りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月28日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記1 (アコースティックギター体験レッスン(2ヶ所目) )

今日の日記2 (「ブザー・ビート」感想☆と修理工事開始!)



<ユナ23>



店に通うことも気が楽になった。
でも、それはヨシカワとの関係がはっきりして気が楽になっただけ。

サトシは、私が仕事の人と友達になったのだと思って、
気が楽になったのかもしれない。
何かあったら行けばいいよ、と嬉しそうに言った。
そしてサトシも仕事と付き合いに没頭する。

自分を信じてもらっていると思うと、
そのことに対して後ろめたさを感じた。

店に行ってることは話してなかったし、
兄のように慕ってる男友達がいるなんて、
自分が同じことをされたら、気分は良くないだろう。

でも、
私はもうサトシに何かを求めないことに、
心地良さを感じていた。
何かをサトシに求めるから、疲れるんだと思った。
だから淋しくなるんだと。

だから私は目をつぶる。
自分がしてることに目をつぶって、
日々をやり過ごす。
それで家の中は今日も平和だ。


「昨日、予備校長がセクハラしてるの聞いちゃった。」

私がいつものようにあったことをヨシカワに話す。

「何?セクハラって?」

楽しそうにヨシカワが聞いてくる。
私が声色を変える。

「今度ヤマダさん、誕生日だよねぇ~。
何が欲しいかなぁ~?
あ、下着なんかどうかなぁ?
パンティーなんてどう?パンティー?
…だって。気持ちワル…。」

ヨシカワが爆笑する。

「ウゲ!60歳過ぎてるって言ってなかったっけ?
その人。」

「うん~、もう引退すればいいのにね。
息子も奥さんもいるって聞いてるんだけど。
もう職場ではエロ長って呼ばれてるよ。
話には聞いてたけど、間近で聞いたのは初めて。ビックリした~!」

「まあでも、60になっても、そんなもんってことだよな。
ね、ユナちゃんは、セクハラされてないの?」

「まだヤマダさんたちほど親しくなってないからね。
って、ヤマダさんたちも親しいワケじゃないんだろうけど。」

そりゃそうだ!って言ってヨシカワが笑った。
ヨシカワといると、どうしてこんなに笑えることばっかなんだろ?
どうして話が面白くなってしまうんだろ?

「あはは~。変だな。
ヨシカワさんと話してると、どんな話でも面白くなっちゃうよ~。
結構、職場で話してる時は深刻っぽかったのにな~。
ヨシカワさん、聞き上手なんじゃない?」

グラスを磨いていたヨシカワの手が一瞬止まる。

「はは。
そんなこと言われたの初めてだよ。
人の話なんか聞かなかったよ。
…前はね。」

笑った顔がちょっと淋しそうに見えた。
あれ?って思った。

「自分でいっぱいいっぱいだったから。」

時計が6時になったのが見えた。
でも、何だか今日のヨシカワは元気が無いように見えた。

「ユナちゃんと話してて思うことあるよ。
カミさんも、こんなふうに淋しかったのかな…って。
何も気付かなかったよ。
甘えてたんだなって思った。」

ヨシカワが奥さんの話をするのは出会って以来だった。
ヨシカワの声が少し低くなる。
まるで独り言のように言葉が続いた。

「聞かなくても相手のことわかってるって思ってた。
俺のことも知ってるだろうって。
正直うるさいと思ってた。
言わないでもわかってくれって思ってた。

アイツが俺のこと何も聞かなくなった時は、
俺の考えや、やり方を理解してくれたのかと思ったよ。
根拠なんか無いけど、大丈夫だって思ってた。
でも、違ったんだよな。
都合がいい解釈だった…。」

私は何て言っていいのかわからなくて、
ただ、ヨシカワを見ていた。
ヨシカワはため息をついた。

「昨日ようやく離婚届出したよ。」

一瞬、どうしていいかわからず、
私も固まってしまった。

「そうだったんですか…。」

それ以上、何も言えなかった。
何か気がきいたことを言おうと思うのに、言葉が浮かばない。

「大丈夫ですか?」

ようやく言えたのがそれだけだった。

「ん?うん…。」

ヨシカワは自分を落ち着かせたかったのかもしれない。
何かアルコールの瓶を出して、
ショットグラスに注いだ。
一息で飲む。

いつもだったら、closeをopenにひっくり返す看板。
今日は直しに行かない。
だから客も入って来ない。
外が暗くなっていく。
なのに、ネオンの明かりも点けない。

ヨシカワはタバコに火をつけて、
私はカクテルをチビチビ飲んだ。
無言の中、ジャズの曲だけが流れている。

二人だけだ…。

できたら、
できることなら、
この人の背中を抱き締めてしまいたい。

泣き出しそうな顔を手で覆って、撫でてあげたい。

でも、体が動かなかった。

私が男なら良かったのに。
そしたら、純粋に男友達になって、
何件でもヤケ酒に付き合って、
肩を組んであげられるのに。

そう思った。
でも、私は男では無い。
そして、この男を抱き締められる立場でも無く、
なのに、そうしたい衝動と戦っている。

こんなのは妹じゃない。
妹は兄を抱き締めたいとは思わないだろう。
それ以上のことを求めないだろう。

私が弟が失恋したからと言っても、
そんなことをしたいと思わないように。


誤魔化しの魔法が解けた。
私はこの男を男として見てる。

好きだ

だけど…。

今だったら、抱き締めれば、この男は簡単に寝てくれるかもしれない。
一瞬そう思った。
私から強引に誘えば、
それは簡単なことなのかもしれない。
でも、拒絶されるかもしれない。

弱ってる。
どうする…?

でも、それは二人の関係を壊すことになると思った。
奥さんと同じように、
結婚してる私がヨシカワを誘うことは、慰めになるのだろうか?

彼は憎むかもしれない。
私を。
奥さんと同じように他の男性に心を許してしまう私を。

軽蔑されたくない。
だけど、どうしたらいいのだろう?

この男をこのまま放っておきたくない。
どうしても、私が彼を慰めたい。

「行こう。」

私は口を開いた。
私は私にできることをする。

「今日はお店閉店にできる?」





続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月28日 20時49分08秒
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Re:ある女の話:ユナ23(再)(07/28)  
ゆりてっこ さん
ちょっとハッシー!!
続きが気になるわぁ~

といって、再掲載だから読めばいいんだろうけど
それはしない。
この毎日の楽しみだからね♪
ありがとう~~
(2009年07月29日 11時15分45秒)

ゆりてっこちゃんへ  
>ちょっとハッシー!!
>続きが気になるわぁ~

さっきUPさせてもらったわ~♪

>といって、再掲載だから読めばいいんだろうけど
>それはしない。
>この毎日の楽しみだからね♪
>ありがとう~~

いえいえ、こちらこそ読んでくれてありがとう♪
遡って読まなくてイイように再掲載してるから、
毎日の楽しみにしてくれて、こっちも嬉しいよ~♪♪
(2009年07月29日 20時42分23秒)

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