ラスタ・パスタのレレ日記

2006年08月08日
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カテゴリ: 音楽:ライブ


セネガルのスーパー・スター、ユッスー・ンドゥールが、彼のバンド、
スーパー・エトワール・ドゥ・ダカールとともにひさびさに来日したので、ライブに行ってきた。

ユッスー・ンドゥール

アフリカのポップ・ミュージックは、日本でも「ワールド・ミュージック」という言葉が盛んに使われた頃に大変注目され、なかでも、

キング・サニー・アデ・
フェラ・クティ
トゥレ・クンダ
マヌー・ディバンゴ
サリフ・ケイタ


など、沢山話題になりました。

ぼくは、キング・サニー・アデは大会場で診て、4-5人いるトーキング・ドラムの威力に度肝を抜かれました。
ナイジェリア出身のフェラ・クティのライブは、NYで観ましたが、その過激な政治的メッセージとともに、ものすごいパワーを感じました。残念ながら彼は1997年に亡くなっています。

ピーター・ガブリエルが中心になってはじまったWOMAD(World of Music, Arts & Dance)は、1982年にライブ・フェスティバルという形でイギリスで始まりました。日本でも、1991-1992年と横浜の今のみなとみらいの建設予定地の野外会場でWOMAD開催されて、ぼくも行きましたが、資金的な問題なのか、それともWOMADのかかげる趣旨と、日本側の商業的な意図がかみあわなかったのがわかりませんが、いつのまにか日本では消えてしまいました。

しかし、シンガポールなどでは、毎年開催されているようですし、日本でも復活して欲しいイベントです。

さて、WOMADが消え、「ワールド・ミュージック」という言葉があんまり日本で使われなくなったのと並行して、アフリカのポップ・ミュージシャンの名前もあんまり話題にされなくなりました。


しかし、ユッスー・ンドゥールだけは、ホンダのステップ・ワゴンのCFで歌い、ナレーションを入れるなど、彼だけは存在感を維持していたと思います。

彼の魅力のひとつは、高音ではりがあり、強烈なエネルギーを持ったボーカルです。

あの素晴しいボーカルが聴きたくて、人見記念講堂に行ってきました。

会場は、いつもぼくがいくライブ会場とはちょっとちがった雰囲気です。
見るからにアフリカ大好きな感じをかもしだしている男女、


よく行く、ブラジルやワールド・ミュージック系のジャズ、ハワイ音楽のファン層とやっぱりちょっと雰囲気が違います。
みんな、音楽や自然や民族の文化が大好きなのでしょうが、それでも、それぞれに特徴があって会場に入ったときからわくわくしました。

ぼくは直前にチケットを取ったので2階席でしたが、1階は満席状態。
暗いステージに、スーパー・エトワール・ドゥ・ダカールのメンバーがどんどん入ってきて、ついにユッスー・ンドゥールが登場しました。衣装は、予想していた白い民族衣装ではなく、ブルーグレイというんでしょうか、ちょっと渋めのシャツとスリムなパンツ。彼がこんなに細かったのかと驚いてしまいました。シャツには、右肩から右胸、おなかにむかって刺繍というか模様があり、それもカラフルで幾何学的な模様がついています。

アフリカといって想像する衣装と違い、ちょっとクールなファッションです。



左の山から右に向かって順番に一番上には

ギター、女性ボーカル、ギター

真ん中には

パーカッション2名、ドラムス、キーボード

一番下に、

トーキング・ドラムス、ユッスー・ンドゥール、ベース

が並んでいます。

いきなりはじまった最初の曲は、もちろんアフリカン・リズムばりばりの音楽。
ユッスーの声が、正直言って昔ほど出ていないなァ、と感じました。

演奏された曲目は、
C’est L’Amour + Immigres
Li Ma Weesu
Baykat
Djebane
My Hope
Set
Birima
7 Seconds
New Africa

アンコール1回目が
Nanette Ada
SMSL
Teyel

2回目のアンコールは
Miadiame
Babiane

でした。

まあ、曲名だけ列挙しても雰囲気が伝わらないと思うので、少し書きますと、

まず、パーカションの威力が爆発的で素晴しいです。

コンガと、ジャンベとコンガの中間のようなパーカションが、左の矢倉に4本、
2人で、2本ずつ叩いているのですが、単に手で叩くだけではなく、少し長いスティックを片手にもって強烈に叩いて、反対の手でも叩く。
これを2人が同時にやるので、それがけで相当大きな迫力があります。

そこに、ドラムスが、バスドラをならしながら、スネアやタムタムで応じる、場合によってはシンバルを小刻みに叩く。

そこに、左脇のしたにはさんだトーキング・ドラムを、わきの下でしめたり緩めたりしながら音程を代えて、先が直角に曲がったスティックで連打する。
まさに文字のごとく、しゃべるがごとく、メロディーをかなでる強烈なパーカッション。

この3組のパーカッションが創り上げるポリリズムは本当に迫力があります。

ギターは、ステージ向かって左側のアコースティック・ギターはおもにリズム・カッティング、右端のエレクトリック・ギターは、リズムを弾きますが、細かく右手で弦をピッキングして、トレロレロレロレ、トレトレロ、というように、単音の音符と音符が非常に近い音程を行き来するソロも弾きます。

ぼくは、前からこのアフリカン・ミュージシャン独特のギターの使い方を不思議に思っていたのですが、ぼくの考えでは
カリンバ、イリンバ、チリンバ、ザンザ、ムビラといったいろいろな形状がありますが、親指ピアノ

を両手の親指で左右順番に金属片を叩いてメロディを、ギターにあてはめて弾いているんじゃないかと思っています。

ぼくもマリ共和国に遊びに行った友人が、椰子の実を半分に割ったような底が丸い形状に、金属の細長い板が何本もついている親指ピアノをお土産に買って着てくれたことがありますが、どうもその音をギターで表現しているように思います。

キーボードはYAMAHS DX-7とコルグの2台で、シンセとしてはシンプルですが、日本のこういったシンセが80年代手頃な価格で売られるようになったことが、アフリカのポップ・ミュージックに革命的変化をもたらしたのではないかと思います。

ギター、ドラム・セット、ベース、シンセ、キーボードといったいわば西洋の現代の楽器が、アフリカの伝統楽器と混ざり合い、それまでに出来なかった表現が出来るようになったとともに、欧米のオーディエンスにもアピールする音楽が創られていたんだと思います。たとえば2曲目の「イミグレ」(1984年発表)では、アフリカ音楽の要素とギター、ベース、ドラムスなどロック系楽器の導入、融合で、ヨーロッパに知れ渡り、ピーター・ガブリエルと出会うことになったのです。

とにかく、この強烈なポリリズムの音の中で、ユッスーのエネルギーあふれる、一度聴いたら忘れられない、高音でかつ張りのあるボーカルが攻撃的に歌うと、もうそれは会場内は、我を忘れんばかりの興奮状態になりました。

1曲目からいきなり、1階席の観客がどーっと前列、ステージ前に集まり踊り狂いはじめました。

しかし、ロックの大会場での混乱のようなものもなく、警備員もあまりいないのに、乱舞しているけれども、むちゃくちゃやってお互いに迷惑をかける観客がいないのも素晴しいところです。

ステージと観客はさまざまな形でコラボレーションしました。

まず、曲にあわせてパーカショニストが拍手をさいそくすると、観客が一体になって拍手するのですが、実はそのリズムがちょっと難しいんです。

たとえば、パンパン、タタタ という一小節は、4分の1音符とタタタという3連符がまじっているのですが、これがなかなか叩けないお客さんがいたりします。

これが、タンタン、タータタと4分音符と8分音符に変わったりします。
さらに、ストトーン、トーントトになったりします。

また、ステージと観客のコール&レスポンスも、非常にむつかしい節回しを歌います。

ボブ・マーリーがライブ盤で、

「アヨー、アヨー、アヨーヨーヨー」と歌っているのが若干いていますが、

万来の拍手でアンコールで出てきた、パーカッション&ボーカルのエルハジ・ファイの掛け声は「みんな一緒に歌おあうぜぃ!」などといいながら

イェイェ~エ、ママニ~エ~ヨ、イェー~~マ

というような非常にむつかしい節回しを、どんどん音程や言葉も代えて繰り出してきます。

観客もまけじと(もちろん私もですが)いっしょうけんめい、今、耳で聴いた音をそのまま再現しようとがんばって歌い返すのですが、最後にはだんだんわけが分からなくなってきました。

また、ステージ最前列にみんなが集まって踊っていたのには意味があって、
パーカッションなどのリズムが熱狂的になったときに、
踊りに自信のあるお客さんが、ステージにのぼって、ひとりずつ踊るのです。

前にも、セネガルの別のミュージシャンのライブに行った時もそうでした。
ステージにお客さんがあがって踊っても、混乱もないし、誰もとめないし、
お客さんも思いっきり踊ったら、またすぐちゃんとステージの下におりるのです。

こうしてステージにのぼったお客さんは5-6人はいたと思います。
そのうち3――4人は、多分、セネガルの男性ですが、のこりふたりは女性で、一人の女性は日本人だったと思います。

勇気があるなァ、トも思いましたが、服装からみて、どこかで民族舞踏を教えている先生のような感じもしました。

バンド側にもちゃんとダンサーが1名いて、衣装を代えて何回も出てきます。
もちろんお客さんとダンス・バトルもやりますが、面白いのはその動き方です。

ハエ踊りというか、両手両脚を別々の動きをしながら、片脚ずつ跳躍をし続け、そこに身体のひねりやゆれを盛り込んだ踊りなのです。
これはやっぱり「ハエが手をする足をする」じゃないですが「ハエ踊り」としかいいのうがない、躍動感とユーモアあふれる踊りで、楽しませてくれました。

アンコール前の最後の曲
New Africa

では、ユッスーが、アフリカというと、「AIDS、貧困、戦争(内戦)」という悪いイメージばかりが言われているが、本当のアフリカは違うんだ!
パワーのある、人間のための新しいアフリカを歌おう」

と言って、大拍手を受けていた。

彼は、2004年に予定されていた大規模なアメリカ・ツアーを、アメリカによるイラク攻撃で始まったイラク戦争に抗議してすべてキャンセルしてしまいました。

アフリカ各地に残るグリオという伝統があるがこれは、歌によって伝説を語り伝える語り部だったり、王様に仕える予言者のような政治的アドバイザーだったりした。ユッスーの母親はグリオの家系であり、

音楽を通して、アフリカのひとびとはもとより、世界にむけてメッセージを発信していくのは、こうした遺伝子を受け継いでいるのかもしれない。

ステップ・ワゴンのCFソングで楽しげに、子供たちへむけて歌う彼には、もうひとつ世界の不正に対して闘う、という側面もあるのだ。

1回目のアンコールがおわっても鳴り止まない拍手に2回目のアンコールで応えてくれたが、最後のアンコールでは、彼本体の声の張りと迫力が戻っており、まだまだいけるぜ、もっと世界中で活躍して欲しいアーティストだなと思った。

ライブの後は、彼のボーカルとパーカッションのリズムが頭をはなれず、なぜか、サンタナのラテン・パーカッションが無性に聴きたくなった。
素晴しい、ライブだった。


ワールド・ミュージック関連日記
バリ島の巨大な竹筒のガムラン音楽
マリ共和国 ドゴン族の仮面舞踏♪





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最終更新日  2006年08月30日 20時57分20秒 コメント(6) | コメントを書く


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