Laub🍃

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2011.07.06
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カテゴリ: .1次メモ
譲れない。
君を誰にも、譲らない。

「ミヤビ」

だから死んだって何度も何度も君の夢の中に出てきた。

「ダカツ!」

小さな花畑で植物から葉を毟り続ける君が振り向いて笑うその瞬間が何よりも好きだった。




けれど、物事と言うのは唐突に何もかも変化してしまうものだ。
それと同時にこれまで当たり前だった何もかもへの捉え方が変わってしまうことだって、また、よくあることなんだ。



死んでからもまた会えるならどうして僕はこんなに死を怖がっていたんだろうと僕はずっと思っていた。
今日、これまでは。

「ダカ……ッ、あ、ちょっとおい、離せよ!」
「……」
「ミヤビ?」

目の前には、ミヤビともう一人。

「エンジ、邪魔するな!お前には関係ないだろうが」
「……お前が、いつもそうやってあいつのことばっか考えてるのが気に食わねえ」

僕の前で僕を置いて展開していく会話。
きっと現実でミヤビが言われた言葉だ、これは。
そうだ、こうやって僕のもとから幻想からミヤビを連れ出してしまう存在が現れたら、ここから出られない僕はそれを止められない、連れ戻せない。


「…てめえに死なれたら困るんだよ」
「死のうとなんて思ってない!」

そうだ。ミヤビはいつも、生きて、起きて、僕を置いていく。毎日毎日置いていく。そして夜には帰ってきて、僕に、僕が見られなかった世界の事を教えてくれるんだ。

「ミヤビ」
「…ダカツ!ちょっと待っててくれ、こいつを…」


手をかざす。

「僕が願えば、こうやってそいつは消える」
「……ミヤ……」
「……エンジ…!」

そいつは消えた。絶対に消えるなとミヤビが思っていなければエンジとやらは消えていなかった筈だから、これはやはり僕達の総意だ。

「ねえミヤビ」

ミヤビの所にゆっくりと歩いていく。その手を取ると、冷たく硬くなっている。
両手で握って温める。
ミヤビがこの暖かさを心地よく思ってくれるように。

「ミヤビが願えば、僕のことも消せるよ」

ミヤビは僕が居ない方が幸せになれるのかもしれないと、時たま思うのは、ミヤビが話す外の世界があまりにも楽しそうだからだろうか。
僕が居ないミヤビのほうがもしかしてもっと楽しげに笑うかもしれないと思うからだろうか。

「……そんなこと、できるわけ、ないだろ」

でも僕は、こうして辛そうに涙を零すミヤビが愛おしくてたまらない。





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最終更新日  2016.11.07 03:12:15
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