ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Sep 8, 2006
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「エネルギーと情熱、そして炎」

 今日は念願のシューマンのトリオ1番を練習する機会に恵まれた。この曲は、大好きと断言する自信はないものの、この数年、なんとなく気になっていた曲のひとつ。

 結論から言って、今までに弾いたどんな室内楽曲よりも難しかった。合わせるのが。
 まず、「頼りにすべき音、きちんと聞き取らなければいけない音」がいろいろ散らばっている。それは例えばピアノの左手だったり、チェロのベース音だったり。
 しかし、逆に「聞いてはいけない音、聞かないほうがうまくいく音」というのも、そのなかに紛れている。リズム的に相容れない音とか、ウラから攻めてくる音とか(特にピアノの右手に多い)。そのへんを瞬時に判断しながら、でも自分の音程やリズムなどにももちろん神経を遣いながら弾き進めていかなきゃならない。

 ピアノだったらポロンポロンとかパラパラとか何気なくさりげなく弾けそうなフレーズや音型が、バイオリンやチェロにも平気で出てきて、すごく焦る。シューマンが、弦楽器奏者にはちょっと不利な曲の書きかたをする作曲家と巷で評価される理由が、この曲で実感できる(言い訳)。

 ちなみに、たまにはこういうドイツ語で書かれた曲を弾くのもいいと思う。ドイツ語わかんないけど。

1楽章: Mit Energie und Leidenschaft。全曲で一番難しい。途中、いきなり弦の二人によるコラールが登場する。スルポンで(駒の上で)弾かなければいけないらしい。なんとも斬新。

2楽章:

3楽章: 独りで練習してたときは気がつかなかったが、この楽章は非常に凝っていて入り組んでいる。今日の合わせの練習ではお手上げ状態だった。ゆっくりだからといって油断できない。

4楽章: Mit Feuer。めらめらと燃える炎のなか、べっとりとしたニ長調の音楽が展開される。シューマンの音楽のあらゆる特徴が凝縮されてる感じ。各所に仕掛けられた罠に果敢に挑みながらひたすら前進あるのみ。三連符とシンコペーションがぶつかったり、幻想的でオルガン風かつバグパイプ風なコラール?までもが出てくる。

 今日、一番痛感したのは、「ものには順番がある」ということ。このシューマンのピアノトリオに取り組む前に、彼のバイオリンソナタを弾いておくべきかと思った。そして、ソナタを弾く前に、彼のピアノ四重奏や五重奏を弾くべきなのでは。
 でも、どうぜそこまでやるんだったら、やっぱりまず弦楽四重奏でシューマンの室内楽の崇高さと難しさの洗礼を浴びておくとだいぶ違うだろうし、そもそもシューマンの交響曲をオーケストラで弾いたことがあれば、彼の「つまづき系」のリズムなどへの抵抗感が激減するだろう。

 すなわち、この曲、僕にはかなり身分不相応。けど、次回の練習がとても楽しみ。
 ピアノのセスもチェロのルースも、このトリオをかなり気に入っているようだ。我々は三人全員とも好き嫌いが激しいのだけど、この曲に関しては珍しく意見が一致した!





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最終更新日  Sep 15, 2006 12:01:21 PM
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