Laub🍃

Laub🍃

2012.09.07
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カテゴリ: .1次小
私があと500年で死ぬと知った時、私は自由に生きる事に決めた。
あと500年、まだ500年、もう500年、たった500年。
これまでしがらみで縛られていた全てを解き放つのだ。
今まで誰かを哀しませたくないがために、自分と同じ目に遭わせたくないがためにやってきた努力を笑い飛ばしていった者たちのように今度は私が自由に生きるのだ。
稼ぐことはない。財産を売り飛ばして、最後は風化してしまえばいいのだ。
100年間で、私は野良猫になった。ひたすらに歩いて夜を明かし暖かい場所で眠る。
100年間で、私は舌を捨てた。喋らずに済むことは期待されなくて楽だった。
100年間で、私は耳を捨てた。潮騒も雨の音も木々のざわめきも聞こえなかったけど罵声も消えた。
100年間で、私は縁と未練を捨てた。新しいものに興味を抱かず、少しずつこれまでの後悔を消していった。


誰かに愛されながら死にたかった。誰かを愛しながら死にたかった。
愚かだと笑って要らないと割り切って捨ててきたすべてのものが私を苛んでいた。
死だけがそれを私から守ってくれるはずのものなのに、なかなか来ないのだ。
必死に数を数える。あと何時間何分何秒で死ねるか。
目の前の見えている波も木の葉も鳥の羽ばたきも陰の移ろいもすべてが数字に変換された。

0.

ああ、ようやっと死ねる。

そう思いながら静かに眠りにつく。

しかし、気が付いた私の目の前で、「そいつ」は無情にもこう言った。

「無一文?帰んな」





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最終更新日  2017.02.15 02:32:03
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