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大島和隆の注目ポイント

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2011.07.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
<株主総会とは>



当初にオフィスを借りたり、デスクを買ったりする最初のお金はすべてその出資者が出した資本金で賄われます。段々売り上げが伸びるようになって、利益も出るようになってくると、決算ごとに会社の純資産が段々と膨らみ始めますが、仮にそれが資本金を上回ってきたとしても、もしある瞬間をもって株主みんなで「やーめた!解散!」と決めて全部を現金化して精算したら、その清算代金は出資比率によってきちんと株主に分配されて戻ります。だから会社は誰のものとあらためて問えば、本来は「会社は株主のもの」ということになります。当たり前ですね。

株主総会とは、その株主(すなわち会社の所有者達)が集まって、その会社の運営状況(一番手っ取り早い話が決算承認)を話し合い、いろいろと今後の事業計画などにオーナーとしての決定を下す機関です。「株式会社 組織図」として検索してみてください。多くの企業の組織図へのリンクがヒットされますが、そのどれを見ても、組織図の頂点に来るのがこの「株主総会」です。会社の中でも最高の意思決定機関、それが株主総会です。

<取締役、取締役会とは何か>


会社の「社長」、或いは「重役」なんて聞くとものすごく偉そうに聞こえたりもしますが、この人達は何かと言えば株主総会によって選任された会社の舵取り(経営)をする人たちであって、別に会社の所有者(株主)ではありません。これを所有と経営の分離と言いますが、中には筆頭株主が社長である例も多々ありますので、この場合は所有と経営が一緒ということになります。

社長=100%株主という例だってあまたあります。ただ通常は上場企業の場合、資本金が大変大きく、ひとりの個人で持ち切れるような金額ではないため、多くの場合は社長といえども多くて数%の株主に留まることが多いです。また逆に会社の株式はひと株も持っていない「(株主からの)雇われ社長」もたくさんいます。

その意味において、株主総会で自社の経営成績を発表する議長として、社長が「わが社の業績は…」というのは理に合わない時があります。米国企業の株主総会では通常間違っても「My company」という言い方はされず、「Your company」という言い方をします。取締役はあくまでも経営のプロフェッショナルであって、所有者ではないからです。

通常は株主総会において、任期1年もしくは2年間という期間で取締役を選任し、その人達が任期中の会社の運営を任されて行います。いちいち細かいことについて、年度期間中に株主がゴチャゴチャと口を挟むことはありませんが、ただ成果が上がらなければ最大の人事権をもって選任と解任を行います。

<歪んだ株主構成>


さて、今年の株主総会の注目は何と言っても東京電力だったと思います。福島で原子力発電所の大事故を起こし、その後も収束の目途がいまだに立たないまま今日に至っています。その中で行われた株主総会。9,200人もの多くの株主から経営責任を問う声が聞こえ、また株主総会自体延々4時間超の長丁場となりました。

しかし、メディアが批判するように、そうした株主の経営責任を問う声や原子力発電所の今後についてなど、基本的に会社側提案がその場で覆ることはありませんでした。私がファンドマネジャーとなって市場業務に携わるようになってから、記憶の限りにおいて、株主総会で議案議事が紛糾し、会社側提案がその場で覆されたという例はあまり想いあたりません。

その理由は、株式の持ち合いという制度が日本企業を支えているからです。この点をきちんと理解しておかないと、実は株式投資の多く部分で間違えを犯すことがあると思っています。

<投票権は株数に依存する>

選挙権は20歳以上の国民に等しく与えられています。年間に数億円、数十億円の税金を納めている人もそうでない人も一票の重さに区別はなく平等です。この意味においては、株主の議決権は不平等です。つまり株主ひとりに一票ということではなく、株式一単位につき一票という計算になるからです。つまり一人の人でも、1,000株持っている人よりは、2,000株持っている人の方が発言権が上だということです。

前述の出資額に応じて権利が変わるという視点で見てもらえれば至極当然の話なのですが、テレビのニュースなどで個人株主の多くが「反対」と言っているのに、どう見たって会場の過半数は反対しているだろうと思われても会社側提案が可決されていく理由はそこにあります。つまり、ひとりで他を圧倒するだけの量をたんまりと持っている人がいるということです。

