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2024年09月29日
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テーマ: 世界経済(47)
カテゴリ: アメリカ
 通貨発行権は経済の根幹であり、金融は資本主義の根本。
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 2013年に提案した「一帯一路」をアジアですすめ、米ドル基軸にした米国主導の世界経済を突き崩すべく、中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)を2014年に設立した。
 続いて、欧米先進国主導の国際通貨基金(IMF)・世界銀行(国際復興開発銀行)体制に対抗、代替する狙いで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのブリックス5か国により、2015年にBRICS銀行が設立された。
 アジア、アフリカ、中南米など、途上国のインフラ整備のための融資を公式の目的とし、新開発銀行(NDB、New Development Bank)とも呼ばれるBRICS銀行の総裁は各国の輪番制で、初代はインド出身のカマト氏が就任。
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 NDBは、2012年にインドが創設を提唱。2014年のBRICS首脳会議(フォルタレザ・サミット)で正式に設立が決まった。政治制度の違いなどから足並みの乱れを懸念する声があった。 
 2023年10月、第二次世界大戦後幾度もデフォルトを経験してきたアルゼンチンは、NDBに加盟申請した。
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(アルゼンチン、インド、中国、ブラジル、ロシア、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、エジプト、ウルグアイ)
JETRO 2023年10月19日
 アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は10月17日、新開発銀行(NDB、通称:BRICS銀行)のジルマ・ルセフ総裁と会談し、正式にNDBへの加盟申請を行った。アルゼンチンは、8月24日に行われたBRICS首脳会議において、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)を含めた6カ国と共にBRICSへ新たに加盟することが発表されていた。
 フェルナンデス大統領は、NDBへの加盟に対して「新たな市場を開拓し、既存市場を統合し、投資の流れを促進し、輸出を増加させ、優れた新技術の開発するまたとない機会だ」と期待を寄せた。また 「(NDBは)グローバルサウスのアジェンダを強化するために必要な場所だ」 と、グローバルサウスの発展に果たすNDBの役割の重要性についても言及した。
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 NDBはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国などのBRICS諸国によって、BRICS諸国やその他の新興国のインフラや持続可能な開発プロジェクトに融資を行う目的で、2015年に設
 NDBによると、2022年12月時点で96件のプロジェクトが認可されており、融資承認総額は328億ドルに達した。分野別では「交通インフラ」への融資が最も多く、約105億ドルを計上している。
 NDBには、2015年の創設時メンバーであるBRICS諸国に加えて、2021年からバングラデシュ、UAE、2023年2月からエジプトが加盟している。またウルグアイも、2021年にNDB理事会によって加盟承認がされているが、現在は「加盟候補国(Prospective Member)」となっており、国内手続きを完了させ、加盟文書を寄託すると正式に加盟することになる。
  ―  引用終わり  ―
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 NDBは脱米ドル・自国通貨建て融資の拡大を掲げながら、実際には資金の多くをドル建て資金に依存せざるを得ない状況が続いている。
 2020年のロシアのウクライナ侵攻で、西側諸国が対ロ経済を開始したため、日米欧からの資金調達が難航し、新規融資はほぼ停止した。
 資本金を発足7年後に1000億ドルに増やす計画も2023年時点で実現できていない。経済性を課されているロシア、中国経済は余力を失っており、インドの影響力が高まる可能性がある。
 新開発銀行は資金源を増強するため、加盟国の拡大を進める計画。米国主導の世界経済への反感が見受けられるサウジアラビアが加盟することにでもなれば、大きな変化がみられるだろう。NDBの本部は中国・上海。
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 AIIBの本部は中国・北京。日米主導で設立されたアジア開発銀行(ADB、本部フィリピン)では賄いきれない、アジアにおけるインフラストラクチャー整備のための資金ニーズに、代替・補完的に応えるということを目的として設立された。
 ADBの融資対象からこぼれたアジア諸国の資金需要に、AIIBの資金力は十分に応えられていない。
 年間投融資実行額はADB196億ドル(2022年)に対してAIIB46億ドル(2021年)。
 勧進元の中国(26.5%出資)の国内経済が様々な分野の企業破綻、外資の撤退による資本不足で揺らいでいる。財務状況が不透明な AIIB の位置づけ、地盤が揺らいでいると思われる。
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「AIIB」の最新状況
| 中国主導の「一帯一路」の影に隠れた実態とは?
2023年11月07日 Digima ~出島~
  …  (略)  …
5. なぜ日本はAIIBの参加国ではないのか?
アメリカの存在と不透明なガバナンスが大きな要因
 中国は、日本とアメリカのAIIBへの参加を求めています。日本が長年ADBを通じてアジアを開発してきたノウハウを必要としているのです。要請があるにも関わらず、なぜ日本はAIIBへ参加しないのでしょうか?
 1. アメリカへの気遣い
 AIIB設立の経緯を見れば、AIIBへの参加をアメリカが快く思わないことは明らかでしょう。中国が設立メンバーの締め切りを2015年3月末とし、各国に参加を募った時、アメリカは日本やヨーロッパの同盟国に参加拒否するように圧力をかけました。
 アメリカの意に反し、3月12日にイギリス外務省が参加を表明しました。それに続くかのように3月16日にフランス・ドイツ・イタリアも参加を表明したとき、同盟国の裏切りにアメリカは激怒しました。日本が参加を決めきれない理由には同盟国であるアメリカへの配慮があるのです。
 2. ガバナンスの問題
 配慮以前にAIIBという機関そのものの信頼を疑う声もあります。
 また、コストがかかるという理由からAIIBは常駐理事会を置いていません。常駐理事会がないということは中国当局の裁量で意思決定が行われる可能性は十分に考えられます。またAIIBの活動は共産党の言論統制を受けます。つまり報告書はすべて当局の検閲の対象となるのです。透明性という観点から、課題は山積しています。
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6. AIIBの今後の展望
アジアのインフラは巨大市場
 アジア開発銀行(ADB)が発表した報告書によれば、アジアの新興経済は成長を維持するには今後10年間でインフラ投資を最大26兆ドル(約2,930兆円)必要としています。あまりにも莫大な金額であり、ADBとAIIBを足しても全く足りない規模の需要です。
 そのため、メディアで騒がれるような、ADBとAIIBが対立するという構図にはまずならないでしょう。日米が加盟することでガバナンス(統治)がしやすくなる側面もあります。今後のアジアのインフラ需要を満たすためにも多元的な連携が必要となってくるでしょう。
  ―  引用終わり  ―
     ​
 アジアのインフラ開発が巨大な市場であることは確かだが、その経済的発展が先進国の市場に依存していることも事実。世界のマネーはリスクとリターンはかって動いており、投資資金不足はリスクが大きいことを示している。独裁国家のみせかけの政治的安定にマネーは騙されない。





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最終更新日  2024年09月29日 06時00分12秒
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