第5話 楽園計画(4)


それは静かに始まった。いや終わったと言うべきだろうか?
世界中のあらゆるところから神の審判が下されはじめる。

神の審判であるウイルスは人々の体に音もなく進入していく。神から選ばれなかった民たちはゆっくりとゆっくりと心臓の動きを止めていく。

「なんだかねむいわ。」
「そうか?」
「少しだけ眠らせて....」
そういうと彼女はぐったりと倒れ込んだ。
「夜中に遊びすぎだよ」
そうつぶやきながら彼女の寝顔を眺めていた。

しかし彼が異変に気づくまでにそう時間はかからなかった。少しずつ彼女の顔が青ざめ冷たくなっていく。周りを見渡すとあちこちで人々が眠っている。

「おい!!起きろよ。なんか変だよ。」
しかし彼女は動かない。

携帯電話で救急の電話をかける。
...pururururururururur..

誰も出ないまま、数分が過ぎる。

「何だよ。いったいどうしたんだよ!!」彼は彼女を抱き上げよろよろと歩き出す。

動くのものは彼以外にはなにもない。音もない。

静かに新しい世界が始まる。

仮想現実になれた人々は、不可思議な世界を受け入れるのが早かった。
「なーんだ、また新しい設定か。」

選ばれた人々はロボットによって近くのドームへと誘導されていく。

「おい、ちょっとまってよ。こいつをこのままにできないだろう?連れて行くよ。
早く治してくれよ。」

動かない物体は清掃ロボットが次々へと片付けていく。最初からなにもなかったかのように。

ロボットは無情にも、(もともと”情”はないが)動かない物体(彼女)を彼から引きはがしもっていく。彼はドームへと引っ張られる。

「うおーーーー。なんだよ、何が起きてるんだよ。説明しろよ。バーチャルか?リアルか?わかんないよ」

彼の慟哭が無人の空にこだまする。


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