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2011.08.02
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カテゴリ: 映画

前作は壮大な児童書の映画化でこけたけれど、「コクリコ坂」はうそのようにおもしろかった。
脚本は父、宮崎駿。
脚本の良さだとしても、高齢化の進むスタジオジブリの継承者がたしかに育っているんだなーとうれしかった。
オリジナリティー溢れるアニメーションの灯を消してほしくないと願うから。

原作は、1980年に『なかよし』に連載された同名コミック。

1963年、横浜。
港の見える丘に建つ古い洋館“コクリコ荘”に暮らす16歳の少女・海は、大学教授の母に代わって、この下宿屋を切り盛りしている。
毎朝、いまは亡き船乗りの父に教わった信号旗を掲げるのが日課だ。

ひょんなことから彼らの騒動に巻き込まれた海は、反対メンバーの一人、風間俊と出会いしだいに惹かれ合っていくのだが―――。


昭和40年代ってすごい時代だなー。
ノルウェイの森 』と同じころ。学生運動が盛んで、仲間意識が強くて、議論を楽しめる風潮があった、今はなき熱い時代。
吾朗監督が生まれたのは1967年だから、当時を知っているはずはないけれど、昭和40年代の雰囲気をみごとに感じる。

学生運動と並行して描かれる、海と風間くんの恋模様はくすぐったく切ない。
風間くんは両親と血が繋がっていなくて、本当の父親は、朝鮮戦争で戦死した海のお父さんだった・・・という。
一枚の写真から事実を知ってしまった二人は自分たちの関係にひたすら悩む。
安っぽい<出生の秘密>的なシチュエーションだけれど、そこは少女漫画。


“カルチェラタン”の造形もさることながら、海ちゃんのお勝手仕事の風景や、家具調度品の数々が懐かしくてじつに魅力的。自分がもし過去の日本を経験できるならこの時代に生きてみたいなーと憧れる時代が背景となっていた。
文化系のいかにも風変わりな学生たちは、きっと監督自身もそうであるはずの愛ある描写なんだろうなぁ。適度のユーモアが楽しい。

主人公たちが、ふつうの日常を大切にひた向きに、未来を見据えて 生きてる 姿は、ただもうそれだけで宮崎アニメを観る意味に直結していて、こころが(一瞬だけ)まっさらになる。


吾朗監督は『ゲド戦記』で父親殺しをやった――と書いているのをどこかでみたことがある。今回は、古き良きものを見つめた、歴史や伝統を守っていくことの大切さを体現してみせた作品になっていると思う。
父親の作品のオマージュかと思える数々の見慣れたシーンも、リスペクトする想いを素直に感じる。


music_p06.jpg




監督/ 宮崎吾朗
企画/ 宮崎駿
原作/ 高橋千鶴  佐山哲郎
脚本/ 宮崎駿  丹羽圭子
声/ 長澤まさみ  岡田准一

(95min)








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Last updated  2014.11.11 23:06:55
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