旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

今井正監督1.≪米≫2≪ここに泉あり≫


     今井正監督作品
1.≪米≫
2.≪ここに泉あり≫

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1.≪米≫


昨夜の作品≪苦い米≫でたくましいイタリア女性を紹介しました。

庶民にとって命のような米。
大昔から米は一番大事なものであった。
その米一粒を得るために弱った体に鞭打って働く女性も居ました。

そんな米を題材にしてあれだけ作品を膨らませるすごさも
さる事ながら、これがアメリカだったら石油か?
日本人としましてはやはりイタリアという国の心を
覗いたようでより親近感を覚えましたね。

さてこんばんは日本の≪米≫デス。

その前にこの作品に出演しているなかの3人について
ちょっとだけ・

加藤嘉、望月優子、中村雅子...

加藤は若いア方たちには、あの≪砂の器≫で
知られるようになった名脇役ですね。

望月優子という人は知る人ゾ知る名女優でした。このかたと
加藤は大体同世代か??

望月優子の歳の離れた妹が中村雅子ですね.
加藤と中村雅子はこの映画の共演で結婚したんですよ。

その後中村雅子は何作かの作品に出演した後引退しました。

さて、この≪米≫はドラマ自体よりも戦後のある地域の
農村にスポットを当て、丹念に資料集めをして作り上げた
作品だそうである。

舞台は霞ヶ浦の近くの水郷の農村.
ここは関東随一の米所と言われたが、一戸一戸の
農家としては耕地面積が狭い為、半農半漁を余儀なくされた。

また、農家では跡を継ぐ長男だけが耕地を譲り受けるわけだから
次男や三男という武士で言えば部屋住みである.
つまり安心して生活していける何の保証も無いわけだ.

そのあたりを踏まえてみるとこういう映画が立体的に
見えてくるのではないか?

そして霞が浦特有の帆曳き漁をする帆船の光景など
美しい風物詩がみられるこの作品はやはり日本映画史に
残しておくべき作品である。

ストーリー

湖畔の村の村祭りから....

この辺りの若者にとって対岸の村へ押しかけて村娘たちを
冷やかす事が出来るのはこんな祭りの夜の振るまい酒の
勢いを借りた時くらいである。

農家の次男坊次男(つぎおーー江原慎二郎))は
自衛隊帰りの仙吉(木村 功)をリーダーとする仲間の
尻馬に乗って対岸へ出かけた.

そこの薄暗い農家で黙々と仕事をしている娘、千代(中村雅子)の
清純な姿にチョッカイを出す事が出来なかった。
むしろ今までになかった熱い感情を覚えた。

兄や妹たちの冷たい仕打ちに堪えかねた次男は
船に乗せてもらう事にした.
漁にかけては凄腕の作造(東野英治郎)に乗せてもらって
はえ縄を張る。
しかし網に掛かった大うなぎのことで
千代の母よね(望月優子)と大喧嘩をしてしまう.
よねと娘千代は黙々と田植えをしている。

しかしここでとれる米だけでは生活できないのが現状だ.

仙吉も除隊後、仕事も無くぶらぶらしていたが
親方の船を貸してもらい次男と組んで帆曳き船を始めた。
仙吉の妹定子は次男に好意を寄せていた。

秋祭りの夜、仙吉の妹定子は
祝い酒の勢いで酔って次男に言い寄るが
心の中で千代を思う次男は相手にしなかった。

米の収穫だけでは生活できないよねは禁止されている
さし網をやって、監視船に捕まってしまった。

一方同じ湖上では越境して狩漁をした仙吉が杭に引っかかって
死んでしまった。

次男も危ない所を千代の助けで命拾いをし、それがきっかけで
ふたりは急速に仲良くなっていった。

地主の松之助は、よねへの貸し地を取り上げ様と
刺し網事件をネタに夫竹造に迫った。
そしてよねには一万円用意すればなんとか考えてやってもいいと
持ちかけた。

こまったよねは娘千代に次男に話して金を工面しろと言う。
千代は好きな人にそんなことは頼めるはずがない。

しかしそれを他から知った次男は金を工面して
千代の弟に渡してやった.

そうとは知らぬよねは自首しようと思いつめ警察署の前まで
来るが、罪の恐ろしさから中に入る決心がつかない。

結局、よねは夕暮の湖に身を投げて我が命を断ってしまった。

晩秋の村、豊年を祝う太鼓が響く中、次男はよねの
出棺を見送った。葬列のなかに千代の悲しみの目と
次男の目が合った。

しばしじっと熱い目を見詰め合う二人であった。

おおかたの筋です。

にがい米に登場する女性たちも農閑期はミシンを踏んで
家計を助けてるようですが、
どちらにしても、働く事に誇りと自信を持ったたくましさがある.

そして、契約をしている早乙女ももぐりで来ている女たちに対し、
村八分に徹しない.必ずいさめる人物がいて仲良くなる。
イタリー人の天真爛漫さであろう.

