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ポンボ @ Re:まもなく発刊予定です(04/01) Oh ! My ! Great ! 自費出版! You are α …
msk222@ Re[1]:まもなく発刊予定です(04/01) ポンボさんへ ところが、これは著作と編集…
ポンボ @ Re:まもなく発刊予定です(04/01) いいなぁ ご自分のご商売ですと、実費だけ…
msk222@ Re[1]:被災地支援(01/07) みちのくはじめさんへ ぼくの場合、感情の…
みちのくはじめ @ Re:被災地支援(01/07) こんにちは。みちのくはじめです。 私たち…
aki@ Re:被災地支援(01/07) この様な書込大変失礼致します。日本も当…

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2008.11.23
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カテゴリ: 川柳・文芸
寒い


明智光秀の謀反、すなわち「織田信長殺し」をえがいた『進軍の旗』は、中編か短編ぐらいの小説だが、この作家らしい丹念に死になだれおちてゆく日々を前向きに書いている。
短い物語であるが、本能寺での信長(伍長)殺しをはさむ十日とすこしの、明智光秀の切迫する心理と感情と行動を追って胸をうつものがある。
『進軍の旗』は、一九七三年の『別冊小説新潮』秋季号に掲載され、おなじ年の『別冊文藝春秋』には、この時期の代表作のひとつ「又蔵の火」が載っている。
みずから破滅をもとめるがごとき凄まじい放蕩ゆえに斬り殺された兄の、僻屈に閉ざされた暗い表情を知る又蔵が、兄の死を悲しまなかった人々にひとこと言わねばならないと、たったひとりで復讐を試みる。そのはてしなき壮絶な行為を、執拗にとらえた作品である。
2作とも、藤沢周平が「ハッピーエンドが書けなかった」時期の、典型的な「負のロマン」といえるだろう。
ここには、「敗者(反逆者)への想像力」「権力嫌い」「信長嫌い」といった藤沢周平を語るとき避けてとおることのできない重要なテーマが、権力の“血なまぐささと腐臭”を短編ゆえの濃密さでぎっしりとつめこまれている。
しかも、「主人公の死」という結末の決まった歴史小説ゆえ、逆に、死からその生へとさかのぼることが可能になっている。「主人公の死」を再確認して終わる、ありきたりの歴史小説にたいして、読者の側にすでにある「主人公の死」のイメージを逆手にとって、「主人公の生」をこそあざやかによみがえらせている。
じっさい、『進軍の旗』では、明智光秀のむごたらしい敗死はえがかれず、死に接近しながらもなお生きる明智光秀がとらえられている。
以前もここで書いたが、三日天下、下克上、裏切り者など、歴史の中では光秀に対する評価はあまり芳しいものがない。しかし、為政者あるいは人間としての光秀をみると、まことに好ましい人物像が浮かび上がってくる。
明智光秀は、謹厳実直な真面目人間であった。一向一揆を戦ったときには戦死者を弔うため供養米を寄進したり、戦で負傷した家臣への見舞いの書状も多数残されている。家臣からは名主君として信頼があった。
若き光秀は煕子(ひろこ)と婚約をするが、煕子は花嫁修行中に疱瘡に罹って美貌が一転してあばた面になってしまった。
煕子の父は、妹を煕子と欺き嫁がせたが、事情を知った光秀は妹を実家に帰し、「妻と決めたのは煕子である。例えどんな姿であろうとも、彼女こそわが妻」と迎え入れ、しかも終生側室を持つこともなく、煕子をただ一人の女として愛した。
この煕子も光秀に誠心誠意尽くしている。光秀が秀吉に討たれると、ためらう事なくすぐに夫の後を追っている。
藤沢周平は、「敗者への想像力」をゆたかにもった作家である。歴史上の勝者を言祝ぐという姿勢は皆無で、歴史上の敗者にあらためて眼をむている。そして、その「敗者への想像力」が、敗者の死にむかう想像力ではなく、敗者の生にこそむかう想像力だということである。
たんなる悲劇のを描くのでなく、生きた姿こそをあかく照らしている。




つかまえて!
蝶クリック











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Last updated  2008.11.23 19:08:06
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