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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
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Dec 21, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ぼくは翌日、一人でどぶ川の上流を探検しに行った。

幅一メートルぐらいの小川だから、源流もそれほど遠くはないだろうと思った。

 小川には、細かい小さな棘のあるつる性の植物が、生い茂り、はびこり、かぶさっていた。

まるで、編んだつるで、小川に蓋をしているみたいに。

つるは、よく見ると、小さなピンクの花をつけている。

その隙間からは、陽に照らされ、風にかすかに揺れて、銀色や七色にぎらりと光る小川の水が垣間

見えた。

不気味な美しさだった。

一瞬、その美しさに気を取られ、そうになった。



咳は、なかなか止まらなくなって、そのうちに、涙が出てきてしまった。

 この川には、きっと、生きものなんか、住んではいないだろう。住めるはずないなと、思った。

この小川は明らかに、病んでいる。誰が見たって。

とても水が流れているとは思えない。いつからこんな状態になってしまったのだろう。

どうして今まで、綺麗にしようとする人が現れなかったのだろう。

 清らかな小川であり続けるのは、難しいことなのだろうか。

でも、こんなに汚したのは人間なのだ。汚すのも人間、綺麗にしようとするのも人間だ。

やっぱり誰かが手を入れない限り綺麗にはならない。

もしも、誰も手伝ってくれる人がいなくても、ぼくが綺麗にすると、決心していた。

源流は、こんなに汚れているはずがないと、思いたかった。

 この小川の両サイドは、水面より高くなっていて、人が一人、やっと通れるようなでこぼこの土



に揺れていた。

シロツメグサは、丸くて白くて可愛らしかった。

 ずっと昔、おばあちゃんがまだ生きていた頃。

おばあちゃんは、このシロツメグサを上手に編んで、手首に巻いていたことがあった。嬉しそうに、

子どもみたいに笑って。



たことを覚えている。

 おばあちゃんは、ぼくが女の子だったら、きっと花の輪を編んでぼくの頭に乗せてくれたのかも

しれない。

白い花は、仄かな、あまくてやさしい匂いがしたことも、思い出した。

 この白い花で輪を編み、生まれてくる妹の小さな頭に乗せてあげたい。天使みたいだろうなと、  

ふと思った。

おばあちゃんも、妹が生まれたらどんなに喜んだだろう。

 ぼくは、ドキンとした。

ぼくは、何を考えているんだ。どうかしてる!思わず、狼狽してしまった。

ぼくは、土手を乱暴に腕をふって歩き始めた。

 とても歩きにくかった。

草が足にからんだりもするからだ。それに、避けていた考えが、不意に現れ、ぼくの足をとろうと

もしているからだ。

ぼくは、そんなことを振り切りたくて、右の方の土手に飛び移った。

でも、歩きにくいのはどちらも、同じだった。

 つるは、こんなに歩いてきてもまだ、小川に覆いかぶさっていた。何て、強い繁殖力だろう。小

川の主みたいだ。

 土手の道は歩いていくうちに、こっちの方だけ段々高くなっていく。どうなってるんだろう。登  

りきった時にはなくなっていた!

行き止まりになっていたのだ。

木が茂り、笹が一面を覆いつくしていた。一歩も進めなかった。

ここから、左の方の土手に飛び降りることは、怖かった。

あの細くてでこぼこの土手の道に、着地する自信はなかったからだ。

小川に落ちてしまうか、向こうの低くなっている笹薮に突っ込んでしまうかだ。例え、うまく着地

できたとしても、体のどこかを打ってしまいそうだった。

もしも、ここで足なんか怪我したら、ぼくは誰にも気づいてもらえない。一人では、帰れなくなっ

てしまう。

さすがに、あのマサルじいさんだって、ここまでは見回りしていないだろう。

 心配するおじいちゃんの顔が浮かんだ。もう、おじいちゃんに心配はかけられない。

ぼくは引き返した。一人だからこそ、危険なことはしない。

ぼくは、安全な所まで引き返した。そうして、反対側に飛び移った。

 小川の臭いは、あまりしなくなっている。あのぎらりとした、水の上に浮かんでいた七色の油の

ような膜も、少なくなっている。どこまで遡ったら、完全になくなるのだろう。

 少し心細くなっていたけど、ぼくは、また源流を目指した。

 だいぶ歩いた時、前方に手すりのない小さな橋が、かかっているのが見えた。

この小川を横切るように、道路が通っているようだ。

行ってみると土手の道は、橋を最後にもう、なくなっていた。その先は笹薮だった。

 この辺からこんもりとした山が、始まっているのだ。

木々がうっそうと茂り、その根元には笹が勝ち誇ったように群生していた。とても人が、入っては

いけなそうだった。

小川は、その間を、ゆるやかに左にカーブして見えなくなってしまった。川幅も、狭くなっていた。

ぼくは、何だか逃げられてしまったような気がして、しょげてしまった。

 探検は、ここで終わりにしなければいけないのかもしれない。

小川は、笹薮に守られているみたいだった。

 でも、小川は逃げたんじゃないんだ。だって、水はぼくの方に向かって流れてきてるから。

綺麗な水だった。

ここには、生きものが住んでいるかもしれないと、思った。

ぼくは、何がいるか見たくて、笹を掻き分けて入った。

思わず、ギャーと、叫んでしまった。腕も脚も笹の葉で切ってしまったからだ。

ぼくは、注意深く道路に戻った。

擦り傷だらけになって血がにじんでいた。

ちくちくと痛く、じりじりと痒かった。

                                     つづく 





















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Last updated  Dec 21, 2010 03:27:39 PM
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