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| 著者・編者 | アダム・ファウアー=著 |
|---|---|
| 出版情報 | 文藝春秋 |
| 出版年月 | 2006年08月発行 |
どんな複雑な計算でも瞬時にやってみせる天才数学者ディヴィッド・ケインは、あろうことかギャンブルで身を持ち崩そうとしていた。ポーカーの相手が数学的にあり得ないような確率でストレート・フラッシュを組み立て、多額の借金を負わされる羽目になったのだ。
CIA 工作員のナヴァ・ヴァナーは、取引に失敗し、北朝鮮の工作員に追われていた。彼女は、異動先の国家安全保障局〈科学技術研究所〉で、その失敗を繕えるような情報に遭遇する。それは、ドクター・トヴァスキーの謎の研究成果だった。
一方、双子の兄ジャスパーに助けられたケインは、借金を返すべく奔走していた。彼が大学の恩師に口利きを頼もうとしていたその時、不思議な感覚に襲われ、彼らを襲う大事故から危機一髪で逃げ延びる。
その頃、トヴァスキーを追っていたナヴァは、謎の研究の被験者となったジュリア・パールマンの死体に遭遇する。彼女は死の間際、ケインの名を告げた。ナヴァは情報網を駆使してケインの居所を掴むが、同時にトヴァスキーもケインを追っていた。
そんな時、数学的にあり得ないような確率でロトくじを引き当て大金持ちになったトミー・ダソーザは、旧友ケインの借金を工面するため、彼と待ち合わせをしていた。そのすぐ近くにはナヴァとトヴァスキーが潜んでおり‥‥。
次から次へと派手なアクションがジェットコースターのように展開される様は、まるで映画「007」を見ているようだ。だが、主人公ケインは数学者らしく、どこまでも真面目で運動音痴。借金を踏み倒すこともせず、兄の病気を気遣い、敵か味方か分からないナヴァの身の上に同情を寄せる。彼の脳の中で起きる「不思議な感覚」の描写がまたユニークだ。私たち読者を、突然、本作品の映像を編集しているような気分にさせてくれる。登場人物に感情移入させるのではなく、映像を介して読者に語りかける手法は、日本のライト・ノベルのようでもある。
それにしても、前半部分では登場人物各々が別々の場所で危機に遭遇するものだから、読んでいて頭が混乱。これほど巻頭の「主な登場人物」一覧表のありがたみが分かった小説も珍しい。だが、最後にはケインを中心に一同が相まみえる格好になり‥‥後半の展開が楽しみである。
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