りらっくママの日々

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2009年08月16日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記 ( 「乙男(オトメン)」「こち亀」の簡単感想と夏に読んで良かった本☆)



<ユナ39>



サトシから電話はかかって来ない。
そうしてお正月を迎えた。

ヨシカワとコタツに入ってテレビを見て、
つまんないこと話して、お酒を飲んで、
気付くとそのまま眠っていて、
起きたらどちらからともなくキスをした。

おはよう。
今年もどうぞヨロシクって、
こんなお正月したこと無かった。

もう何年もお正月はサトシの実家で気を使ってきたのに、
こんなふうに過ごすことがあるなんて…。

ヨシカワは実家には帰らないって言ってた。
出戻りは肩身が狭いから丁度いいんだ、とかって笑って。
でも、とりあえず、
私には親に電話しとけば、って言い出した。

私も、何て言っていいのかわからないけど、
とりあえず、実家に挨拶だけでもしようと思った。

コール音が数回鳴って、電話に出たのはお父さんだった。

「お、ユナか?
新年の挨拶だな?」

「うん、そう。」

「はいはい。明けましておめでとう。
今年もヨロシク。」

「うん。
明けましておめでとう。
今年もヨロシクお願いします。
あ、あのさ、」

お母さんは?って聞こうとしたら、お父さんの言葉がいきなり遮った。

「ユナさ~、
家に帰りたかったら、帰って来ていいぞ。
嫌なら、無理してなくていいんじゃない?
離婚しちゃってもいいぞ。」

「え…。何いきなり…。
何でそんなこと言うの?」

「いや、もう大人だからさ、
お父さん何も言うことないんだけどさ。
帰りたかったら、いつでも帰ってきていいから。
あ、お母さんに代わるよ。」

泣きそうになった。
お父さんに大人だなんて言われたら、
まだもっと子供のままでいたいって思った。

でも守ってくれるって言ってる気がする。
そんな迷惑をかけていいのか…
自分がヒドイことしてるってわかってるのに。

「あ、お父さん!」

「んー?」

「ごめんね。ごめんなさい。」

「何が~?」

「いい子供じゃなくて。」

「別にいいよ~。」

電話がお母さんの声に代わった。

「あ、ユナ?
何かお父さん変なこと言ってなかった?
もう、お父さんはユナに甘いんだから、冗談じゃないわよ!」

電話の向こうでお父さんが怒られてるようだった。

「お父さんね、アンタのことずっと心配してたのよ。
なかなかこっちに帰って来れなくなったじゃない?
で、帰ってくる度に痩せた痩せたって。
ほら、あんた子供の頃体弱かったから、
せっかく太らせて丈夫にしたのに、
痩せて大丈夫なのか?って言うのよ。
バカよね。」

お母さんのつまらない話は脈絡も無く続く。
私はうんうんって頷く。
最後に、
あ、そうそう、明けましておめでとう今年もヨロシクね。って。
私は落ち着いたら帰るって言った。

涙が出てたので、
ヨシカワがコッチを見ていて、ティッシュを渡してくれてた。

「大丈夫?」

「うん。」

ヨシカワが私を抱き締めてくれる。
きっと今年は異常なお正月。
来年にはこの悩みは無くなってるはず。
そして、どんなお正月を私は過ごしているのだろう?


会社が始まる頃、
私はサトシに電話を入れた。
離れたせいか、すごく緊張する。
サトシは酔っ払ってるようだった。

「あの…明日の昼間、荷物を整理しに行きたいの。
引越しそろそろでしょう?」

「そうだね…。」

「家にいるの?」

「いや、仕事行くよ。
その方が片付けやすいでしょ。」

「そう…。ごめんね。」

「タンスとかどうする?」

「私はもういらないから…」

「わかった。じゃあ勝手に処分しておくから。」

「うん。ごめんね。」

「…ユナ、ホントに出てくの?」

「…うん。」

「…そっか。わかった。じゃ。」

「あの…離婚届は…?」

「まだ考えさせてよ。
すぐに出さなきゃダメなの?
いきなりハイそうですか。って決められるワケないじゃん。」

「そうだね…。」

「じゃ。」

電話が切れた。

翌日ヨシカワの車を借りて一人で荷物を片付けに行った。
一応入る前に電話を家に入れる。
誰もいない。
ホッとした。
いたら、怖いと思った。
そう思う自分がすごく嫌だった。

中に入る。
久しぶりの部屋。
ビールの缶やコンビニの弁当なんかが乱雑に転がっていた。
その状況を見ると、
とても申し訳ない気持ちになる。
私は飲み残しのビール缶を机から引き剥がして、
中身を捨てて、
とりあえずゴミを片付けた。

自分の荷物をできるだけ車の中に入れる。
いらない物はゴミ袋に入れる。

手紙を書いた。
必要無い物は捨てて下さいって。
処分させちゃってごめんなさいって。
勝手なことしてごめんなさいって。

そして鍵をポストの穴から部屋に落とした。


もう結婚なんてしなくていい。
こんなつまんない思いする位なら。
紙で縛られた関係なんて、
もういらない。
いらないよ。


私はまた実家に電話をした。
サトシの家を出たって。

ユナ、アンタ今どこにいるの?
もういい加減わかってるのよ?
誰か男の人がいるんでしょ?
もう連絡が取れなくなったらどうしようって気が気じゃないのよ。
お願いだからどこにいるか教えて。

大丈夫だから。
元気にしてるから。
住所は年賀状に書いたとこにいるから。
ごめんね。
本当にごめんね。

私がヨシカワの家にいて一ヶ月ちょっと経った。
お母さんがマメに連絡をしてくれてた。
もう、どうせ遠くにいるんだし、
今までとたいして変わらないから…って。
観念したって感じだった。

「ユナ、サトシさんから電話があったんだけど。」

「そうなの?何て?」

「アンタがここにいるって思ってたみたいで。
ユナは今どこにいるんですか?って。
離婚届、そこに送りたいから住所教えて下さいって。
アンタのとこ電話行かなかった?
お母さん、謝られちゃったよ。
こっちが申し訳ない位なのに…。」

「そうだよね…。
本当にごめんなさい。」

「ねえ、今ユナは幸せなの?」

「…うん。幸せだよ。」

「そう…
ならいいか…。」

お母さんが力無く
笑ったような気がした。

落ち着いたら、帰って来て。
ヨシカワさん連れて。
そう言って電話が切れた。

正直、離婚できていない現実は厳しいものがあった。
仕事も履歴書に何て書いていいかわからないからできないし…。
無職を楽しめば?ってヨシカワは呑気に言うけど。
金銭面で、ヨシカワに何だか申し訳なかった。

でも、サトシにも、
勝手なことをしてるって負い目があるし、
できることなら、サトシが納得してからがいいと思ってた。
サトシに対しては、それ位しかできない。
私は待つしかできない。

そこへ、ちょうどあっちゃんが就職活動を始めるとかってことで、
私が時々店を手伝うようになった。

このまま店にいて、こうして暮らしていても、
いいような気になってきた。
私は自分の場所をようやくみつけたのかもしれない。


サトシからは何の連絡も無い。
それが無性に私の心を不安にさせた。

このまま永久にこの状態なのかもしれない…。
自業自得かもしれないけど。







続きはまた明日

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最終更新日  2009年08月16日 20時44分17秒
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Re:ある女の話:ユナ39(再)(08/16)  
ゆりてっこ さん
うわうわうわぁ~>。<
ねーね、ユナって、全40話だったよね?
てことは次回最終話だよね?
・・・うう~ん・・・
早く読みたいような~ 寂しいようなぁ~
でも、次の再掲載もあるのかな?
とっても楽しみ~♪
(2009年08月17日 12時35分59秒)

ゆりてっこちゃんへ  
>うわうわうわぁ~>。<
>ねーね、ユナって、全40話だったよね?
>てことは次回最終話だよね?

そーれがね~、
どこで区切っちゃったのか、全部で41話になってたww
ホントは50話だったのを縮めたのかもしれないww

>・・・うう~ん・・・
>早く読みたいような~ 寂しいようなぁ~

あ~、それあるよね~!
私も連載小説読んでる時って、そう思うことある~!

>でも、次の再掲載もあるのかな?
>とっても楽しみ~♪

うん!再掲載しちゃいます~♪
でもって全部再掲載し終わったら、新しい小説書きます!
その頃仕事があるとちょっと毎日は難しそうだけど。。。
(2009年08月17日 13時09分51秒)

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