汚れ




手をのばせば
    とどくのだろうか



“ぎゅっ”

夕日が部屋を赤く染めている
夕暮れ時の部屋の中
突然、何かにひっぱられた裾に目をおき
少々目を丸くしたあと葉は微笑んで
その静寂な空気をやぶった。

「どうかしたンか?蓮」

そんな葉の言葉にハッと我に返る。
気が付けば自分の腕は伸びており
しっかりと葉の服の裾を握っている。
そんな様子に蓮は赤面し、葉を突き飛ばした。

「何なのだ貴様ァ!!」
イテテテテ・・・とでも言うかのように葉は頭を押さえて元の位置に戻る。
「そんなこと言ったって蓮から握ってきたンよ」
「なッ!」

意識がなく、しかし、自分がやったようにしか見えないこの状況に
蓮は戸惑いが隠せない。

「シてほしいんか?」

パシィン

また部屋に音が響き渡る。
「何を言っているのだバカもの!!」
「いや蓮がそう思って・・・」
「そんなわけなかろうがっ!!」
「そうなんか?」
「当たり前だ!」

「じゃあ」
葉の一言でまた空気が変わった。
あまりいい空気ではない様子に少し引き下がる。

「何考えてたんだ?」

ドキッとした。でもその言葉を言って貰いたかった気がした。

「・・・・俺は」
「・・・」
「俺は血で汚れている」

指折り数え切れぬほど
人を殺し
血を浴びて

「貴様とは違う」
「・・・」
「距離がある」
「・・・」
「一緒にいても近づけない気がした」
「・・・」
「だからだ」

葉は少々黙った後、蓮を抱きしめた。

「な、なにをするのだ」
「こっちの方が近いだろ」
「・・・俺は」
「昔の汚れなんか関係ないんよ」
「だが・・・」
「蓮が気にいらねぇッつんだったらオイラも血で染まるから」

      ずっと一緒にいよう

おいらは大好きだから 俺は大好きだから

それに        それに

おいらは汚いから   血は落ち始めたから


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: