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mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
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* 一葉 *さん

Aug 19, 2008
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 家に帰ってからも、おじいちゃんは何度も、一人でぼやいていた。

「耕ちゃんは、何をするか分かったもんじゃ、ないなァ。東京に行く時は、塁と一緒じゃなく

ちゃなァ。耕ちゃんと一緒じゃなくちゃ、塁はもっとみんなの中に入れなくなってしまうから

な。みんなが、今、一緒にスタートすることが、大事なんだ。塁は、スタート遅れてはいかん

のだ。今なら、みんなで作り上げていけるんだから、な」

 おじいちゃんは、ぼくに言ってるのか、自分に言っているのか分からない。

突然、大きな声で、ぼくを呼んだ。

「塁ッ。塁、ちょっとここに来い!やっぱりお前、すぐにでも、東京に行けッ。遅れれば遅れ

るほど、もっと、みんなに、溶け込めなくなってしまうからな。耕ちゃんなら、すぐに溶け込



う、もっと母さんたちの中に入りにくくなってしまうからさ。もう、決心して、行けッ。な

ッ?塁!母さんとは他人な訳じゃないんだ。お前のその考え、間違ってるぞ!」

 ぼくは、黙っていた。黙っているしかなかった。

「行きたくない」と千回言っても、おじいちゃんは、千回「行け」としか言わないだろう。

「何で、黙ってるんだ?塁、行けッ。なッ?頼むから、行けッ」

 おじいちゃんは、ぼくの気持ちを揺さぶるように、真剣だった。目の淵に、じんわりと涙が

引っ張り出されていた。

でも、もうぼくの気持ちは動かない。

「おじいちゃん。ぼくは、百回も千回も言ってるよ。行きたくないって。行きたくない、行き

たくない、行きたくない!」

「また、お前はそんなことを言ってる。何で行きたくないんだ。山中さんは、あんなに良い人



耕ちゃんだけでなく、お前のことも、気持ちよく引き受けてくれてな」

 耕ちゃんだけでなく、ぼくもと、おじいちゃんは言った!ぼくは、少なからずショックを受

けた。ぼくは、付け足しなんだ。やっぱり、だ。

おじいちゃんだって、ぼくが母さんと血がつながっていないことを気にしているから、そんな

言葉が出るんだ。



いから」

「お前は、耕ちゃんとつながっているだろ?何を言ってるんだッ」

「でも、耕ちゃんは母さんとつながってる。ぼくは、それが悔しい。ねぇ、おじいちゃん。ぼ

くは、どうして、母さんと血がつながっていないのッ?どうしてッ?どうして、こんなことに

なったのッ?父さんが、消えなかったら、ぼくは、こんなことにならなかったんだ!例え、母

さんと血がつながっていなくたって!そうでしょ、おじいちゃんッ?行きたくない、ぼくが悪

い訳じゃないよねッ?ぼくは、大好きな父さんが消えてしまうなんて、一生、一生思ってな

んかいなかったんだ!父さんが消えて、母さんが本当の母さんじゃないことが、分かった時、

ぼくがどんな気持ちだったか、おじいちゃん分かるッ?みんな、ぼくに隠してたくせに!」

 おじいちゃんは、深く息をした。そして、涙で滲む目を、しばらく閉じていた。

「塁。お前は、これから大人になっていく。相談する人が必要になることもあるし、教育だっ

て受けさせてやりたい。お前の将来には、山中さんは、どうしても必要な人なんだ。じいちゃ

んは、お前の面倒、見てやるだけの力はないんだ。悔しいけど、なッ。許してくれよ、なッ?

昶は、人を助けて死んだ。仕方のないことなんだ。今更、何を言っても、あの頃には戻れない

んだ!塁、前に進んでいくしか、道はないんだよ。人間、みんな、前に、前に進むことが大事

なんだ。今は苦しくても、必ず、良かったと思える時が来るから、なッ。負けては、いけない

んだ。人間と言うのは、な。苦労して掴んだことが、基礎となり、土台となるんだ。そうし

て、力をつけて器を大きくしていくものなんだ。そしてな、他人の気持ちが、分かるようにな

る。今の時代は、他人の痛みの分からない人が多くなってきている。住みづらい世の中だ、ま

ったく。だから、塁には、器の大きな人になってもらいたいんだよ、じいちゃんは、な。お前

の将来のことが、心配で心配でならないんだ」

 おじいちゃんは、ため息をついてそう言った。そして、仕方なさそうに、笑いながら、ぼく

の背中を撫でた。

「塁ッ。じいちゃんは、死ぬに死ねないぞ、お前が心配で、な」




 ぼくは、ずっと、みんなに苦しめられてると思ってきた。でも、おじいちゃんの話しを聞き

ながら、ふっと、みんなを苦しめているのは、ぼくなんじゃないかと、思った。

 父さんと、ぼくを生んで間もなく亡くなってしまった人(もう一人の母さん)は、宇宙の何

処にいるのだろう。

一緒に空の彼方にいるのだろうか。海の底に安住しているのだろうか。

そこに行くには、どうすれば辿りつけるのだろう。

父さんと、見たことのないもう一人の母さんに会いに行くには?


                        第四章 終わり

























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Last updated  Aug 19, 2008 11:25:40 PM
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