバレーまで出かけて企業調査をしたりするのは、正に株主として企業を所有する前に「何処で、何を、どうやっている会社なのか?」をよく知りたいがためです。その上で「この会社は面白い!」と判断してから株を買うようにしています。そしてその企業のことを応援するのです。

では、投資している企業がトラブルを抱えた場合はどうしたらいいのでしょうか? 株主というのは企業の所有者ですから、その企業の製品なり、サービスなり、或いは企業理念などに惚れ込んで株を所有しているはずです。いわば企業の応援者でもあります。その立場で考えた場合、企業が何らかのトラブルを抱えて苦境に立たされた時「もうこいつらは駄目だ!」と言って株を手放すことは正解なのでしょうか?

もちろん株価は下がるわけですから、経済合理性から言えばそこで一旦は株を売却するというのは正解だと言えます。企業経営の失敗のために、自分の大事な虎の子を減らされたくないと思うのも当然のことです。でももしそれが自分の贔屓のサッカーチームや野球チームだとしたらどうでしょうか? 負け込んできたからといって、ファンを辞めてしまうのでしょうか?

<ケーススタディ「アイシン精機刈谷工場の火事」>

もう10年以上も前(1997年2月)のことになりますが、私の大好きな会社の一つであるアイシン精機の刈谷第一工場で火事が起こったことがあります。そこで作っていた製品はブレーキ用のプロポーションニング・バルブといって、トヨタ車のブレーキ機構にはどうしても必要な重要部品でした。その大半をその工場が一手に作っていたのでトヨタの生産ラインがほとんど止まるという大問題に発展しました。「Just in time」とか、かんばん方式と呼ばれる生産方法の弱点を突かれた形になったのですが、当然そのニュースが発表になった時、それまで1700円台で取引されていた同社株価はストップ安になるまで叩き売られました。

仲の良い証券会社のアナリストからの電話で私はそのニュースを知りました。たまたまその数日前にその工場を見学していたことも有り、出火したという事実に複雑な思いを抱いたのですが、同時に私はそんなセンチメンタルな想いとは別に投資判断をしないとなりません。何故なら、私のファンドには大量の同社株が組み込まれていたからです。

まずはそのダメージの推計です。考えられる被害は、その拡がりは、或いは原点まで回復するにはどの程度の時間が必要か、などなどです。ただそれをあまり精緻に計算している余裕などありません。株価は直ぐに動いてしまうからです。そのニュースを最初に聞いた時にはまだ市場で売買が成立していたと思います。ただ間もなく売り気配になって取引もできなくなったと思います。

皆さんが私の立場なら、どうされますか?

==========================================================

CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第79号 2010年7月23日発行より) ==========================================================






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.07.23 14:33:31


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: