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2015.07.01
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 マスコミを懲らしめなければいけないと発言し、

 所属する党から厳重注意処分を受けた衆院議員がいた。

 この人はその口の根も乾かないうちにまた同様の発言をして騒ぎを再燃させた。

 冗談で言えば懲りない人で、自らを懲らしめなければならない。

 ところで、この稿はこの人を懲らしめるためのものではない。

 僕を含めて多くの人の心に潜む危険な独善性について触れたいために、

 懲らしめなければならない、というフレーズをお借りした。


 懲らしめなければならない…は大変お偉い人の大変高い目線から、

 懲らしめられる側を見下した言いようである。



 自分は正であり善であるから、

 懲らしめられることはないのである。

 だから、誰かに何かに成り代わって懲らしめなければならないのである。

 その誰かは善男善女かもしれないし、時の為政者かもしれない。

 その何かは正義かもしれないし、その人が傾倒する思想宗教かもしれない。

 あるいは天かも知れない。

 そういう目線から見下ろしているから、

 自分の価値基準からはみ出した者は邪であり悪である。

 天に成り代わって不義のものを懲らしめるのである。

 社会や、価値観の大変動期には、

 こういう意識を集団で抱きやすくなる。



 ヨーロッパの中世末から近代初期にかけて魔女狩りが隆盛を極めたが、

 その魔女はキリスト教世界で言う悪魔と結託して社会を混乱に導く背教者のことで、

 妖術を使う魔女ではないし女と限っていたわけでもなかった。

 背教者、つまり、キリスト教社会の破壊を企む

 不届き者だから懲らしめなければならなかったのである。




 東京日日新聞【現毎日新聞】の新名丈夫記者がその一面に、

 「竹槍では間に合わぬ。飛行機だ、海洋飛行機だ」

 と大見出しのついた記事を書いた。

 戦局の悪化の一途にイライラを募らせていた陸軍出身の東條英機首相は、

 この記事に激怒、新名記者を陸軍に懲罰召集させた。

 大正時代に徴兵検査を受けた人間としては、

 全国初の召集兵だった。

 東條首相はヒットラー、ムソリーニのように独裁者ではない。

 機を見て硫黄島などの死地へ送らせることを目論んだのだろう。

 それが独裁者ではない彼のできる

 懲らしめなければならない方法の限度だった。

 しかし、新名記者は黒潮会という海軍省記者クラブの中心者で、

 海軍首脳に信頼されており、海軍が陸軍に抗議したことにより、

 3ヶ月で召集は解除された。

 東條首相は再召集を狙っていたというが、

 マリアナ沖海戦の惨敗、サイパン島失陥などで、

 絶対国防圏が脆くも崩壊して、

 総辞職に追い込まれた。

 彼は独裁者ではなかったが、正義は自分にあると思い込んでいた。

 新名記者はその正義に成り代わり、

 懲らしめなければいけなかったのである。

 私怨に正義の衣を着せてしまったのである。


 朝鮮戦争の勃発で自由の国アメリカ国民の間で、

 共産主義に対する警戒心と恐怖心が高まった。

 共産主義者を懲らしめなければいけない、

 と自分自身の心にあった正義の刀を振りかざした、

 のがマッカーシー上院議員だった。

 政府活動特別調査委員会の委員長として、

 共産主義者、シンパに対する極端な摘発のナタを振るい始めた。

 その矛先は国務省にも向けられた。

 これがマッカーシー旋風である。

 その旋風は放送界、映画会でも吹き荒れた。

 これに敢然と立ち向かったのがBBC放送の人気キャスター、

 エド・マローとその仲間で、

 マッカーシー旋風の行き過ぎを批判し始めた。

 すでに世論もそれに気付いており、

 次第に旋風は弱まり、マッカーシーは上院での譴責決議案の成立で失脚した。

 失意の彼は怒りと落胆の中で大酒に逃げ、

 急性肝炎の発症で48歳の若さでその生涯を閉じた。

 ついに自身の心の正義を克服できず、

 悪を懲らしめきれなかったのはなぜか、

 と自問を続けざるを得なかったのだろう。


 10年ぐらい前だったか、

 夜の新宿の繁華街で酒によって浮かれ騒ぐ若者たちを見た。

 同じカラーのものを着ていた。

 今は影を潜めたが、黒ギャン赤ギャン、

 などの呼称で知らえれるギャングの若者たちだった。

 彼らを見て僕の心に潜む安っぽい正義が首をもたげて、

 「あいつらを拘束して収容所に入れ性根を叩き直せ」

 と、怒りとともに囁いた。

 「それじゃ北朝鮮だ」

 普段の僕がたしなめた。

 誰か何かに成り代わって【懲らしめなければいけない】という誤った正義は、

 誰の心にも潜んでいるかもしれない。

 理性がそれを抑えているが、

 【懲らしめなければいけない】と広言する人が続々現れたら、

 傾国の兆しと見ていい。























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最終更新日  2015.07.02 16:44:05
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