走る物流マンの給水所

走る物流マンの給水所

Sybil Ludington50完走記

Sybil Ludington50完走記(2006/4/22)



今シーズン第二戦はマンハッタンから北に車で2時間、Carmelという田舎町での50キロレース。先月のレースは練習無しのぶっつけ本番50キロ、今回は3週間だけにせよ、トレーニングを積んでの参戦。体重もベストまで半分戻して、3kg減。少しは納得の「走り」が出来るかどうか。楽しみ半分、不安半分というところでしょうか。
雨のcarmel湖.JPG
写真は雨のcarmel湖

Sybil-Ludingtonって何?って感じですが、これ16歳の女の子の名前です。
今から200年以上前の独立戦争中のお話しです。時は1777年4月26日、このNY州中部の田舎町の近くにも英国軍の攻撃が迫っていました。遠くに見える街が戦火で赤くそまります。独立軍の大佐だった父親を無理やり説得したSybilは夜中に馬の背に跨り、たった一人で雨中の暗い山道を、いや道なき道を走りました。周囲の村人達に英国軍が迫っていることを伝え、兵隊達をかり集める為に。
夜中に彼女に起された400人の兵士達は次々とLundington大佐のもとに集まり、英国軍と闘うために、隣のコネティカット州に向かいました。長い戦いの結果、アメリカは晴れて独立を母国英国から勝ち取りますが、彼女が一晩馬の背で走った50キロ以上のコースはその後、歴史の道とされ、アメリカ独立のために貢献した勇敢な少女の行動として、今でも人々の間に話し継がれています。

このマラソンはその4月26日に最も近い週末に、彼女の銅像(1960年代に建てられた)をスタート・ゴールとし、彼女の走ったコースを辿って走る、レースです。こんなレースを考え出すのって、何だかアメリカらしいでしょ?

今年のレースは4月22日。日本は春の盛りだけれど、ここは北国の田舎町、朝の気温は摂氏4、5℃。おまけに前夜からの雨は止む気配もなく、会場でのウェア選択も最後まで悩みましたが、結局、ハーフジッパーの長袖シャツにNikeのベストという組合せ。下はCW-Xの短いタイプのもの。強烈な坂道を駆け上るにはベストな選択と思いましたが、後々後悔することに。。

朝8時のスタート。人数は60人程度と極々小規模です。NY周辺の3つのランニングクラブが共同でレースを開催しており、年間6つのウルトラレースの1つにあたります。
夫々のレースの順位をポイント化し、年間を通じてのチャンピオンを決めます。
去年は確か、10位くらいだったでしょうか。今年は一桁を目指したいのですが、上位は若くて、早くて、逆立ちしても勝てないツワモノたち。夏場に向けて、コツコツ練習を重ねて、結果に繋げてゆければと思います。
受付の場所から、何台かの車に分乗して、スタート地点に。同乗した40歳代の男性はフル以上を走るのが今日が初めてとか。助手席に座っていた別のランナーがこのコースはcrazyだよ!おまけに雨だし。とか言って笑ってましたけど、どうもジョークが効き過ぎた様で(コースの酷さは半ば事実ですが)その男性ランナー急速に自信喪失の模様、7時間かけて帰ってくればいいんだから…(一応時間制限は7時間のレース)と小さな声でつぶやいていました。

朝8時にスタート。早速優勝候補達はキロ4分で坂道を駆け上がってゆきます。
スタートから最初の10キロ弱は、片側1車線の国道の路肩を走ります。交通量は意外と多く、大型のトレーラーが物凄い水しぶきをあげながら、すれ違ってゆきます。
水溜りの水も跳ね上げてくれるので、都度避けるように走っていましたが、その内、ずぶ濡れになり、皆さん諦め気味。リズムも壊れるので、ひたすら、まっすぐ走ることだけに集中、集中。黒人の若い女性と少し会話を交わしながら、10キロ付近を通過、きちんとした距離表示はないけれど、キロ5分ペースで楽に走れている様です。

そうこうする内に、国道を右に折れ、いよいよSybilが走った田舎道に入ります。
途端に登り坂が始まりますが、元気な身体にはあまり苦にならないところです。
途中の林でちょっと寄り道、気温が低く、汗をかかないために、トイレが近くなってしまうのですが、結局ゴールまでは4回も用をたすことに。50キロで4回はちょっと多すぎですね(汗)。その間に男女3人組に抜かれ、順位は15位くらいまで下降。
ただ身体に余裕があるので、焦りはありません。
20キロ周辺でエイドがあり、ゲータレードを軽くコップに1杯。あとカーボショッツを1つ、早めの補給を心掛けます。
天候は一向に回復せず、雨は寧ろ強まり、気温も5℃のまま。エイドの皆さんも寒そうです。本当にご苦労様です。

