大きな試練
私のお腹の上に来る事はなく、すぐに隠すように助産婦さんに連れられて行ってしまった。
一瞬「あれ？私の赤ちゃんは？何で来ないの？」とすごく心配になった。
でも確かに元気に泣いてる声は聞こえる。
「大丈夫大丈夫。元気に泣いてるし。助産婦さんが間違えて連れていっちゃったんだ。」
と動揺を隠し心の中でそう思い続ける私。
しばらくしてダンナが戻ってきた。
（産み終えた喜びでダンナが私のそばから離れていた事に
気づかなかったのですが、実はこの時ダンナは先生に呼ばれ
「奥さんには私から話した方がいいですか？ご主人が話されますか？」
と聞かれていたらしい。）
ダンナはすごく真剣な顔で私の横に立ち、こう言った。
「ちょっとね、あおぎの顔にアザがあるんだって。
ちょっと大きいけど体は健康だから。。。」
私はソレを聞いた時、何の事言ってるのかよく分からなくて
何回も聞きなおした。「何？あおぎにアザ？元気なのー？」
まだあおぎの顔も見ていない私はそんな事を言われても全く実感がなかった。
その後助産婦さんが右頬を隠すように
右頬を下にしてタオルでくるまれたあおぎを連れて来てくれた。
私：「赤ちゃんの顔のアザはそんなに大きいんですか？」
助産婦さん：「アザの事聞いた？そうだね・・結構大きいけど大丈夫。
健康だし。この先の事はまた考えていけば大丈夫だから。」
助産婦さんがとても気を使ってくれてるのが伝わってきて、
そう励まされると今まで夢のように思ってた事がすごく現実化してしまって
急に悲しく切なくなってしまった。
ああ。事実なんだ。なんでこうなっちゃうんだろう。
私に起こる事ならどんな大変な事だっていい。
でも、何で私の子供にこんな試練が与えられるんだろう・・・
この先どうしたらいいんだろう。。。
入院中の１週間、出産の嬉しさよりもこの事ばかりが頭から離れなくて
毎日涙し、悩んだ。
あおっちの左顔を見ると、もしかしてこれはやっぱり夢なのかな？と思い
右顔を見てやっぱり夢じゃないんだと現実に引き戻される。
そんな事をして悩んでばかりいる自分が嫌になりまた泣けてくる。
そしてあおっちに申し訳なく思う。全てがマイナス思考になってしまう。
産まれて来たんだから喜んであげなきゃ。体は健康なんだから。
そう言い聞かせながらも色んな気持ちが押し寄せてきて頭の中がグチャグチャだった。
今ではあざもあおっちの一部として愛おしいとも思えるようになったけれど
この頃の私にそんな余裕はなかった。
出産から３日目、やっと皮膚科の診察があった。（産まれたのが金曜で土日明けの診察だったので）
診察の結果は「要するに大きなホクロです。」との事で
悪性の物ではないそうなので一応はホッとしました。
しかし、このままの状態で放置すると将来的に悪性化する可能性もあるそうですが・・。
それまではこの黒いアザが一体何者なのか全く分からず
もし悪性の物だったらどうしよう。そんな事ばかり考え、
私もダンナも、そしてじーちゃんばーちゃん達も眠れない日々を送っていた。
そして皮膚科の先生から「この先の治療は形成外科になります。」
「ここの病院では設備がそろっていないので大学病院を紹介します」
「どういう治療になるかそこの病院を受診してみないと分かりませんが
多分、皮膚移植になるのではないでしょうか」と言われ
悪性ではないにしても大変な治療になるんだなと覚悟した。
その後、あおぎのアザはカルテに残すために色んな角度から写真に撮られた。
その写真を撮られている姿を見て私は泣き崩れてしまった。
きっとあおぎだって見られたくないだろうに・・
まだ何も分からないあおぎが見せ物にされているように思えてしまった。
そして、アザが悪性ではない事が分かった出産から３日後
出産報告を楽しみにしていてくれた友人達にようやく連絡する事が出来ました。
本当は出産報告もどうしようか迷ったくらいですが
やっぱりあおっちが産まれて来た事を祝って欲しかったし
アザがあっただけのために産まれて来た事を隠されてしまったら
あおっちがかわいそうだもんね。
一瞬でもそんな風に思ってしまって本当にゴメンね。あおっち。
これからきっと色んな辛い事があると思うけれど
私達家族があおっちの事絶対守って行くからね。
一緒に頑張ろうね。
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