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March 12, 2009
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カテゴリ: 演劇

明けない夜はありませんが、
夜の来ない日もありません。

日は落ちて、夜が来ます。

Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

ここに一組の夫婦があります。

長年連れ添ってきた二人。

同じ寝室に眠りながら、
二人のベッドは離れています。

Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

今日は、彼女が、彼の元を去る日。

それでも、二人の重ねてきた時間は、
かけがえのない、素敵なものだったのです。


Good Night, Sleep Tight
Wake up bright
In the morning light
To do what's right
With all your might
(Mother Goose)



Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

Good Night
Sleep Tight


Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight



パルコ・プロデュース



作・演出

三谷幸喜



出演

中井貴一
戸田恵子




Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight



出てゆく荷物をまとめながら、思い出話をする二人。
過去の思い出は、しかし、微妙にすれ違います。

劇中の時間は、二人の新婚旅行のその時へ。
二人の「思い違い」「記憶違い」が明らかになります…。



結婚して別れるに至る、今日まで重ねてきた二人の時間。

思い違いやすれ違い、二度とないはずの過去を行き来しながら、
物語は、二人の重ねてきた時間を描いていきます。

彼女の経済的成功に至る様々なエピソード。
彼の才能の開花とスランプ。

子供をめぐる考え方の違い、話のタイミング。
浮気。猜疑。嘘。大切なペットの死。

ちょっとしたすれ違い、間の悪さが積み重なって、
たどりついたのは、もう戻れない、今日のこの日。




時を重ねることは、忘れることでもあります。
でも、その時、その時に込めた想いは、嘘ではなく、
ただ、時が、言葉を、記憶を、違う意味に変えてしまうのです。

ラスト、彼女のハミングの意味が分かる時、
そして、その意味が分からなくなってしまった彼を見る時、
二人の想いが交錯する、その火花を目にします。
それは、線香花火のように、小さくて、切ない火花。

ほんのり切なく、なんとなくほろ苦い、そんな舞台でした。


Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight


コンフィダント~絆 』でも舞台に上った 中井貴一 さんと、
三谷作品常連の 戸田恵子 さん。

もう、何と言うか、素晴らしい、さすが、以上のコメントはないです。

そして、生演奏をしてくださる演奏家の皆さんに、パジャマ姿の黒子の皆さん。
彼らの「演技」も舞台のうち。

ナレーションでご活躍の 三谷幸喜 さん。
開演5分前の前口上から、笑いを取って、舞台につなげるって、



Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

それにしても、さすが 三谷幸喜
ストーリーの構成が抜群に上手い。

ベッドの距離が、二人の距離を暗示して、
ベッドの距離が近いほど、遠い過去を意味するという演出で、

過去と未来を行き来する中で、少しずつ明らかになっていく、二人の過去。

「現在」の会話を伏線に、「過去」でその真意、現実を解いてみせる、
という構成は、逆回しの『古畑任三郎』。



小粋でオシャレな会話を、照れ隠しのように、
ふっと笑いに持っていくのも面白い。

 「 なんでそこまでしてくれるの?
 「 色々あったけど、嫌いな相手と結婚する人なんていないの。

こんな会話が、この次のセリフでまぜっかえされて
笑いになるだなんて、ちょっと予想外。

そして、笑いながら、ふと、
 自分も他人の小粋なセリフを、まぜっかえしちゃうことあるよなぁ
と反省してみたりするのです。
ふぅ。笑えないじゃん…。


Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

何よりすごいなぁ、と感じたのは、
このストーリーでの「すれ違い」のドラマの作られ方。

今までの三谷作品では、その場の「勘違い」を逆手にとって、
笑いを生み出す手法が取られていたことがありましたけど、
(『君となら』『三番テーブルの客』『有頂天ホテル』『マジックアワー』等々)
今回のお芝居は、「記憶違い」を使って、しかも笑いではなく
「すれ違い」のドラマを生んでいる。



確かに、人の記憶って、そういう所がある、と思うのです。

同じことを体験しても、「私」と「あなた」では、
時を重ねれば重ねるほど、記憶に差異が出てきてしまう。

いや、自分自身だって、記憶しているはずの「事実」と
日記や客観資料から明らかにされる「事実」は違う。

「今の自分」にとっては、「覚えている過去」=「過去の事実」なのに。



当然、記憶だけではなく、感想だって違います。

 「 面白かったね
 「 …うん(そうかなぁ?)

のやり取りは、時間を重ねることで、容易に

 「 面白かったって言った
 「 言ってない

の対立(ドラマ)を生みます。

あまりに当たり前のことなのですけど、
このことをちゃんと、意図的に、確信犯的に
脚本として、ドラマの要素として、使いこなしてみせる、
というのは、さすがだと思います。


Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight Good Night Sleep Tight

それにしても、切なくほろ苦いストーリーで、
ふわふわ甘いお菓子を想像していったら、
ビターなチョコレートを貰った、という感じでした。

いや、どちらでも美味しいんですけどね。

さてさて、次の作品が楽しみです。

==========
パルコ・プロデュース
 『 Good Night , Sleep Tight
 @ サンケイホールブリーゼ  (大阪/梅田)

2009/01/06(火) - 01/20(火)

作・演出;三谷幸喜

出演;中井貴一 / 戸田恵子

作曲;荻野清子 
演奏;管鍵楽団  http://www.kangengakudan.com
    荻野清子(Piano)
    高桑英世・岩佐和弘 (Flute)
    庄司和史・川村正明 (Oboe)
    山根公男・及川豪 (Clarinet)

http://www.parco-play.com/web/play/gnst/index.html

★★★★☆





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Last updated  March 13, 2009 01:53:21 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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