アメリカのレースの距離表示は日本でのそれとは比べ物にならないくらい、大雑把です。
それにマイル表示なので、頭の中で1.6倍するのもなかなか面倒。距離が進んだ後半は疲労で頭も混乱気味。計算してもタイムがよくなるわけではないんですが、ランナーの悲しいサガというものでしょう。このレースは10、20、30マイル地点(およそ16、32、48キロ地点)それにハーフマラソン(13.1マイル)とフルマラソン(26.2マイル)のところに表示がありました。そのハーフマラソンの地点を1時間45分あまりで通過、呼吸も乱れておらず、後半のレース展開に期待を感じさせます。

林道をぬけ、いよいよレースは中盤戦に。コースは絶えず、アップダウンを繰り返しますが、特にものすごい上り坂が3箇所、22キロ、33キロ、40キロ手前のところにあります。
1つめは難なくクリア、元々上りは得意なので、先行するランナーとの距離がみるみる縮まります。ただその後の下りで突き放されますけども。。(涙)

20マイルを過ぎたあたりから、何となく身体が重くなります。まあフルマラソンでも30キロ過ぎれば、疲労は感じるのだから、と自分に言い聞かせながら、走るのですが、丁度風向きが右前方からの向かい風に変わり、心なしか雨脚も強まり、冷えた身体を更に鞭打ちます。脚の感覚がないように思えたので、ためしに太ももを叩いてみると…
何と、感覚がない!悴んではいましたが、手のひらの感覚はいくらか残っているのに、脚の感覚がないとは!ちょっとビックリ。自分のものでない下半身の上に乗っかって走るような感じ、なんて初めての体験でした。何で持参したCW-Xのロングタイプを穿かなかったのだろう。。と思い切り後悔しましたが、時既に遅し。
でもまあ、何とかピッチは刻めているので、よしとしましょう。
それに、この寒さ、1つだけメリットがありました。以前からの古傷で、左足首の関節がレース後半痛みはじめるのですが、今日だけは感覚が無いので痛みも感じません。
こういうのアイシング・ランなんていうのかいな、などとアホなことを考えつつ、レースは後半戦に。

フルマラソンの距離表示のところを3時間40分台で通過、途中で何人かを抜いてきたので、現在位置は10番手といったところでしょうか。コースは最後の難関を過ぎ、残りの5マイル(8キロ)は下り基調となります。丁度、前方に大学生の女性ランナーがペースダウンして走っています。
来ているユニフォームや身体の感じからして、アスリートの様ですが、寒さにやられたのでしょう、キロ6分近くまで、ペースダウンしている様子。
ところが自分も疲れてきたのか、簡単に抜けません。疲労のピークのところで都合の良いペースメーカーが出現といったところで、敢えて前には出ず、3キロほど、彼女の後ろ、40メートルくらいのところを追走させてもらいました。
ラスト3キロあたりで、ようやくギアチェンジ、会釈をして抜きさりましたが、ここでの頑張りが、タイムの短縮に繋がった様です。

ゴール地点.JPG
写真はゴール地点

Sybilの像.JPG
Sybilの像

ゴール地点は湖のほとりのSybilの銅像の立つ公園です。雨の煙る前方の風景に公園の緑が見え始めました。ゴールまであと1キロです。
道路から右手に折れ、公園の中を進みますが、ただの草地をコースにしただけですので、表面はボコボコ、50キロ走ってきた身体にはツライところです。
4時間30分ほどでゴール。開幕戦に比べれば、気象条件、コースとも厳しかったのですが、多少ナリともタイムを改善することが出来たのは最近のトレーニングの成果と信じましょう。おまけに、こんなタイムではありましたが、寒さもあって、皆さんタイムが伸び悩んだのでしょうか、40歳代、2位とかいうことで、入賞のタテまで頂けるとのこと。

ゴール後は寒さと脱水で震えがとまりません。急いで着替えて、水分補給、それでもダメです。そうこうする内に後続のランナー達が続々とゴールします。
まあしかし、彼らの平気そうなこと。走り疲れはあっても、誰も自分みたいに震えている人なんかいません。多分食べ物なのか、皮下脂肪の厚さなのか。。やっぱり人種の違い(←当然)なんでしょうね。(苦笑)
サンドイッチとサラダとコーヒーでランチタイム。今年もこの輪の中に戻って来れたなーと思うと何だか嬉しくなります。午後の表彰式には所用で出席出来ないことを主催者にわび、駐車場に戻りました。最後にSybilの銅像の写真を撮っておこうと思い、デジカメをもって、ゴール地点に。
丁度その時、レース前に会った“7時間男”がゴールするところでした。時計を思わず、見ると5時間30分。本人に“おめでとう!6時間切ったじゃない!”と話しかけ、ガッチリ握手。嬉しそうにレースの経過を説明してくれました。早口で捲くし立てられても半分ほどしか分かりませんが(汗)。でも、ランニングの喜びは万国共通のものですね。

このレース、厳しい条件でしたが、それだけに久し振りの充実感を味わうことが出来ました。5月にはロングアイランドでトレイル(50K)レースの予定もありますし、夏場には超ウルトラレース(160キロ)にも出たいので、これからもトレーニングを重ねて、満足のいく、走りを心掛けたいと思っています。ではまた!




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