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著者・編者 | 望月衣塑子=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2017年10月発行 |
著者は、東京新聞社会部記者の望月衣塑子氏。父親は業界紙の記者をしており、イデオロギー的に読売新聞が嫌い。母親は演劇関係者で、「肉体は滅びても魂はずっと存在していくと信じていた」方で、気功や断食をしていたという。両親とも癌を煩い他界。
小学校の頃は漫画『ガラスの仮面』に夢中になり演劇を志していたが、中学 2 年生の時に読んだ『南ア・アパルトヘイト共和国』に興味を持ち、ジャーナリストを目指したそうだ。
慶應義塾大学法学部を卒業後、中日新聞社に入社し、愛知県内の新聞専売店で新人研修がスタートする。この研修について、「男性社員の大半はげっそりしていた」とコメント。千葉支局、横浜支局を経て社会部で東京地方検察庁特別捜査部を担当するが、日本歯科医師連盟のヤミ献金事件をスクープしたことで特捜から事情聴取を受け、取材経費を使いすぎていることもあり、内勤に回されたと嘆いている。手元にこのときのスクラップ記事が残っているが、そうした事実があったのかは分からない。そして、望月さんは、「下を向いてばかりもいられない。スクープを抜かれたら抜き返さなければ」(82 ページ)と決意を新たにする。
内勤の不満から転職も考えたと書いているが、「移籍をほぼ決めていたときに、父から『読売だけは嫌なんだよ』と言われた」(101 ページ)ことにより、現職に留まったという。「学生運動にのめり込んでいた父へのちょっとした抵抗」(37 ページ)もあったはずなのに、大いなる矛盾である。そして、転職することを「移籍」と記していることにも注目――スポーツ選手か芸能人の気分なのだろうか。
2017 年 2 月、森友学園を巡る朝日新聞の記事を見て、日本歯科医師連盟の事件の時に社会部長をしていた編集局長にメールで直訴。政治部の取材チームに合流した。社内人脈を使うのは得意のようだ。本書で紹介されている取材源は、活動家の菅野完氏、天下り斡旋で辞職した文部科学省事務次官の前川喜平氏、レイプ告発が安倍政権によってもみ消されたと話題の詩織さん、等々、どう控えめに見ても偏っている。加えて、取材源の秘匿が微塵も感じられない。
菅義偉官房長官との質疑応答はネットでも話題になっているが、望月さんは「最終的に会見時間は 37 分を超え、私は 23 回の質問を重ねていた。思いに駆られて夢中で聞いたら結果的にこうなった」と自慢げに記している。だがしかし、具体的な回答を得られたかの記述が一切無い。
感情で取材をする方だという印象を強くした。
望月さんは、「昼夜を問わず取材ができるかどうかは、熱意があるかどうか。パッション、情熱をぶつけられるかどうか」(65 ページ)、「インタビュー取材の経過とともに、前川さんが抱く思いに対して感情を移入させていく自分がいた。なにかが自分の中で燃え盛ってくる。こうなってくると、もう私のぺースだ」(138 ページ)などと書いているが、ここに、読者の「知る権利」を守るジャーナリズムは微塵も感じられない。
本書の前に産経新聞社が著した『新聞記者 司馬遼太郎』を読んだ。そこには 15 年間、新聞記者を務めた経験のある司馬氏が、自身の理想の新聞記者像として、「職業的な出世をのぞまず、自分の仕事に異常な情熱をかけ、しかもその功名は決してむくいられる所はない。紙面に出たばあいはすべて無名であり、特ダネをとったところで、物質的にはなんのむくいもない。無償の功名主義こそ新聞記者という職業人の理想だし同時に現実でもある」という一文を紹介している。望月さんを司馬遼太郎氏と比較するのは酷かもしれないが、同じプロである。『新聞記者』というタイトルは、何か壮大な皮肉のように感じる。残念なことである。
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