しかし日本という国はこういう面でどうも陰湿な面があった.
いさめる人物がいたらその人まで村八分にするという血があるようだ.
それはともかく、米が命の綱という前にそれさえも足りない
環境で半農半漁を強いられ、ちょこっとした こそ泥のような悪事を
働いてしまうよねという女性。
こんな事..といってはいけないが命を棒に振る悲しさ。
無知によるところも大きい。

どちらにせよ地主や網元だの彼らのさじ加減で
人の運命が替えられてしまったり、卑屈にならざるを得ない
貧乏というもの。

今はみんなが中流と思っている世の中。
この不景気になって中流も上流もありはしないという意識を果たして
どのくらいの人が思っているのだろうか?

時期は梅雨、田植えの時期です。
お百姓さんに感謝してごはんを頂きましょうね。

ぬか漬けが美味しい季節になってご飯がすすんで
牛のようになってこんな映画を見ると一膳一膳
大事に食べねばと思います。

戦前、内田吐夢監督が長塚 節の≪土≫は戦前の農民の一年の
生活を描いて話題を呼んだらしい.
残念ながらまだみることが出来ない。
戦後、今井 正が丹精こめて作ったこの映画をぜひ鑑賞してください。

制作  東映 1957年度
監督  今井 正

  尚、≪にがい米≫は洋画のページ一覧に載せています.


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2.≪ここに泉あり≫

    ≪ここに泉あり≫


理屈なしにほのぼのと心の芯に触れた作品。

音楽のすばらしさ、尊さを群馬の市民交響楽団が
誕生するまでのエピソードを織り込みながら描き、感動を
よんだ作品...。

   ≪ここに泉あり≫ーー今井正監督

かの山田耕作が出演しており、また、音楽は団 伊久麿が担当。

記録映画のようでもあり、素朴な流れ、美しさ、爽やかさが
印象に残っている。
岸 恵子と岡田英次のコンビもほのぼのとして印象に残っている。

ストーリー

戦後,人々の心は荒んでた.そんな中群馬県の高崎市に
生まれた市民フイルハーモニー.

この楽団の、マネージャー、井田(小林圭樹)は運営を任されていたが、
楽団員の生活も成り立たない有様に困り果てていた。

働く人たちや、子供たちにも美しい音楽を与えようと努力しているにも関わらず、運営は火の車だった。

楽団の紅一点のかの子(岸 恵子)は
音楽学校を出たばかりのピアニストであったが、
群馬の田舎では腕が落ちると悩んでいた。

新しく東京からやってきたバイオリニストの速水(岡田英次)は
彼女を励ましながらも、本当は自分も悩んでいた。

楽団の給料では生活できないと脱会していく人も大勢いたが、
それでも、寒村や山奥の小学校、鉱山、療養所などに出向いて
自分たちの奏でる音楽に感動してくれるのを見ると
一切の苦労を忘れた。

そうして速水とかの子は結婚した.
生活は苦しく、音楽家としての腕も鈍るのではないかと
不安に襲われた.

軍の楽隊上がりの工藤(加東大介)や、丸屋(三井弘次)は
仲間の楽譜を質に入れたり、チンドンヤのアルバイトをしたりと
それでも楽団を捨てずに頑張っている。

井田の熱意は東京から山田耕作指揮の交響楽団と
ピアニスト室井摩耶子を招いて、
合同演奏会を開くのに成功した。

しかし、あまりの腕の違いに、楽団員はがっかりしたが、
それから2年後、、

山田耕作は旅行の途中で、思いがけなくも、
彼らの練習所に立ち寄ってくれたのである。

生活と立ち向かいながらも,毎日,毎日ひたすら
練習に励んでいる団員たちは、
夢のような思いの中で張りきって楽器と向かい合った。

かの子は背中に赤ん坊を背負っていた。

美しい音楽が耕作の前で演奏されたのである....


ハングリーな時代だったから、がんばれるとも言えるし、
音楽の世界だけでなく、芸術に立ち向かう人たちの
みんながそうであった。
あの当時の精神が真っ向から伝わってくるし、
そう言う人たちがまわりにいっぱいいましたね。

生活苦であってもみんながそうだから、
結構,助け合って、芸術に対する信念だけ、誇りだけは守る
その心が素晴らしい。

ものに恵まれたなかで生まれる芸術家もいるだろうが
貧乏のなかで音楽性を追及したり、
芝居を志す人は、思想や、演技に没頭しながら
貧乏と闘っていた時代。

良かったですね。
観ていてじわーっと涙が溢れてくる映画です。

とにかく田舎の景色が懐かしい、そして人々が温かい
ものはなくても、のどかな人々、
純粋な音楽...
ノスタルジー満点。

岸 恵子のフアンですので22、3歳の彼女の初々しさに
見とれたものでした。

制作  松竹   1955年度
原作,脚色   水木洋子
監督      今井正
出演      岸 恵子 草笛光子 沢村貞子
        岡田英次 小林圭樹 加東大介 山田耕作


今井監督は、 民衆の敵、ひめゆりの塔、キクとイサム
       橋のない川 真昼の暗黒など、
戦後日本を代表する社会派監督である。
しかし、素晴らしいんだけれども

こうした主張の強い映画よりも、皮肉にも
青い山脈、また逢う日まで にごりえといった
ソフトタッチの作品の方が魅力的である.

越後つついし親不知も捨て難い作品である。
武士道残酷物語で1963年ベルリン映画祭グランプリ受賞。





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