Laub🍃

Laub🍃

2011.03.18
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カテゴリ: .1次メモ
新しい枕を抱き締め、これの謳い文句を思い出す。安らぎを得られるとの言葉を。
本当の安らぎとはなんだろうか。
それは嘘を吐くことで得られる安息だろうか? 
自分に都合のいいお話を頭の中で作ることで得られる幸福だろうか?

子供の頃は一瞬一瞬が全てで、一瞬一瞬が運動だった。そしてージャングルジムの上で見た夕日や絶対に見つからなそうな場所に隠れた時の気持ち、ブロック塀の上を歩いていてよろけたら支えてくれた兄の腕など、一瞬一瞬で安らげた。

けれど大人になった私には、一瞬が全てでないことを知る代わりに安らぎが永遠に続かないこともよく知っている。

-けれど、安らげないが、楽しいということもまた、あるのだ。

年甲斐もなくそわそわしているのはきっと、もうすぐこちらにやってくる後輩のせいだ。
あいつがやってきてから尻拭いに付き合いまくっている。しかし、何故か憎む気にはなれない。あのアホみたいな泣き顔と、自分の失敗を挽回して、ちょっとずつでも進もうと頑張っている姿勢がーいつも一所懸命な様子が、気付いたら目を離したくなくなるだけの理由を持っていた。



「…何笑ってるんです、先輩?」

ひっく、と酒の名残を宿しながら後輩が屈みこんでくる。風呂上り。
同じシャンプーの匂いに微笑みながら口を開く。

「あんたの告白してきたときの顔と、私がいいよって言った時の顔、思い出しちゃってね。
可愛かったなぁー」
「あはは、そん時の先輩のおたおたっぷりじゃないですよぉー?」

ふふと笑いながら酒臭い口でキスをする。私の好きな地方ワインと後輩の甘すぎるカクテルが混じり合う。これはきっと安らぎの時間だ。鼓動以外は全てゆっくりと流れている。そのまま寝入ればいいのだけれど、いつもはそうしているのだけれどー今日は、そのつもりは生憎ないのだ。

「……あのさ……」

そう言いながらふぅと目の前の真っ赤な耳に息を吹きかけ少し汗ばんだ服の下に手を伸ばすと、びくりと反応される。

「……んー、ぷにぷに」

だから私はいつもこうやって誤魔化す。


「胃下垂気味だからねぇ」

女の子らしいからだ、と言うと、先輩は少女みたいで逆にエロいです、と言われる。
エロいエロくないの問答を経て、私たちの話は職場の誰それの話にシフトする。上司の愚痴に仕事の内容にお互いの友達の話に下世話な話。代替できるはずもないけれど、同衾行為を修学旅行の夜のような雰囲気で誤魔化す。傲慢な臆病さだ。

「いっそそちらから手を出してくれ」

と、お互い思っているのかもしれない。-後輩から手を出され、私がびくりとすることもあるからだ。


今夜も、ゆっくりお休みなさい。

*****


この後大事件が起きてゆっくりしてる場合じゃねえ!ってなってめちゃくちゃいちゃいちゃした


にほブロ 短編小説





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最終更新日  2017.01.01 01:04:09
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