りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年03月26日
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カテゴリ: オレとボク
今日の日記


「アイツとボク10」



彼女は、その時、赤い水着を着ていて、
そのことが、ボクに、フジサワさんの赤い傘を思い出させた。

彼女はキレイと言うよりは、カワイイってタイプで、
この子にも、もう会えないのかな~と、ぼんやり思ったことが、
ボクに大胆な行動を与えたのかもしれない。

彼女は帰りにも赤いTシャツを着ていた。
ニコニコと、手を振って去って行った。

会った時、彼女たちグループは、冷めた雰囲気を漂わせていたので、
最初はいることさえ気づかなかったくらいだった。
けど、ボクたちが加わったことで、ちょっと楽しめたらしい。

お互いに帰り際に交換した、電話番号が書かれた紙を見て、
ボクは電話をしようか迷った。

もしもそっけない態度を取られたら?
迷惑がられたら?

そう思ったら、何となくかけられなかった。
彼女からもかかってこないだろうと思っていたし。

でも、一度くらいはかけてみようかな?

そう思って、海から帰った翌々日に電話をしてみた。

「おかけになった番号は 電波が届かないところにおられるか かかりません。」

やっぱり…。

ボクはヘコんだ。
そんな子には見えなかったのに…。
何度かけてもそうだった。

そして、女性関係に悩むのにうんざりしたボクは、
あの赤い傘を眺め、バイト先に持って行くことに決めた。

が、バイト先はみんな忙しそうで、
声をかけられそうになかった。
もう、ボクが知っている仕事場では無いような気がした。

終わったんだな…。

今度こそ、そう思った。
ボクは、こっそり、下駄箱の傘立ての中にフジサワさんの傘を入れた。

大学が始まって、
ほとんどみんなが黒い顔で講義に出てきていた。
中には、頭が爆発していたり、
何かあったのか?と、ツッコミたくなるようなヤツもいた。
女子にはちょっとオシャレになった感じの子もいて、
みんなを驚かせていた。

「よお!アオヤン!あの赤い水着とはどうよ?」
ボクがボンヤリと教室を眺めていたら、アイツが陽気に聞いてきた。
「赤木くん、元気だね。」
「何だよ、オマエは元気ねぇなぁ~。」
ボクは顔の前で手を振った。

「ダメダメ、出鱈目の番号だったみたいで。」
「え~!マジかよ?んで元気ないのか?」
「ははは…。」
「まあ、いーじゃん。まだチャンスはあるある!」

ホントは違った。
赤い水着の子のことは、確かにヘコんだけど、
もう顔も思い出せないでいる。

ボクは、フジサワさんのことがあって以来、どうも変だ。
気分が上がったり下がったりする。

つい、バイト先の駅へ降りてしまい、
レンタルショップをうろついてみたりする。

車に乗って、あの曲を聴くと、
思い出して泣きたくなってくるし、
通った道やラブホテルをみかけると、
胸が痛くなった。

もうあんな思いは したくない。

みんなと騒いでる時は忘れるのに、一人でいるとふと思う。
アレは何だったのかと。
やっぱり夢だったんじゃないかと。
それで、何もしたくなくなってしまう。

学校が始まってからは尚更そうだった。
日常に紛れて、過去のこと以前の、夢だったような気分になった。

試験があるので、とりあえず勉強することで気を紛らわせてみたけど。
右から左に抜けそうになるのを、止めている感じだ。

「アオヤン~、ずっとボンヤリしてねぇか?大丈夫かよ?」

アイツはそんなボクをずっと心配していた。
その度に、笑って誤魔化した。
話してしまいたい…と、何度も思った。

帰り道は、イグチくんと同じ方向だったので、ほぼいっしょだった。
ボクらはその日、二人で無言で歩いていた。

「オマエ、何か変。何かあったのか?」
「え?そう?いや、そんなことないよ。」
ボクは笑ってそう言った。

アイツなら、その後、話を逸らしてくれるけど、
イグチくんには無言の圧力を感じた。
嘘が通じないような…。

ボクは、イグチくんにフジサワさんのことを話した。
イグチくんは、驚いていたけど、
真剣に話を無言で聞いていた。

そして、ポツリとつぶやいた。

「やっぱり、それは良くないと思うな。結婚してるのは、マズイな。」

「うん、そうだね…。」

「赤木、知ってるのか?」

ボクは首を振った。

「話そうと思ったけど、そのうち話すかもしれないけど…。」

イグチくんはうなずいた。

「オレからは話さない。もう済んだことだ。忘れろ。」

「うん…。」

「時間が解決する。きっと。」

「うん…。」

話したことで、ボクは、自分のしたことに自己嫌悪した。
イグチくんはボクのことを軽蔑しただろうか?

イグチくんは、泣きそうになっているボクの肩をポンポンと叩いた。
それで、ちょっと楽になった。
でも、自分が本当に嫌になってしまった。
アイツに話したら、またこんな気持ちになるなんて、嫌だ。

その時、ボクの携帯が鳴った。
見覚えの無い番号。

「はい、青山です。」

「あの…、覚えてるかな?海の…。カリナって言います。」

ボクはイグチくんの顔を見た。
イグチくんはどうした?って顔をしていた。

「お、覚えてます!あ!電話したんだよ!でも繋がらなくて…。」

「え?そうだったんだぁ~。じゃあ、もっと早くかければ良かったな。」

「良かったらさ、夜電話かけなおすよ!番号ってさ…」

ボクはもらったメモをサイフから出して読んだ。
番号が、1だと思っていたのが7だった。
ボクは顔がニヤけて行くのがわかった。

電話を切ると、ボクの話の内容から、イグチくんが全てを察していたようだ。
ニヤリと笑った。

「解決はすぐにしそうだな。このことは赤木に報告する。」

ボクは、イグチくんの肩を、照れながらバンバン叩いた。



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最終更新日  2010年03月27日 15時51分48秒
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