児童小説

児童小説

PR

Freepage List

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

Favorite Blog

今日咲いてる花たち… New! ジュメ0329さん

色々とお出かけして… 千菊丸2151さん

あっというまに冬! ミーシャ1225さん

2025年のコスモス行… リュウちゃん6796さん

* 一葉 *さん

Jan 26, 2009
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 葉は、本当に昆布のように長めで、ぬるっとしていて、縁はひらひらとフリルのようだ。

全体が茶色で、波に沈むと深緑色になり、浮かんできた瞬間は、オリーブ色だった。

花は、二枚の葉の上で守られるように、咲いている。二枚の葉はまるで父さんと母さんみたい

で、花は大切な子どものようだった。

ぼくはそれを見て、気持ちが、ふうっと緩んだ。何だかとても、嬉しくなっていた。

花がとても、幸せそうに映ったからだ。 

 ぼくは、ふとイケの様子が気になった。さっきまで、あんなに大きな声ではしゃいでいたの

に今は静か過ぎる。

イケが、目を赤くしていた!



水で赤くなったのではないって。

「イケ、唇、紫になってるよ。(陸に)あがってから、見ようよ。風邪ひいちゃうよ」

「やだよ。寒くなんか、ないって」

「寒くなくたって、紫だよ。それなら、ぼくは?ぼくも、紫になってるハズだよ」

「なってないって。お前は、先にあがりな。オレは、まだあがらない。オレさ。オレ、マジ、

この花、ノジにも見せたかった!ノジさ、ずうーっと悔しかったと思うよ。でもな、転校して

よかったんだ。もう、いじめられてないと、思うしよ。オレ。ノジの分までしっかり見ておく

からよ。今度、いつかノジに会えたらよ。この、花の話、してやりたいからよ。あいつ、この

話しても、信じてくれるかどうか、分からないけど、よ。オレだって、最初信じなかったし、

な」

 ぼくも、イケのその言葉で、野島さんに見せてあげたいと思った。



た頃の野島さんを思い出した。心の隅っこに、微かに揺れるような痛みを感じた。

「きっと、野島さん、信じてくれるよ!」

「お前、そう思うか。でもよ、オレが言ったって信じてくれないぜ。お前なら、別かもしれな

いけどよ」

「別?そんなこと、ないよッ」



「はっきりしろったって、よく、分からないよ。何で、はっきりする必要があるんだよ!」

「必要?必要があるから、訊いてんだよ。お前も分からねぇ奴だよな。でも、まいっか。オレ

は、ノジのこと、好きだ。誰が何て言ったって、ノジのこと好きだァ!」

 イケはそう叫んだ。

その声は、波にさらわれて消えて行った。

その想いは、やがてイケの胸の奥に、大切にしまい込まれていったようだった。

(イケはその後ずっと、野島さんの話をしなくなったのだ。)

ぼくは、人の気持ちの深さと切なさを、思った。

 海に咲く二つの花は、白く輝きながら、ぼくたちの側で波に揺られていた。また旅立って、

もう会えなくなっても、生涯の友だちだよと言ってるみたいに。

ぼくは、もう何も言えなかった。イケも無言だった。

ぼくとイケは、これからずうーっと、生涯の友だちだとぼくは思った。たとえ、何があって

も!

ぼくは、そう決めて前へ進むことを、伝説の花に教えてもらったと思った。

ぼくたちは、掛け替えのない友だちなのだ。

「ぼくたち、マジ、凄いことに遭遇してるよね?誰も見てないことに、出会えてる。何だか、

これから、どんなことがあっても負けないでいられそうな気がする。頑張れそうな気がする

よ!」

「うん、そうだな。お前、たまには、いいこと言うじゃんか」

「たまにじゃ、ないよ。ぼく、いつだって言ってるじゃん。イケが気がつかないだけだよ」

「あはは、あはは。ところでよ、寒いよー、母ちゃーん」

「ぼくも、寒いよー。母ちゃーん」

 ぼくもイケも、あがると、くしゃみの連続だった。

むしろ、海の中の方があったかかった。

「こんな濡鼠で、(二人で)歩いていたら、怪しい奴と思われるよ。ヤバイよね?ぼく、片っ

ぽの靴もないしさ」

「そんじゃ、近道するか?誰にも見られないぜ。ただしィー。山あり谷ありーィ」

「いいよ。山あり谷ありだって。急いで、帰ろう!」

「ルイ、行ッくぞォー!」

「おッうー」

 何処を通っているのか、分からなかった。

イケの言ったように、本当に山あり谷ありだった。

ぼくはもう、何も言う元気がなくなっていたから、ただ、ただ登ったり下りたりした。

 時々、イケが何かを言ったけれど、聞き返す力が残っていなかった。うん、うん、ぼくはそ

れしか言えなかった。

 どうやって家に辿り着いたのか、ぼくは覚えていない。

 牧野先生が、ぼくの家に来ていて、何か叫んだみたいだった。

 イケが、がっくりとヒザをついて、倒れこんだみたいだった。

 ぼくは、それからどうしたのか、何も覚えていない。

                             つづく














お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 26, 2009 06:18:05 PM
コメント(8) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: