Laub🍃

Laub🍃

2017.10.28
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カテゴリ: ◎2次表
あの人が見付かった。

実に何十年ぶりだ。

こっちもいい歳だが、あの人はもっといい歳だった。


あの人は若干記憶や事実関係の把握が苦手になってきているようだった。


冷静な、親のように優し気な顔で、俺の子供を俺と間違えて撫でる様子に涙が出た。

俺の事を、施設の職員と間違えて呼ぶ様子に苛立ちが募った。

だが俺以外の幼馴染も同じように扱われ、それでも怒りもしなかったのだから俺も耐えることにした。


それでも哀しかった。


この人は昔に戻ってやり直した方が幸せなのかもしれない、今はその為に記憶を捻じ曲げているのかもしれないだなんて思うと、吐き気と愛おしさと懐かしさとやりきれなさがぐちゃぐちゃになって、そうしてあの人に心配されて嬉しくて涙が出た。


あの人と俺は他人になることでやっと対等になれるのかもしれなかった。

対等で距離をうまく保った間柄の今なら、一緒に暮らせるかもしれないと俺達は判断した。





今日もあの人は子供たちに教育をしている。

といっても昔よりずっと実践的で、無駄な拷問じみた部分のない教育だ。

それを見て俺の幼馴染の一人、相方は目を細める。
それが温かく見えることもあれば冷たく見えることもある。

きっと俺も同じような顔をしているんだろう。


瞬きをするごとに昔の俺が小さくなる。
そして今の親としての俺が大きくなる。

その目で、あの光景を見守っている。





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最終更新日  2018.10.31 23:08:58
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