旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

野村芳太郎監督の ≪背徳のメス≫ 


数々の社会派推理小説が続々と世に出てきた。

現在は古代史小説が活躍の場になっている。
私はその古代史小説の大フアンである。黒岩重吾さん...。

彼が直木賞を受賞した推理小説の傑作
   ≪背徳のメス≫
手当たり次第に女性を弄ぶ産婦人科の医師達に
忍び寄る女達の完全犯罪の影!

名シナリオライターの新藤兼人が脚本を、
≪砂の器≫の野村芳太郎がメガホンを撮った興味深い作品だ。

製作  松竹  1961年度作
監督  野村芳太郎
脚本  新藤兼人
撮影  川又 昴
出演  久我美子/高千穂ひつ゛る/ 葵 京子/ 瞳 麗子
     田村高廣/ 山村 聡

推理映画、あるいはサスペンスはあまり書くと
興味が半減するらしいから
出きるだけ簡略に紹介しようと思います。

産婦人科院の若い医師の植(田村)は女癖が悪く
看護婦の妙子(瞳)、薬剤師の伊津子(高千穂)、
女性医師(葵)など次々と関係を持っていた。

婦長(久我)は昔でいうオールドミスでギスギスしているが
仕事も出きるし、院長(山村)の信頼も厚い。

この院長も女癖ガ悪い。
婦長は仕事の出きる院長を絶対的に信頼しており、
医療ミスが問われた時も補佐した植のちょっとしたミスを
院長に告げ口し、隠蔽の仲間に引きずり込もうとする。

植は女癖は悪いが医師としての倫理観まで失ってはいない。

病院の創立記念日のパーテイーの中で植は青酸カリで
殺されそうになる。

自ら犯人を探し出そうと動き出す。
が 彼に恨みを抱く女は多かった。

ひとりひとり当たっていくがどうしても分からない。
結末は思わぬところに、起因し思わぬ結末を見る。

とストーリーはこの当たりでとめておきましょう。
一応、製作スタッフも揃っており、面白いはずなのだが、
今、見なおしてみるといまいち乗れなかった。

そう、こういう医療界のスキャンダルものや
サスペンスものがあまりに作られ
見る側がさもありなんと思ってしまったからだ。

あの当時に身を置いてみるがモットーの私。しっかりまじめに見ろよ!

確かに人物描写はしっかりしているし、
モノクロの背景のまだ設備がお粗末な設定も加わり、
胡散臭さ、
何か起こりそうなというイントロも良い。

これはあのフランス映画≪悪魔のような女≫を思わせる
女性の共謀かとも思わせる上手い運びである。
あれほどの2重3重のどんでん返しは無いが、
殺しの動機としてこの作品(原作)は非常に興味を引いた。
それを上手く最後まで手のうちを見せなかった作りが
さすがに上手いなーと思いましたね。

清張ものとはまた違った、医療界の入り乱れた愛憎関係の中に
渦巻く黒いわなと燃え上がる殺意を鋭くえぐる傑作です。

久我美子の冷淡なオールドミスの演技は今までの
彼女を振りきったものでした。

同じ監督の清張もの-ゼロの焦点ーーあたりと比べて見ると
面白いと思います!

ドラマテイックになる清張ものと比べ
クールな黒岩ものはこういう作りで良いのだと思う。






© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: