りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年11月06日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ4(マッシーとの出会い)」



私の心はこの頃ねじくれていて、
なぜこの女の子が声をかけてきたのか、
さっぱり検討がつかなくて、
少し怪しんでいた位だった。

何で私に声かけてくるんだろ…?
誰?

「私、マツシマって言います。
隣のクラスの1-Dなんです。」

「あ…そうなんだ。
えっと…」

話したことあったっけ?
記憶をたどるけど思い浮かばない。

そう言えば前に言われたことがある。


  「カリナちゃんて何だか目立つ。
   私はカリナちゃんのこと知ってたけど、
   カリナちゃん私のこと知らなかったでしょ?
   何コイツって思ったもん。」


そう言われても困る。
話したことも無い人が私を知ってても、
私が知らなかったことでムカつかれても、
私は人のことなんてあまり見てないし、
そこまで気を配ったりできない。

私はビクビクしてた。
返答次第では、この女の子の態度も変わるんじゃないかと…

「あの…、一人ですか?
私ね、ミゾグチさんと話してみたかったんですよ。
良かったら、いっしょに帰れますか?」

「あ…
は、はい!」

同じ歳なのに、彼女はタメ語で話してこなかった。
そして、何だか人懐っこい人なのかもしれない。
断る理由もないし、流れでつい頷いていた。

「あ~、今日はラッキーだなぁ。
私、ミゾグチさんのことずっと知ってたんですよ。
バスケ、上手ですよね。
シュート、遠くからバンバン入れてて、
カッコいいな~って、ずっと思ってました。」

私はギクリとした。
私が部活で周りからシカトされてたところをずっと見ていたとか?
この女の子が何が目的で話しかけてきたのか、
まだ心が警戒警報を鳴らしていた。

「あはは。こんなこと言うと、
私が昼休みグランドにいるのがバレちゃいますよね。
ミゾグチさんはバスケ部ですか?
昼休みまで練習なんて、エライです。」

私はちょっと拍子抜けした。
この子は何も知らないらしい。
私がお昼を食べ終わった後、
教室にいるのがいたたまれなくて、
体育館で一人バスケやシュートして時間潰してること。
その時間だけが、
何だか有意義に感じること。

どこまで話していいんだろうか?
そんなこと話したら引かれちゃうかもしれないし…

「ううん。バスケ部は辞めちゃったの。」

その言葉がスルッと出ると、続けないワケには行かなくなった。

「何だか…
個人競技じゃないから、仲間と上手くいかないと、いろいろあって…」

「そうなんですか…」

マツシマさんは、まるで自分のことかのように、
ガックリした顔をした。
その様子を見たら、何だか言ったことが申し訳無いような気分になった。

「たいしたことでもないかな…とも思うけど。
ちょっと続けるのがキツくなっちゃったの。
そんなんで部活辞めるのって、ダメかもね…」

「いいえ!そんなこと無いですよ。
あんなにスルスル入るから、もったいないと思うけど、
そんな時期もあると思います!
でも、でも、昼休みは続けるんですか?
私、ミゾグチさんのシュート見るの好きなんですよ。
なんかこう…
スパーンとキマった感じ?」

マツシマさんは身振りや表情で懸命に表現する。
私はその必死な感じの慰めに何だか笑ってしまった。
ちょっと嬉しかった。
そんなこと言ってくれる人がいるなんて。

「うん。続けるよ。
シュートが入るとスッキリするしね。」

マツシマさんはホッとしたように笑った。

「ところで、何でマツシマさんはグランドにいるの?」

私の問いかけにマツシマさんの顔が赤くなったような気がした。
そして何となくモジモジした感じで、
私の目を決意したかのようにギッと見た。

「あの…
ナイショですよ!」

誰に?
一瞬そう思って笑った。
今の私が誰と話すことがあるんだろう?
私は軽く笑いながらうんうんと頷いた。

「でも心配なら話さない方がいいよ。」

「そうですよね…」

駅に着いて、お互い定期を出す。
同じ方面らしくて、
ホームに丁度来た電車にいっしょに乗る。
席が空いてたので座る。
マツシマさんもドカッと座る。
そして、
マツシマさんは意を決したように私の顔をまたギッと見た。

「スギモト先生いますよね?」

「あ…うん。
国語の…
昼休み走ってるよね。」

どうして走ってるのかは、噂だけ聞いてた。
昔のスギモト先生は太っていて、
音楽のイケダ先生に告白したけど、
太った人は嫌いだって断られたとかって。
以来走ってるって。
ホントかな?
今はペプシマンみたいな体型してるけど。

「私、スギモト先生好きなんです。
あの、黙々と走ってる姿に、心を打たれます。」

胸に手を当てて、
マツシマさんは目を輝かせながら言った。

「それでずっと眺めてるんです。
あ、授業も大好きです!
あのぶっきら棒な感じが。」

ほほう~!
と、私は思った。

それはちょっと素敵なことに思えた。
彼女の選んだ言葉が、
何だか好きだった。

心を打たれる。

いいね、それ。

「で、先生を見てたら、私が体育館にいるのも見えちゃったんだ?」

「はい。そうです!
あ!迷惑じゃないですか?」

「うん、言われなかったら知らなかったもん。
誰かが見てたなんて。」

「あはは。変ですよね。」

そう言ってマツシマさんが人がいい感じで笑う。
その姿に心が和んだ。
スルリと何かが落ちた感じで。
私も何だか笑う。
ううん、そんなことないよ、素敵だね。って。

「あ、次で乗り換えなんで降ります。」

「あ、そうなんだ?」

私はちょっとガッカリしていた。
こんなふうに話せたのは、本当に久しぶりだったし楽しかった。

「また明日、昼休み行きます?」

マツシマさんのその言葉が嬉しくて、
私はすぐに返事をした。

「うん、行くよ。マツシマさんは?」

「私も行きます。
あ、私はマッシーでいいです!」

「うん。マッシーね?」

「はい、そうです。また明日!」

「うん。また明日!」

マッシーは電車から降りて、私に胸の前でブンブン手を振った。
すごく嬉しそうな顔だった。
私も同じ顔をしていたと思う。

そして目の前で扉が閉まって、
電車が進むと、
マッシーが小さくなっていった。

ねえ、マッシー、
あの時の別れ方、
何だか初デートのカップルみたいだったと思わない?

これが私とマッシーが初めて話したことだった。

あの時どんなに嬉しかったか、マッシーは知らないだろうね。

だから決めてたの。
私はずっとマッシーのこと、
何があっても友達でいたいって。

あの頃からもう、
決めてたんだよ。




前の話を読む

続きはまた明日

目次





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最終更新日  2009年11月11日 18時08分53秒
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