それが株式の持ち合いです。東京電力のケースで言えば、2011年3月末現在、308社の金融機関で約30.3%の株式を保有するのに対し、何と74万人の個人株主で43.7%を保有する計算になります。実はその前の年、つまり東日本大震災の前になると、2010年9月末現在370社の金融機関で約36.3%を保有し、60万人の個人株主で約37.7%を保有していました。つまり恐らく震災後の株価急落の局面で、必死になって売り逃げた金融機関が62社ある一方で、約14万人の個人投資家が買い向かったという図式です。逆に言えば、この最後まで持ち続けた約30.3%の金融機関こそ、投資損益度外視で政策的に株式を保有していた株主ということになります。

<会社は株主のもの>


日本の国政選挙がそうであるように、実際に自分の投票権を行使する人は100%ではありません。選挙の投票率が50%を切ることも多々あるように、どうも日本の場合は民主主義の最大の権利を放棄してしまう人が多いのが実情ですが、株主総会も実際同様だと思われます。今年も株を持っている人には洩れなくその企業から株主総会の招集通知と議案説明、そして賛否を示すハガキなどが送られてきたはずですが、手続きが面倒だとほったらかした人も多かったはずです。

一方、大口の株主に対しては企業は総務部が総力を挙げて各議案への賛成票の取り付け、或いは委任状の取り付けに走り回ります。必要な場合は社長・会長自らが同意取り付けに走り回ります。もし、この安定株主である30%の同意を得ることができれば、株主総会提案議案はほぼ賛成可決となったも同然なのですから。

<会社は取締役会のもの>

この図式から行くと、株主総会に提議する議案は事前の取締役会で決定していますから、もし安定株主が意のままに動く相手だとすると、実は会社は取締役会のものという実態が見えてきます。何故なら、株式の持ち合いをする金融機関の株を持っているのは、持ち合いの相手方なのですから、双方の取締役会の利益が一致してしまうのです。

取締役会としては、当然自分達の任期もコントロールしたいし、役員自体の改選時における人事も自由に行いたい。更に言えば、会社の事業の大きな変更であるとか、利益計画や処分案、或いは役員退職慰労金などなど、取締役会で決めたいと思うのが人情というものです。

取締役会は誰がどう牛耳っているのか? これは会社それぞれによって違います。派閥がある時もあれば、有無を言わさぬだけの功労者がトップに居る時もあります。歴代のOB達が院政の如くに後任人事を操っている会社もあります。当然、親会社が有無を言わさずコントロールしている時もあります。実はこのあたりをきちんと把握しないと、会社のガバナンスがどうなっているのかなどは解らないというのが事実だと言えます。

<真のコーポレート・ガバナンスとは?>

こう書いてしまうと、個人株主や普通の投資信託のファンドマネジャーが大上段に構えて「株主議決権行使の方法とその検討方法」などと悩むのはバカバカしいことのように思える時もあります。確かに、株式持ち合いでギチギチの会社の株主総会に異議を投げ掛けるのはかなり難しいかも知れません。

しかし、私達にはもうひとつの、そして最大の武器があります。議決権行使で反対を投じるなどというまどろこっしい方法ではなく、もっと簡単な方法です。そういう会社の株は買わなければ良いのです。運悪く、自分がそういう会社の株を持っていたんだということに気がついたら、売ってしまえば良いのです。その結果何が起こるのでしょうか?

当然、株価が下がります。売る人が多ければ多いほど、買手の数と均衡するまで株価は下がります。今回の震災後に東京電力でさえ多くの金融機関が売り逃げたのは、その東京電力株の下落による投資損失に耐えられなくなったからです。こうした安定株主が逃げることこそ、企業にとっては最大のリスクであり、こうした企業の取締役会も市場の声についには耳を傾けざるを得なくなります。

議案に反対したいものがある、経営方針に納得がいかないという企業の株は、議決権行使の葉書を出すことよりも「買わない、持たない」というのが、今の日本企業に真のコーポレート・ガバナンスに気付かせるひとつの方法であり、つまらぬイライラを抱えぬ良策なのかも知れません。

やや寂しい結末だと思われてしまうかも知れませんが、それが上場企業の株式がいつでも売買できる取引所にあるという本当の意味だとも思っています。今年の東京電力の株主総会を見ながらつくづくそう思いました。

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楽天投信投資顧問株式会社
CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第100号 2011年7月8日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.07.12 17:05:13


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