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| 著者・編者 | 芳沢 光雄=著 |
|---|---|
| 出版情報 | 日本経済新聞出版社 |
| 出版年月 | 2017年7月発行 |
著者は、桜美林大学リベラルアーツ学群教授で理学博士の芳沢光雄さん。本書は、「数学ができる人は頭が良い」という決めつけているわけではない。仕事をする上で、言葉の定義を大切にし、規則を守ろうという、ごく当たり前の話を、数学サイドから述べている。新書にしては珍しい横書きだが、難しい公式や証明問題が出てくるわけではない。
冒頭で「およそ数学を得意とする方々は、言葉の定義や意味を人一倍大切にします」(3 ページ)と書かれているが、およそ仕事の文書というのは論理性が要求されるから、必要な用語の定義は必ず記載されるものである。文系の文書とされている契約書も然りである。法律条文にしても、第1 条に目的が書かれており、その直後に用語の定義が記載されるものである。
言葉の定義が大切という点で、14 ページでは「平均」が複数あることを紹介している。相加平均、相乗平均、調和平均、と様々な平均があることを思い出そう。三段論法にも、「定言三段論法」「仮言三段論法」「選言三段論法」の 3 つがある(132 ページ)。
缶ビールに「飲酒は 20 歳を過ぎてから」と書いてあるが、字義通り解釈すると「21 歳以上」となる。そこで、芳沢さんは「飲酒は 20 歳になってから」に直すべきと提案する。
これらは屁理屈ではない。用語の定義通り運用しないと、相手に意図が伝わらない恐れがある。
芳沢さんは、物事を多角的に見ることが大切だと説く。単に数式を提示するのではなく、「図形的なものは縮図や拡大図、統計的なものは棒、折れ線、円、帯の各グラフ、数えることは樹形図、そして集合的なものは本項で扱ったベン図を用いるとよい」(58 ページ)とアドバイスする。ちなみに、関数のグラフを考案したのはデカルトだそうだ。
言葉の定義とともに、数学では公理や定理が大切だ。芳沢さんによれば、これらの規則は「無用なトラブルや混乱を回避するため」(145 ページ)に設けたと捉えておくべきという。そして「数学では、規則(公理)が許すギリギリのところで面白い結果を得ることがよくあります。これは、ビジネスの世界でも同じではないかと思います」(149 ページ)と語る。経験上、用語と規則を正しく運用し、ど真ん中を進むのは大企業。境界ギリギリを進むのが中小零細企業だと感じる。
ネットでは、野党の「ブーメラン」やマスコミの「偏向報道」で炎上することが多くなっているが、これらは概ね、言葉の定義と規則の運用を無視した結果である。仕事で同じ失敗をしないよう、他山の石としたいものである。
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