そのうち小説になるやつら


 『薬』


抱きしめると伝わってくるあなたの温もりが
いつの間にか自分の安定剤になっていた


「蓮」
停滞前線がなかなか動きを見せない6月。
誰いない民宿である自宅の居間でふと呟く。
彼がここにいないのということはわかりきっているけど、
やはり一人は寂しくて。
家も無駄に大きく寂しさだけが倍増する。

部屋には外の雨音が響き渡る。


キキタイノハコンナオトジャナイ。


縁側を開けっぱなしにしているからだろうか、冷気が頬に触れていく。

ホシイモノハコレジャナイ。


しばらくしてから横になっている身体を起こし、ユルイ頭で考える。
「―――蓮に会いに行くか・・・」
身支度を整え、葉は家をあとにした。

キキタイノハコンナオトジャナイ。
ホシイモノハコレジャナイ。
ホシイモノハココニハナイ。


ホシイモノハ、キキタイモノハ・・・

  レン。

何時からだろう
結構前から好きだったけれど
自分の一生の中で
1秒でも永く
あなたと一緒にいたいと思い始めたのは。


雨が降っているけれど傘なんて家にないし、買っている時間ももったいなくて。
雨にうたれて、服が濡れて。
身体に張り付く服は少しうざったいが。
雨はなかなか気持ちがいいかもしれない。
そう思いながらも足は速く進む。


ハヤクアイタイ。

                    (続)


 『永遠の時を』

永遠に、僕等は共にいられるのだろうか。

「貴様は俺が倒す」
倒すは殺す意味ではないけれど。


「戦いは厭なんよ」
戦うことも必要かもしれないけれど。

お互いに目的を達成した、僕たちは

   もう二度と会うことはないのだろうか。


「もう行くんか」
「ああ、親父にも伝えなければならないからな」
「またこっちに来られるんか?」
「ありえん。来るような用事などない」
「そっか。たまには連絡くれよ」
「いつか…な」

グレートスピリッツの気まぐれによりシャーマンファイトは一時中断となった。
準決勝 葉vs蓮。
その時を、二人の戦いが始まるのを待っていたかのように。
見計られたように意志が伝えられた。

                             (続)


 『言の葉』

「アイシテル、なんて言ったら嘘になっちまうな」
「…?」
「だって…」

そんな想いなんて超越したから
言葉に出来ないほど君を思っているから

抱きしめていた腕を少しゆるめて。顔を向かい合わせ。微笑みあって。
どちらからともなくふとした口付けは、何処かほろ苦い味がした。

「貴様は」
「…蓮?」

「遅いのだ」

「っ!?」
「まさかっ!!」

連の持っていた毒薬袋はもう空で。
「最後にでも気持ちがわかってよかった」
「蓮っ!」
「何でこんなことすんよ!」
「わからん。…ただ」
「ただ?」

「貴様を、葉を、愛していたから」

「蓮」
「ふ、違ったな」
「え?」
「言葉になどならないのだろ?」
「 」

言葉に出来ない。
涙があふれた。
                         (続)


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