Laub🍃

Laub🍃

2012.04.12
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カテゴリ: .1次メモ
まずい料理は激辛カレーに入れると食べられる。

「わたしがわるい。もうやだ、わたし、だめだ。」

 だからそんな言葉を吐きながら玉ねぎをゴーグルを付けずにみじん切りにし、激辛カレーの湯気を受け、それを言い訳に愚痴を吐く。

「さいのうがないわけじゃないんだろうな。たぶん。」

 というか、才能が0だと分かったら最早走り続ける事が出来なくなってしまう。

「ぜつぼうてきに、そのさいのうをいかすちからがないだけなんだ。もうそうくうそうばっかりとくいだから。ひととかかわれないから。だいじなひとがこまってるところをたすけるすべもしらない。」

 ずっと一人で生きていけるとおもってた。無理だった。
 ごろごろと色々な種類の野菜を入れた茶色い泥水のようなそれがクラスの人間関係を表しているようでああカレーとは糞のようなものなのだと実感する。私は具なしのカレーかルーなしのたまねぎだ。ぐちゃぐちゃになってまでなんで付き合わなければならないのか。馬鹿みたいだ。
 またぼろぼろと涙が零れる。自分一人が食べるカレーだけど、それだけは入らないように拭う。拭うたびに自分が泣いている様子を再認識、媚や甘えにも同情を引く為にも使われない涙はただごみとなって袖に吸い込まれていく。



 けれど学校に行くと笑って遊んでごまかすことしかできないのだ。
 直接自分の情けない部分など見たくないのだ。
 笑って遊んでそれこそが私の芸術なのだと、だから評価されなくても全然ましなのだと。
 そう思いこもうとしてきた。
 そろそろだ。一杯装ったもぐもぐとカレーを食べる。ご飯はなし。
 この辛さは今、私だけのものだ。

「あたまのなかのおはなしを、げんじつにもってこないと、だれもみてくれない。」

ーだから。
ひとりでわらってるのはたのしいけれど、さびしい。
それを自覚してしまった今は、地獄だ。

ーけれど。


だから、今だけは。
誰も居ない所でこのどうしようもない辛さに、
からさに、
つらさに、

浸らせてほしい。



……そして、その内あの子に激辛カレーを食べさせて、一緒に泣きたい。





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最終更新日  2017.02.05 14:21:39
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