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| 著者・編者 | 富野由悠季=著 |
|---|---|
| 出版情報 | ワニブックス |
| 出版年月 | 2011年04月発行 |
タイトルは「ガンダム」となっているが、ガンダムに限らずイデオンやリーンの翼など、アニメ監督・富野由悠季が自身の監督作品に託した家族の姿について、具体的かつ詳細に語っている。そこには富野さんが、自分自身の家族や子育てに対して思っていること・考えていることも投影されているという。
富野さんは、アニメに「舞台設定などの細部は嘘(フィクション)なのだが、全体的に見るとトータルである種のリアリティを手に入れている」(14 ページ)という「嘘八百のリアリティ」をもたせることに腐心しているという。「これが実現できていれば、どんなに嘘くさい設定の中で人間のドラマを描いても絵空事にはならない」からだ。その「嘘八百のリアリティ」を用いて、作品の中に家族の形を埋め込んでいる。たとえば「ガンダム」におけるアムロと父テム・レイ、「イデオン」におけるハルル、カララ姉妹と父ドバ・アジバなど。
富野さんは、恋愛というファンタジーではなく、結婚というリアリティの結果として「家族」があることを強調する。
現代社会はリアリティとファンタジーを誤認しているため、「家族というのは、なによりも自分がリラックスするための場所だ。そうでなくてはならない」という自己中心的な家族観も、その延長線に生まれてくる」(141 ページ)と痛烈に批判する。
さらに、「クリエイターを名乗る人なら、『公』の場に“病気”を垂れ流さないでほしい」(192 ページ)と警鐘を発する。「ここでの“病気”とは、人の心が内向きへと強化され、外へ向けて開かなくなってしまう状態のこと」を指しており、最近のアニメ作品に多いというのだ。
たしかに最近のアニメは、主人公の内面ばかりが語られ、登場人物同士の葛藤を描くドラマ性が薄いような気がする。現実世界を振り返ると、富野さんが記しているように、マネーゲームやネット・コミュニティといった架空の世界が重要視され、人間同士のリアルなコミュニケーションが小さくなっているようにも感じる。
ただ、リアルな人間は、いまの状態を好んでいるとは思えない。昭和レトロが受けるのも、本当はリアルな付き合いがしたいからだと思う。それにしても、「家族というのは、なによりも自分がリラックスするための場所」というのが「自己中心的な家族観」と指摘されたのは痛かった。まさに自分が「自己中心的な家族観」だと思っていたから。
家族が修行の場とは思わないが、ファンタジーの場にだけはしたくないと痛感させられた。
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