2021/02/09
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

2015 12 月 ドイツ出張備忘録 7 . Weingut Staffelter Hof

エバーナッハ修道院を後にしてクレーフに向かった。今度は上流方向、つまり朝向かった方向とは反対方向に車を走らせたが、蛇行する川沿いでは時間がかかるので、山の中をショートカットする道を選んだ。しかし携帯の電波の状態が悪く、ナビゲーションがまともに動作しなかった。時々指し示すのは森の中へ続く獣道か、トラクターしか通れないような狭い農道で、結局ナビを無視して川沿いを走った。




 次の醸造所はシュタッフェルターホーフ醸造所 Weingut Staffelter Hof という。 862 年にカール大帝のひ孫にあたるロタール二世が、ベルギーのスタヴロット修道院に葡萄畑を寄進したのがはじまりで、醸造所の名前もこの修道院名に由来する。醸造所の建物の入り口ファサードにはラテン語で "Conferimus eis ob exiguitatem vini" とロタール二世の寄進状の文言が書かれている。「ワインの不足故に我ら彼らに(葡萄畑を)譲渡す」といった意味で、修道院の本拠地周辺では、葡萄があまり育たなかったのだろう。以来数百年に渡り、モーゼルで栽培醸造されたワインは約 140km 離れた修道院まで、領民により馬車で輸送された。

1805 年のフランス革命による世俗化で、革命軍に没収された葡萄畑は民間の手に渡り、やがて 1894 年、購入者の孫娘が婚資として、醸造所と葡萄畑を持ってクライン家に嫁いだ。その末裔が現オーナーのヤン・マティアス・クライン氏 38 歳( 2015 年)。先日 66 歳の父から正式に醸造所を継いだばかりだ。





ヤンは 1997 年から 1 年間、ラインヘッセンのサンダー醸造所で、 98 年からモーゼルのマルクス・モリトール醸造所で研修した後、ハイルブロンで 2004 年まで醸造所の経営を学んだ。在学中の 2003 年にニュージーランドのサークレッド・ヒル・ワイナリー Sacred Hill Winery で研修し、卒業してから 1 年間オーストラリアのローウェ・ヴィンヤーズ・アンド・ワイナリー Lowe Vineyards and Winery で働いた。

実家に戻ってきたのは 2005 年の夏で、翌年から本格的に経営に関わり始めた。ビオに切り替えたのは 2011 年のことだ。最初の研修先だったサンダー醸造所では、 1950 年代からビオを始めた先駆者の、オットー・ハインリヒ・サンダーから色々と教わったという。ローウェ・ヴィンヤーズもビオロジックの醸造所だから、ビオの経験は十分に積んでいる。それに醸造所が近くにある、ルドルフ・トロッセンも惜しみない助言をしてくれるそうだ。

ビオの認証を取得したのは 2014 年。転換翌年の 2012 年にはペロノスポラの被害をもろに被って収穫の 3 分の 2 を失ったという。一方 2014 年は逆に、雨の多い年だったが下草が水分を吸い取ってくれたので、他の醸造所よりも腐敗の被害が少なかったそうだ。醸造棟の屋根には太陽電池が設置されており、これで醸造所の電力をまかない、雨水を貯めて庭の植物の栽培に利用し、環境に優しいワイン造りを実践している。来年からはビオディナミを導入するそうだ。

ワインはどれも優しい味がする。肩の力が抜けていて、フルーティで親しみやすい。どちらかといえば辛口・中辛口よりも、とてもアロマティックで充実した甘口に魅力を感じた。





ヤンは 2014 年産から亜硫酸無添加醸造に挑戦している。クレーファー・シュテッフェンスベルクのリースリングを 12 時間マセレーションした後圧搾し、伝統的なフーダー樽で野生酵母により発酵。 6 月まで発酵を続けた。その後は月一回澱をかき混ぜ、常に樽を満杯に満たすように気をつけながら熟成してきた。瓶詰めは来年 1 月で、 2 月上旬に開催される有機食品のイヴェント、ビオファッハ Biofach でお披露目する予定だ。樽試飲したそのワインは力強く真っ直ぐで凝縮した味わいをしており、酸化の気配はほとんどなかった。同様の醸造はルドルフ・トロッセンとメルスハイマー醸造所が取り組んでいるが、とりわけ同じ醸造所団体クリッツ・クライナー・リングに加盟しているトーステン・メルスハイマーの亜硫酸無添加リースリング、ヴァーデ・レトロ Vade Retro に刺激を受けたという。トロッセンの亜硫酸無添加リースリング、プールス・シリーズが今では生産の半分以上を占めていることも知っていた。メルスハイマーは、スティルワインの他にスパークリングでも亜硫酸無添加を始めたそうだ。




白ワイン用葡萄をマセレーション発酵したオレンジワインとは別物だが、亜硫酸無添加ワインも、これまでにないスタイルのワインとして、オレンジワインとともにドイツでも次第に注目されつつある。もっとも、 2015 11 月下旬にベルリンで開催された、ヴァン・ナチュールの試飲会 RAW では批判的な意見も目立ったようだ。一方、これまで地道にヴァン・ナチュールを紹介し続けてきたケルンの La Vincaillerie のようなワインショップもあり、ファンも少しずつだが増えてきている。まだ市民権を得たとは言い難いかもしれないが、ことオレンジワインに関する限り、着実に増えてきているように思われる。

(つづく)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021/02/09 11:20:30 PM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Comments

李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002 @ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

Profile

mosel2002

mosel2002

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: