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| 著者・編者 | マーサ・ウェルズ=著 |
|---|---|
| 出版情報 | 東京創元社 |
| 出版年月 | 2024年10月発行 |
〈 弊機
〉は、異星遺物で汚染されている可能性の高い 前企業リム時代
の惑星コロニーにまだいた。〈 弊機
〉にとって気分のいいものではなかった。農業ボットが襲ってきたところを、@バリッシュ-エストランザ@BE@ruby社の警備ユニットに救われる。〈 弊機
〉は「救助していただいて感謝します」と言ったものの、最悪の気分だった。
カリーム
が中央コロニー拠点の入植者代表の ベラガイア
との交渉を始めようとすると、彼女は北極のテラフォームエンジンの近くに30年近く前に袂を分かった人々が住んでいることを伝えた。〈 弊機
〉は「 冗談じゃない
」と声に出していった。入植者の数が増えることは、対応計画の変更を迫られるからだった。〈 弊機
〉は1日も早く惑星コロニーから離れたかった。
分離派拠点とは20年来、音信不通だという。この惑星がサルベージ取得物ではなく、主権を有する政体であると主張する訴訟を準備しているセスは、「あの拠点は第二次コロニー拠点とはみなせない。コロニー設立宣言書の原文にはふくまれてない」と両手で顔を覆った。 メンサー
も「 ああ、冗談じゃないわ
」とつぶやくのだった。
その時点から戦いというか論争というか、人間たちは興奮してこれからなにをすべきかを主張しあった。 アイリス
、 タリク
、 ラッティ
、そして〈 弊機
〉がシャトルに乗り、分離派拠点へ向かうことになった。
テラフォームエンジンは巨大な構造物で、地上に出ている部分は小山のように盛り上がっていた。シャトルもパスファインダーもスキャンが無効なので、光学的な手段で人間の居住施設を探すしかない。
〈 弊機
〉は離着陸場らしきものを見つけると、シャトルから飛び降りて着陸するのに十分な強度があることを確認し、そこから延びているレールが続く先にハッチが埋もれているのを発見する。ハッチの下にあるのは地下トンネルの構造はアダマンタイン社の施設にそっくりだった。だが、〈 弊機
〉は前CR時代の施設を発見してしまった。リスク評価が最大まで跳ね上がる。ラッティはシャトルに残り、 アイリス
、 タリク
と〈 弊機
〉は車両に乗り込み、奥へと進んだ。
地下通路から格納庫への出口が見えてくると、 アイリス
と タリク
をシャトルへ引き替えさせ、〈 弊機
〉は単独で先へ進むことにした。 ART
ドローンが「非標準の通信を探知した」と言った途端、〈 弊機
〉はフリーズしてしまった。
〈 弊機
〉は、 ART
の医務室で強制再起動された。〈 弊機
〉も ART
もハックされていないにもかかわらず、〈 弊機
〉には偽の記憶が紛れ込んでいた、 メンサー
は、人間にときどき起きるフラッシュバックに似ていると言った。
〈 弊機
〉がフリーズしたとき、分離派コロニーにBE社探査チームが突然現れたのだった。 アイリス
は、分離派拠点のシステム「 アダコル2号
」を使い、分離派に「BE社はみなさんを助けにきたと言っているはずです。でも彼らは企業です。この惑星を乗っ取り、資産を奪って搾取するのが目的です。 その場合の資産はみなさんです
」と伝えるが、分離派にとっては、どちらを信用していいのか分からなかった。
アダコル2号
に信用されている〈 弊機
〉は、 アイリス
が分離派コロニー施設内で アダコル2号
を運用している トリン
との対面交渉を設定することができた。だが、その場には漂流している宇宙船で出会ったBE社の レオニード
主任管理官もやって来た。レオニードの演技は、大学がコロニーを実験場にするつもりだと入植者に思わせることに成功した。BE社は、過酷な内容であることを入植者たちに悟られぬよう雇用契約を提案するはずだ。〈 弊機
〉は、入植者を避難させられないなら、「 殺してやる方が親切です
」とフィードした。
ペリヘリオン号のメンバーは、分離派を説得するための映像編集作業に取りかかった。ARTは「説得が目的だ。研究計画への資金提供をつのるプレゼンテーションだと思え」という基本方針を示した。映像は完成した。 アダコル2号
を使って、コロニー内に配信を始めた。
だが、 レオニード
はBE社の経営陣に対立から殺されそうになり、〈 弊機
〉とアイリスによって救出される。彼らは施設から脱出し、命からがらペリヘリオン号に帰還するのだった。
本書は『ネットワーク・エフェクト』の続編となる。植民惑星で異星種族の遺物がもたらした汚染の後始末中の〈 弊機
〉に、突如、農業ボットが襲ってくる。その背景には、営利を目的とする企業の行動原理が、個人の命や選択より優先させるBE社。そして、十分な情報を持たない分離派を、映像と演技で丸め込もうとする。だが、BE社の従業員の命ですら、企業の行動原理によって奪われようとする。これは、現代世界を覆っている悪夢と同質ではないか。
BE社に襲われた〈 弊機
〉がフリーズし再起動する場面があるが、〈 弊機
〉のような単独システムの不具合を表すなら " System Crushes
" とすればいいところ、本書のタイトルは " System Collapse
"――これは、システム全体が機能しなくなるスケールの大きな完全崩壊を意味する。企業リムという未来世界のシステムそのものが崩壊しつつあるということを暗示しているのではないだろうか。
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