カナリア諸島旅行記= Part 10=


すると、私の前に3人の男が立っています。おそらくスペイン人でしょうか、背丈はそんな高くありません。ただ、いかにもがっしりとした男が2人と、きちっとした身なりの紳士が一人、私の方を見ています。
私は、ボーっとした頭で、"あれ?なんだあ?おれはどうしたんだ?"と考えました。少しづつ戻り行く意識の中で、腕を動かそうとしましたが、うまく動きません。
はっとして、自分が椅子に縛り付けられていることがようやく分かりました。"どうしておれは、こうなっているんだ?" 状況が把握できません。目の前にいる3人の男達は、何かスペイン語で話しています。あまりいい雰囲気ではありません。"なんかやばいぞこれは" と感じました。
すると、3人の中のひとりが、何か言いながら私の胸ぐらをつかんできました。その男は、背はそんな高くないのですが、胸板がめちゃくちゃあります。まさにマラードナを連想させるような、がっちりとした体格で、怒ってるような顔は、まさにゴールを決めた時のマラドーナのように上気しています。
"どうして、こんなことになったんだ?" いつナラードナからパンチがくるか分かりません。"げー助けてくれー"と心で叫びますが、どうにもなりません。マラドーナのスペイン語攻撃は続くのですが、何を言っているか理解できないので何も言えません。何も話さない私を見て、ますます彼の声は荒立ち、私の胸ぐらを小突いてきます。ちびりそうなション便を我慢しながら、マラドーナの攻撃に耐えます。もうひとりの屈強の男はニヤニヤしながら私を見ているだけです。
いったいどれだけの時間がたったでしょうか?紳士風の男がようやく口を開きました。その男の目は鋭く、とても冷たいものを感じます。思わず背筋がゾクッときました。
"Why you come to Canaria?" ... ようやく理解できる言葉が出てきました。私は日本のビジネスマンで、カナリアには商談のため来たことを言いました。
"Don’t tell a lie!!" 凄まじい声です。びくびくしながら、"No! That’s true." と叫びますが全く信じていません。相変わらず、マラドーナも何かぎゃーぎゃー言っています。
紳士風の男は、"You took the picture so many time ! Why such business man took a lot of pictures! ... You are not business man!"
ひえー。確かに写真は結構撮りましたが、それのどこが悪いんだよー。何か勘違いされているとしか思えません。
"Yes, I am a business man. Why you said such a thing?" なきそうな声で言いました。
"Son of the bitch!" と言って、何か二人に指図をしました。すると待ってましたとばかりに、屈強の二人は、私に殴りかかってきました。
私は、手は縛られていましたが、足は若干動きましたので、必至に抵抗します。何とか椅子に縛られたまま立ち上がり、回れ右をして相手に背をむけ、椅子の足を使って応戦します。それがうまくその男の股間にヒット!相手はもんどりを打って倒れます。
私は、こういったことを以前訓練をしたことがあります。実は、私はMI6のエージェント。
カナリア諸島は、ヨーロッパとアメリカ大陸の間に位置し、軍事的に重要な場所。アルカイダの組織でアフリカを本拠とする通称"コンゴのトラ"が、このカナリア諸島に秘密基地を造っているという情報が入ったのです。私は、日本のビジネスマンに扮装し、その基地を探る任務についていました。
グランカナリア島のバナナ園を重点的に調べた私は、テネリフェ島にいるラングレーの友人と落ち合う予定でした。どこで、ばれたのか分かりませんが、不覚にも捕まってしまったのです。
何とか逃げ出さねばと考えますが、名案が浮かびません。"ジェームスボンドならどうするんだろう?"と思いました。"そうだ!きっと、とびっきり美人の仲間が助けに来るはずだ!"
……
もちろん誰も助けに来ません。
もう一度あたりを見渡すと、部屋の隅に私が持ってきた盆栽があります。きっと、何か隠してあると勘違いし、敵がホテルから持ってきたのでしょう。
"よし!これを" と、何とか動く手で、盆栽の枝を持ち、体を回転させ、相手めがけて投げつけます。これがうまく相手の顔面にヒット。相手は、血を流して倒れました。

ところが、その盆栽が、突然怒り出して、巨大化するのです。
私は、その盆栽に押しつぶされ、"重い、重いよー、ううう、苦しいいい"

はっと、目が覚めました。
船の窓越しにテネリフェ島が見えます。
重いと思ったのは、隣にいたおっさんが寝ぼけてよりかかってきたからでした。
そうして、ようやくテネリフェ島に到着しました。

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