From クルンテープ

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陣痛クライマックスへ


私の場合ちょっと違った。叩かれるというよりは「内側から超強力な吸引器で吸引されている」感じ。
まさに子宮が収縮している!!という感覚。
最初は単に「わー、収縮してる~」と感じるだけだったけれど、さすがにそれがギリギリッと
思いっきり絞られている感じになってくると、苦しくて脂汗もにじんでくる。
とはいえ、この頃はまだ多少の余裕があった。痛いのは陣痛の波が襲ってくるときだけで、
1分少々ガマンすれば、波の合間の数分は休めるから。

「陣痛が痛くなってきたら、痛み止めの注射打つわよ。どうする?」
と、様子を見に来た看護士さんに聞かれる。
無痛分娩に使うような麻酔ではなくて、鎮痛剤みたいなもので1回の注射で4時間くらい持続するらしい。
赤ちゃんには影響ない薬だとは思うけど、医療行為は出来るだけ少ないほうがいいと思っていたのと、
この時点ではまだまだ余裕があったので断った。
ところがこの看護士さん、10数分おきくらいに部屋に入ってきて陣痛の様子をチェックしては、
「どう? そろそろ注射打つ?」と聞いてくる。
だから、打たなくていいんですってばーと日本語でこぼしつつ、ひたすら断り続けた。

時計が夜の10時を回ると、徐々に陣痛の間隔が狭まってきて数分毎に波がやってきた。
さすがにもうくるしい。。。でも、もう少しだけ頑張らなくては。。
実は、この頃、NHKワールドで夜10時20分ごろから「朝ドラ・アンコール放送」として
「ちゅらさん」をやっていたのだった。9月末の最終回に向けてドラマはクライマックス。
1回たりとも見逃したくはない! お願い、今日の「ちゅらさん」の間だけは、陣痛ちょっと待ってて~!!

「もうだいじょうぶ、心配ないよー」
キロロが歌う主題歌が流れてきた。
ドラマの最中も何度も襲ってくる陣痛を、ひたすら呼吸で逃し、汗だくになりながらその日の回を見届けた。
「和也くんの木」のところで倒れてしまったえりぃのために、対人恐怖症になってしまっていた息子の和也が
助けを求めに走り、無事にえりぃは病院へという場面。
感情が高ぶっていたせいもあり、もう私はウルウル。

と、そこに入ってきた看護士さん。
「痛くなってきたでしょ~、もうガマンできないなら注射打つわよ。」
涙を勘違いされたかも。
でも、違うんです! これはドラマ見て泣いたんです!とも恥ずかしくて言えないので、とりあえず
「いや、大丈夫です」とだけ言って断る。

そろそろ11時。助産士さんがやって来て子宮口の開き具合をチェック。
「んー、4センチくらいですね」
まだ4センチ?! ウソでしょ? 気が遠くなりそうだ。

この頃になるともはや陣痛は1、2分おき。波が去って、ふう~と一息ついたときにはもう次の波が
始まるので、休む暇がない。
ひたすら息を「スッスッハー」することに集中する。
本当はお産の進行にあわせて呼吸のリズムも変えるべきだったのかもしれないけど、
そんなこと構っちゃいられない。だって痛いんだもの。
ひたすら何とかの一つ覚えみたいに、スッスッハーとやっていると、呼吸自体が、というよりかは、
呼吸に意識が集中することによって陣痛の痛みが少し和らぐ気がした。

一方、夫が急遽調達してきたテニスボールで腰をマッサージしてくれた。出産本のどこかに、
その方法が紹介されていたのだ。

でも、「スッスッハー」に集中しているときに、腰をぐりぐりされると
呼吸のリズムが乱れてしまう。申し訳ないけど、テニスボールの出番は一瞬で終わってしまった。

11時半を過ぎると、いよいよ陣痛もクライマックス。
もうダメ、今度看護士さんが来て「痛み止め打つ?」って聞いてきたら、「はい」って言っちゃうから!

ところが、ようやく決心した時に限って看護士さんが全く来ない。うううー、様子ぐらい
見にきてよ。。。。と、朦朧とする頭で文句をつける。もうだめだ、ガマンできない。

と、そこにようやく看護士さん登場。もう「痛み止め」なんて言ってられない。

「すいません、いきんでいいですか?」
ダメもとで言ってみた。1時間前に4センチしか開いてなかったのに、もう10センチになっている
とは思わなかったけど、もうガマンできない。

そこで再度子宮口をチェックすることに。
!!!!!!! 声はぐっと飲み込んだけど、この時の内診、最高につらかった。。

「××××」看護士さんがタイ語で何か言ってる。
朦朧とした頭でなんとか聞き取ろうと必死。「先生を呼んでこなくちゃ」って今言った?

「あのー、じゃあ、ベン ダイマイカ?(いきんでいいですか)」

ほとんど最後は半泣きになりながら再度聞く。
「ダーイ ダーイ!(いいよ、いいよ) もう十分開いてるよ。今すぐ準備するから」
た、たすかった・・・いきんでいいんだ、いきんでいいんだ・・・・
もうゴールはすぐそこなんだーーー!





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