旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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ルネ.クレールの≪夜の騎士道≫


『夜の騎士道』

ルネ.クレールの作品であるが、
戦後すぐの2枚目スタージュラール.フイリップを語らなければ
一応の終止符が打てないので、
フランス映画の時代劇スターの彼の作品を取り上げてみる。

ルネ.クレールはもともと、もの書きつまり小説や戯曲を
書いていた人なのでシナリオは殆ど彼が書いている。

皮肉と風刺とを笑いのなかに描くのが特徴である。

日本の小津監督も彼の影響を受けていたと聞く。
クレールはフイリップを『悪魔の美しさ』、『夜ごとの美女』、
そして今日紹介する『夜の騎士道』の』三本を撮っている。

マルセル.カルネも『愛人ジュリエッタ』、『花咲ける騎士道』
をとり、この役名フアンフアンが世界的に有名となり、
岡田真澄がデビュー当時にフアンフアンといわれていたが
自分から、この名を使っていたらしい。

イヴ.アレグレ監督の『狂熱の孤独』、ジャック.ベッケル監督の
『モンパルナスの灯』のようなドラマテイックナ役も
こなせる貴重な役者であったが、1959年に36歳の若さで
亡くなった。

フイリップはとにかく美しい。
ハンサムな男優は多いが、美しいという点では
彼にかなう者はいないだろう。

パルムの僧院、悪魔の美しさ、赤と黒 での彼はため息が出るほどの美しさである.

後のドロンの美貌と比べて、どうだろう?

日本の時代劇の役者と現代劇の役者を比べて....のようには
決して行かないが、そう、 色気と品とを比べてみると
その違いがわかるであろう。

ドロンは決して品の良い美貌ではないし、男っぽさの魅力であろう。.
むしろ危険な香りの美貌だ。
フイリップは今日の作品のようなコメデイも充分演れて
日本の市川雷蔵が軽妙な股旅物で色気と品があったのに似ている.

その繊細なガラス細工のような容貌、雰囲気に加え、
声の美しさもある。
わたしは今、榎木孝明のフアンであるが、
彼の雰囲気にちょっとだけ似ている?

フランスの最も優雅な部分と気品で、観る者をとりこにしてしまう
魅力であろう。
夭折しなければ、森 雅之のような魅力がもっと溢れた
素晴らしい作品を残したように思う。

『夜の騎士道』

まず、オープニングのシーンでアレ?
小津のカメラワーク?てな場面に出くわしてしまった。

時代は19世紀末、フランスのある町。
この町に駐屯している隊の将校、ラ.ベルヌ中尉がフイリップの
役どころ。

稀に見るドンフアンで、町中のいい女には殆ど手をつけている。
ある日、(源氏物語の雨夜の品定めではないが)
男どもの挑戦を受けて、誰でも良いからこれと定めた新しい女性を
期限までに、モノに出きるかどうかという挑戦を受けることになる。
舞踏会で見かけたマリーという女性に狙いをつける。
だが、今までと違って男の手練てくだを充分に知っている彼女は
彼の誘いに乗ってこない。

彼女は巴里から来たばついちの婦人でこの町で帽子店を
営んでいる。
あの手、この手と中尉は彼女に迫るが、どうしてもうまく行かない。
マリーには町の名士のビクトールという恋人がいる.
しかし、彼は口下手でアプローチが下手で、マリーの心を
しっかりとつかむことが出来ずにいる。

ぐずぐずしているうちに、マリーは中尉に魅かれ始める。
中尉も遊び心で近づいたのに本気になっていることに気づく。

マリーはかれが自分との恋に男たちと組んで賭けをしていることを知ることになる。

中尉は本当の気持ちを彼女に告げようとするが、できない・
マリーは彼のもとを去る。
ドンフアンは中年女を弄んだ報復を受けたのである。

当時33歳のかれは、ギャバンが50代になり、
ドロンが現れるまでフランス映画界のなんでもやれるスターとして
鎮座していた。当時の2枚目スターといえば、
ジャン.マレー、ミシェル.オークレーなどいたが、
フイリップは彼らとは完全に違っていた。

繊細優美、純粋無垢(これに尽きる!!)
天真爛漫、天衣無縫、自由闊達、などなどフランスのフランスらしい特性を持ちながら、フランス人にはない明るさがかれの
特徴であったといえる。
映画の中で使われた曲...”ファッシネーション”のあの
メロデイーはヘップバーンの『昼下がりの情事』が初めてではなかったのですね。

洗練された個性、のびのびとした演技、、
いやらしさがない.

ルネ。クレールは、こんな軽いタッチの喜劇でも決して手を抜かず、
会話があの小津の彼岸花や秋日和の紳士諸君の会話に通づる
ところもあって非常に興味深い。

ドンフアンの気の利いたバカなセリフ....。

『優し過ぎる男には注意』、『戯れの恋はしたが心は童貞だ』

制作  1955年 フランス
監督  ルネ.クレール
出演  ジュラール.フイリップ/ミシェル.モルガン




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