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私と同世代の広井良典の著書である。私は経済に疎いせいか、いつも難解な内容だと感じつつ、なぜか読んでしまう。内容は難しいが、何となく自分と同じ考えの持ち主だという臭いがするのである。
本書でも紹介されているが、われわれの世代は少年期に高度経済成長時代の恩恵を存分に受けた世代であるのだが、その最後で「ローマ・レポート」、いわゆる「成長の限界」という現実を突きつけられた世代でもある。
私は、コンピュータ・シミュレーションの演習として、成長の限界をプログラミングした。その結果導かれる最良解が「定常化社会」である。最悪の解は2つあって、人口爆発による環境破壊、もう1つは人口減少による人類滅亡である。このプログラムを組んだときには信じられなかったのだが、現在、我が国は後者の道を辿りつつある。
定常化社会とは何か――これが本書のテーマである。
私はITの最先端で仕事をしながら、著者と同じことを感じる。「そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか」(139ページ)。人間の欲望の最新型がITである。果たしてITはどこまで行くのか。
そしてもう1つ面白いのが、私も読んだ「ゾウとネズミの時間」で有名な本川達雄の引用である。「人間という生き物の場合、本来の必要量を大幅に上回るかたちでのエネルギー消費を行い、それによって「時間」の速度を速めてきた」(149ページ)――ガソリンをふんだんに使う車社会がそうであるが、ITはそれをはるかに上回る。地球上の距離を縮め、莫大な量の情報を瞬時にやり取りできるようになったのだ。デイトレーダが典型例だが、自宅にいながら24時間仕事をすることも不可能ではなくなったのだ。果たして、ヒトという種にとって、これは幸せなことなのか、それとも‥‥。
ネット世界の中での生活は、あまりにも刹那的になったような気がする。たまには未来を考えて思索にふけることも必要だろう。
■メーカーサイト⇒ 岩波新書「定常型社会」
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