2002.8.



 好きになりすぎて結婚したものの、甲斐性のないカレとすったもんだしながらも好きだとの思いを貫く琴美。
 結婚にあこがれながらも、なかなか思うようにならない莉帆。
 さばさばして男っぽいけれど、いつのまにか自然に恋におちていくまゆこ。
 計算してわりきって結婚して、自分なりの生活を楽しむ和喜。

 友だち関係でつながっているそれぞれの女性の生活と思いを描く小説。
おいしいものやファッションや流行もふんだんにちりばめられている。女性たちの個性豊かな描写もおもしろく、楽しく読めた。
 この人の小説は一見軽い感じで読みやすいのだけれど、鋭く真実が光っている。

 ここに登場する個性豊かな女性について…私なりに思ったことは…

 琴美は今時ちょっと不器用で前時代的な感じだが、好き!愛してる!でどろどろになっても、とことん生き抜いていける人でうらやましい。
 莉帆のように結婚願望がなぜかすごく強い人ってたくさんいるだろうし、だれにでもある気持ちだろうが、なかなか私は結婚したいのよーと公言できない。その点、莉帆は頭よくなさそうだが、ピュアで正直なのか。しかし実際からまわりしてしまう役割なのよね。
 淡々として冷たくはないけれどさめたまゆこが、さりげなく恋におちて可愛くなっていくのにはほのぼのする。カレとの関係もさっぱりしているがあたたかく、何となく理想的かも。
 和喜はハイソな生活を保証してくれる人と早々と結婚したコマダム。これだけ聞くと、鼻持ちならないいやな女って感じだし、4人の中で、一番私とは遠い存在のようだけれど、包容力があり、優しく賢くあたたかい和喜の描写を読むと、こんなのもあり?と目を開かされた思いだ。

 この小説の中でも和喜の感慨が一番心に残った。

「男は実直で、優しくて、黙って働いてくれればそれでいい。そのお金で、妻が健康管理をして、美味しいものを食べさせてあげる。母親に代わって身の回りの世話をして、余暇の楽しみを見つけて、一緒に楽しんであげる。
 そして私が美しくいることで、男として生きる喜びも与えてあげる。それが結婚生活というものだ。…」
 でもそこまで確立された生活観を持ちながらも、琴美を見て、自分は夫をいい人だ、かわいいと思うとこそあれ、どうしようもないほど好きだなんて思ったことはないとふと思う。

 そして、その時思い出す母にしこまれた確固たる愛の原理もすごい。
「愛は、お互いが努力して、育んで、お互いを幸せにし合うものなの。日々の献身と、思いやりを積み重ねて、お互いの一生に、責任を取り合う。それが、真実の愛というものなのよ」
 うーん、迫力あるー!説得力あるー!心にくさびを打ち込まれた感じだ!




「ひとおもいに夏子」 新津きよみ ハルキ・ホラー文庫

 昔の忌まわしい出来事とともに殺してしまいたい男が殺された。自分の分身と名のる女からのメール。だれなのか?どういうことか?
 この人の作品は最近読み始めた。平凡な女性の平凡な生活からホラーに導かれていくので、入り込みやすいのだが…なぜか読み終わっても思ったほどどきっともせず…私と波長があわないのかも。つかまれない。でもあと何作かは読んでみるつもり。

「美味読書」 紫門ふみ  角川文庫

 いかにも私この人あいそう!と思って昔、育児エッセイを読んだことがあるが、どこかあわず、おもしろくなかったので、以後一作も読まずだった。
 今回は文庫の新刊、題もおもしろそうだったので、即購入!
 そう、この人も筋金入りの活字中毒者。そして、明晰な頭脳で古今東西の書物を自分の言葉で読み解く。
 「女性作家のミステリが好きなのは、女として40年も生きてくると、男性作家の手による<イメージとしての女>に、とてもついてゆけなくなっているからだ」とのこと、私もまさにそう思う!

「水の炎」 松本清張  角川文庫

 あまり知られていない作品発掘。
 美しく知的で清楚な信子は、不倫をしたり仕事への野心のためなら何でもやるような夫に失望しながらも、自分を確立すべく生活している。通信教育で知り合った教授との仲をすねに傷ある夫に画策されとまどう。どうしたらいのか…
 いつ殺人が起こるのかなどと妙な期待をしてしまったが、これは心のミステリーというのか、ひとりの女性の生き方を追うのがテーマのようだった。
 掲載も婦人雑誌にされていたそうだ。
 ラスト、信子が夫のことをふりきるか、もう一度やりなおすか、どんでんがえしか否かちょっと意外だったような気も…
 とにかくこの時代の作品だが、信子にしろ夫の不倫相手にしろ、知性というのか、頭脳を持って考える人間としてちゃんと描かれているのは清張ならでは。
 しかもこの作品では、あくまでも男をやりかえす女のこわさまでは描かず、賢いが素直な女性が描かれている。
 それにしても、小見出し中の「或る婚前交際」なんて言葉は時代がかっているが。若い頃の若尾文子あたりをヒロインにしてすぐ映画化できそう。




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