旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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≪セールスマンの死≫


アーサー.ミラーのヒット作≪セールスマンの死≫.

マリリン.モンローの三番目の良人となったアメリカを
代表する大劇作家アーサー.ミラーは
彼女と一緒になる前に
当時大評判をとった≪セールスマンの死≫という問題作を
世に送った。

1952年のことである.

アメリカは日本が高度成長期を迎える前に
すでに灼熱の資本主義社会の真っ只中で
だからこそ、人間性の評価が投げやりにされ始めた
時期でもあった.

そこに現代苦をみたミラーは老セールスマンの生きかた、
また死を描いた。

セールスマンと言えばアメリカでは花形の職業であった
時代である。

そして、日本もその時代を後から辿り、
そして今リストラだの失業者が増えている。
人生の計画も狂い、死んでいく人も後をたたない。

老人福祉の問題も世上を賑わした時代から
変換期に入り≪セールスマンの死≫によって語られた悲劇は
今もうすでに我々の前に具体的な関心事となって現れてから
久しい。

ストーリー

老セールスマン、ウイリー(フレデリック.マーチ)は今年
63歳。
何日も何日も家を空け、鞄を抱え、見知らぬ町を
歩き回る生活に少々疲れてきた。

彼には妻リンダと二人の息子がいる.
長男のビフは三十をとうに過ぎているのに、まだ
これといって定職がない。

親子顔を合わせれば激しく罵り合い喧嘩が絶えなかった。

将来の夢もこれといった希望もないウイリーにも、
若い頃はエネルギッシュに働き、地方へ出張に行った時には
出来心で浮気をするくらいの甲斐性はあった.

しかし今では歩くことすら気が重く仕事に打ち込めない。

思いきって社長にもっと楽な、例えば内勤のような仕事に
換えて欲しいと頼みに行くが、あっさりとその場で
首にされてしまった.

先代の社長の時から40年も奉公してきたのに。
会社なんて薄情なものだ。

帰り道、彼の脳裏に浮かぶのは
元気に働けた頃の自分の姿、その思いが彷彿として
甦るのだった。

落ちこんで、家路に着いたウイリーの前に現れた
せがれビフはまたぞろウイリーをなじり始めた。

自分をダメにしたのは、ボストンのホテルで女と
戯れているところを見たせいだと激しく攻撃した。

そして父にいきなり抱き付いて泣きじゃくるのだった.

ウイリーは強いショックを受けた。
今まで一生懸命に仕事はした。しかしこのせがれのことは
なんにもわかっちゃいなかった。
このことはウイリーの心を縛ってしまった。

この子に何がしてやれるのか?

彼は自分ニ出来る唯一の父親らしいことをするために出かけるのであった。

自動車を暴走させ、衝突して死んだ彼に
5万ドルの生命保険をかけてあった.

淋しい葬式に妻は泣いて言った。

”やっといろんなローンも終わり、これから本当の、
人間らしい暮しが出来ると思ったのに”.

今から50年前の作品であることを認識して
読んで下さいませ。当時マスコミを賑わした作品です。

黒澤の≪生きる≫、小津の≪東京物語≫しかり

およそ同じ時代にこれだけの将来、世間を賑わす問題を
先取り、予見した劇作家や監督たちの着眼点に脱帽である.

アメリカも日本も芸術家の眼に国境はないという証しですね。

主役のフレデリック.マーチは≪我等の生涯の最良の年≫で
知られた戦前から戦後にかけて活躍した人気俳優ですね、


制作  米  スタンリー.クレーマー制作 1952年度
監督  ラズロ.ベネデク
出演  フレデリック.マーチ/キャメロン.ミッチェル








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