旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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≪嘆きのテレーズ≫


サスペンスはやっぱりフランス映画!≪嘆きのテレーズ≫

文芸映画サスペンスの最高傑作といったら、これ、エミール.ゾラ原作
  ≪嘆きのテレ-ズ≫だろう.

フランス映画のサスペンスモノはゾーッとする怖さがある。

≪天井桟敷の人々≫の名匠、マルセル.カルネが
ありふれた人間劇を運命的な悲劇に高めた.

主演女優、シモーヌ.シニョレは≪悪魔のような女≫という
これまた最高に面白かったサスペンスものに主演する前年に
この傑作に主演しているのである。

決して美人とは言えないがその存在感は戦後のフランス映画界では
右に出るものがいない.

ただのカミさんが亭主殺しをする時のあの無表情な顔の怖さ。
彼女が出演しているというだけでワクワクする.

大歌手であり、俳優でもあったイヴ.モンタンとは彼女が死すまで
ニ十数年の結婚生活を保った。

パリジェンヌともフランスのマダムとも違う。
アメリカのローレン.バコールのようなモダンなタイプである。
だから、何気ないおしゃれがよく似合う知的なタイプである。

さて、久しぶりに堪能した、≪嘆きのテレーズ≫は
どういった展開でどういったラストを迎えるのか..

前半はゆったりとそれぞれの出演者の人物像を描きます.

後半は予期せずして人を殺してしまった主人公に
どんな運命が襲ってくるか、そして皮肉な上手いラスト!

ストーリー

息子にべったりの姑と病弱な良人のもとへ嫁いで17年、
テレーズは自分が主人に愛されていると実感したことはなく、
姑からは気の利かない嫁となじられ続けている。

夜になれば知り合いのゲーム仲間を呼んでは
姑と主人はゲームに熱中し、テレーズを妻とは名ばかりで
まるで看護婦か、召使かのような扱いをしている。

自宅の一階は洋服、仕立て屋をしており、
店の切り盛りは姑が取りしきり、面倒なことだけテレーズに
させている.
2階が3人の住居となっている。
テレーズは自然と何事にも興味を失い無表情に言われたことだけを
淡々とこなす毎日だ。

ある日、外で飲めない酒を飲んで酔っ払った良人を友人と名乗る
ローレンが家まで運んで来てくれた。
それ以来、ゲームを一緒にするという理由でちょくちょく
来るようになり
妻の扱いを受けてなくても黙々と二人の言うままに
働く彼女に魅かれていく.
テレーズは表情には一切出さないが
ローレンの自分ニ向ける熱い視線を感じている。

いつしか自分も力強いローレンを愛するようになる。
とうとうローレンはテレーズに駆け落ちしようと持ちかける。

いろんな事情もあってテレーズはそんな思いきったことが出来ず、
苦悩する.
ローレンはとうとう良人カミーユに思いをぶちまける.

7度の熱が出たと言えば大騒ぎし、7度6分の熱が出たと言っては
寝込むほど気弱な筈の良人が執拗に、しかも強気に
テレーズを責め、巴里にいる叔母の所へテレーズを
預けて閉じ込めて、外部と接触させないようにしようと姑と謀を
する.
巴里行きの列車に一緒に乗り込む。
コンパートメントにはひとりの水兵が同室していた。
トラック運転手のローレンは車で追い、列車に乗り込む.

一緒に逃げようと良人の隙をみてテレーズを誘い出すが
良人は気がついて二人の前に現れ、なじり責め、
連れては行かせないとローレンともみ合いになる。

結局良人をデッキから突き落とす結果となってしまった。
この時のテレーズの顔の表情の怖さはぞっとする。

警察は一応テレーズを疑い調査をする.
姑は報せを聞いてからは口が利けなくなり、歩けなくなり、
車椅子の生活で、、じーっとテレーズの顔を見ている。
何かを言いたそうにぞーーっとするような視線を常にテレーズに
投げかけている。

世話をしながらテレーズは姑の言いたいことがわかっているから
”そんな目で見ないで。あれは事故だったの。”
心のない介護をしながら
やっと自分の意思で動けるようになったテレーズ。

ローレンのことも警察の自分への執拗な捜査の時はもう
うっとおしいだけのものだったが、
警察も事故と判断すると二人は愛し合うものの常、そう簡単には
諦められない。テレーズも心を決めたようだ・

そんな折り、列車内で同室した水兵がテレーズを訪ねてくる。
狙った獲物は逃さないという目つきで。

自動車屋を始めたいので50万フラン用意してくれと言う。

一度は跳ねつけた二人だったが、結局お金を用意することに。

一方、水兵は根っからの悪人でもなく、今までの人生が
あまりについてなかったから、
このチャンスにお金が欲しいと思っただけであった.

この町に来て知り合った可愛い女のこに
靴の1足も買ってやりたかった.

裁判所当ての手紙を書き、
自分が17:00までに帰らなかったら、
この手紙をポストにいれてくれと頼んで
金を受け取りに出かける。

店に来た水兵は2階に案内され、金を二人から受けとる.

これで二人はいろんな問題から解放されると
やっと少しの笑みがこぼれ、
窓から下を眺めると.....

水兵は乗ってきたオートバイのエンジンがかからず難儀をしている。

と...そこへ暴走してきたトラックが飛び出た子供を避けるために
彼をめがけて飛び込んできて
トラックの下敷きになってしまった。

二人は2階から駆け下り人ごみを掻き分け
彼を助けようと車の下から引きずり出し
店のカウンターへ運び医者に電話をしようとするが....

水兵は死の間際で手紙のことを思いだし、
手....紙  手.......紙...とローレンに教えようとするが
結局息を引き取った。

執拗に手紙がどうした??と死体を揺さぶるローレン.

だが.....

まだ少女のあどけなさを残した若い女の子は
時計台の金と共にポストへ走るのであった。

息をもつかせぬ運びでした。
そして姑の不気味さが秀逸でした.
1954年度のキネマ旬報のベストワンでしたね・

制作  仏 1954年度
監督  マルセル.カルネ
出演  シモーヌ.シニョレ/ラフ.バローネ





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