・デロイト トーマツ グループ 『ファイナンス・トランスフォーメーション 企業価値向上をリードする次世代CFOの条件』は、経理・財務部門を「会社の数字を正しく記録し、守る組織」から、「数字によって経営を動かし、企業価値の向上を導く組織」へ変えるための一冊である。本書の中心にいるのは、次世代のCFOだ。従来のCFOは、財務報告や資金管理、内部統制など、企業の財務基盤を守る役割を担ってきた。しかし、不確実性が高まり、事業環境が激しく変わる時代には、それだけでは足りない。CFO自身が企業の未来に踏み込み、投資、事業ポートフォリオ、M&A、データ、AI、非財務情報までを視野に入れ、経営変革を主導する存在になる必要がある。
・本書はそのための核心として、「リスクテイク」と「リーダーシップ」を掲げる。財務とは本来、リスクを避けるだけの仕事ではない。限られた資本をどこに投じ、どの事業を伸ばし、どこから撤退するのかを判断することもまた、ファイナンスの重要な仕事である。企業価値を高めるとは、単にコストを削ることではなく、未来に向けて資源を配分することなのだ。さらに本書は、M&AとPMI、人材・システム・データ、非財務情報、AIといったテーマを通じて、ファイナンス組織そのものの変革を論じる。数字を集計するだけではなく、「見えないものを可視化し、数字で語り、事業を変える」ことが、ファイナンス・トランスフォーメーションの核心となる。
・本書の本質は明快だ。 ファイナンスとは、過去を説明する技術ではなく、未来を選択する力である。 多くの企業で経理・財務は、「正しい数字を出す部署」と見なされがちだ。しかし、本当に強いファイナンス組織は、数字が正しいだけでは終わらない。その数字から事業の問題を読み取り、経営者に問いを投げ、投資の優先順位を変え、未来の意思決定を支える。これはCFOだけの問題ではない。30代、40代のビジネスパーソンにとっても、本書の示唆は大きい。仕事の価値は、自分の担当業務を正確に処理することだけでは決まらなくなっている。 「自分の仕事は、会社の未来にどんな影響を与えるのか」 という視点を持てるかどうかが重要になる。本書は、財務の専門書であると同時に、管理職や専門職が「守る仕事」から「変える仕事」へ移行するための思考法としても読める一冊だ。
・『ファイナンス・トランスフォーメーション』は、CFOと財務組織を「数字の管理者」から「企業価値創造のリーダー」へ変えるための戦略書であり、リスクを恐れるのではなく、未来のためにどのリスクを取るべきかを考えることの重要性を説いた本である。
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